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スピッツ歌詞考察(第97回)アケホノ
【基本情報】
アケホノ
作詞:草野正宗 作曲:草野正宗 編曲:スピッツ&亀田誠治
3分21秒
<リリース日>
2023年4月12日(46thシングル「美しい鰭」カップリング)
【MUSIC VIDEO】
【歌詞】
歌詞は下記のサイトでご確認いただけます。
【考察】
この曲はフラワーカンパニーズの「深夜高速」という曲と深い関わりがあると言われていますが、それはいったいどのあたりからなのでしょうか。
つながっていた 僕らはたぶんいつも
それぞれの闇の奥にいた時でさえ
“僕ら”はそれぞれ落ち込んでいたときでも、たぶんいつも心と心はつながっていた。
そのぬくもりは あえて例えるならば
救いのない映画の後の甘い物
そのありがたみは、あえて例えるならば、どうしようもない映画を観た後のスイーツのようなもの。
影はグレーから徐々に白くなり
二人の頬も染まる頃
夜が明けて徐々に明るくなるにつれ、二人の頬も朝日に染まる頃。
アケホノに誓いましょう 昔じゃありえないあの
失ったふりしてた愛の言葉
夜明けの光に誓いましょう。
尖ってた頃ならありえないような、思いついても絶対に口にできなかった愛の言葉で誓いましょう。
諦めるちょい前なら 連れて行くよ怖いかな
もう大丈夫泣いちゃうね ほわんと淡い光
もう少しで諦めようとしてたなら、連れ出すよ。
怖いのかい?
もう大丈夫、ほわんと淡い光が見えて、思わず泣いちゃいそうだね。
否定の中に なんとか理由を拾って
高級な笑顔の渦に飲まれてみたり
否定的な意見の中にも、何か得るものがないかと探し、心とは裏腹に最高の笑顔でやり過ごしたり。
嫌いな自分を 無理やり正当化しようと
もがいて穴の外へ逃れてからは
そんな自分の嫌いな部分を無理やり正当化しようと、もがき苦しんでは現実逃避してからは・・・
ザラザラで冷たい地面を這ってきた
汚れた腕を讃えあって
冷たくてザラザラで、居心地の悪い人生を歩んできた。
仲間たちと讃えあいながら、なんとか生きてきた。
アケホノに誓いましょう この気持ちはもうなんなの?
上書きされる初恋の定義
夜明けの光に誓いましょう。
この溢れ出しそうなよくわかんない気持ちはなんなの?
まるで初恋のときめきが塗り替えられるかのよう。
ナマケモノのまんまで 走れるかもね頑張れ
メモして残したい 懐かしい痛み
印税収入で食っていけるかもね。
これからも頑張れ!
辛かった頃の懐かしい思い出も、胸の奥にメモして残しておきたい。
生きていて良かったそんな夜を 探していくつもの
夜更かしして やっと会えた朝
生きてて良かった。
生きてて良かった。
生きてて良かった。
そんな夜を探してる。
夜更かしして、いくつもの夜を越えて、やっと「生きててよかった」と心から思える朝に出会えた。
アケホノに誓いましょう 昔じゃありえないあの
失ったふりしてたクッサイ言葉
諦めるちょい前なら 連れて行くよ怖いかな
もう大丈夫泣いちゃうね ほわんと淡い光
夜明けの光に誓いましょう。
尖ってた頃ならありえないような、思いついても絶対に口にできなかったクッサイ言葉で誓いましょう。
もう少しで諦めようとしてたなら、連れ出すよ。
怖いのかい?
もう大丈夫、ほわんと淡い光が見えて、思わず泣いちゃいそうだね。
まず「アケホノ」とはなんぞや?というところから考察していかないといけませんが、これは「あけぼの」と同じ意味で、「ほのぼのと夜が明けはじめるころ」「夜明け」と考えて良いでしょう。
「アケボノ」ではなく「アケホノ」なのは、ほのかに光る「ほわんと淡い」感じを強調するためではないかと思います。
歌詞の内容も、実際に夜更かしをして夜が明けていく様子と、人生における暗黒の時代や、抱えている不安や悩みが解消していく様子を重ね合わせているものと思われます。
また「深夜高速」の歌詞は深夜の出来事ですが、それから徐々に時間が経過して、夜が明けていく場面を表現しているようにも思えます。
スピッツとフラワーカンパニーズは、年齢や結成時期も近く、古くから何度もライブで共演してきました。
スピッツは1987年に結成し、1991年にメジャーデビューを果たします。
そして1995年の「ロビンソン」で大ブレイクして以来、今もなお日本の代表的なロックバンドとして活動し続けています。
一方、フラワーカンパニーズは1989年に結成し、1995年にメジャーデビューを果たすも、2001年からインディーズとして活動します。
2008年にメジャー復帰しますが、2017年からはまた自主レーベルを立ち上げてインディーズ活動を続けています。
そんな中でも2004年にリリースされた「深夜高速」が多くのアーティストにカバーされており、またそれが2021年末頃からSMBCグループのCMソングとして使用されるなどして、広く注目を浴びるようになります。
「生きていて良かったそんな夜を 探していくつもの」
これは「深夜高速」の「生きていて良かった そんな夜を探してる」という歌詞と重なります。
生きていて良かったと思える夜を幾度となく探し、そしてやっと「アケホノ」に出会いました。
「つながっていた “僕ら”はたぶんいつも それぞれの闇の奥にいた時でさえ」は、スピッツとフラワーカンパニーズがそれぞれ悩んだり落ち込んだりしている時でも、心はいつもつながっていたということです。
「諦めるちょい前なら 連れて行くよ怖いかな」は、もしフラワーカンパニーズが諦めようとしてるなら、スピッツはいつでも手助けするよということでしょうか。
「もう大丈夫泣いちゃうね」は、「深夜高速」のヒットにより、これでもうフラワーカンパニーズは大丈夫だと確信して嬉しさを隠し切れない様子としか思えません。
フラワーカンパニーズは、スピッツが主催のレギュラー音楽イベント「ロックロックこんにちは」や「ロックのほそ道」などにたびたび出演しています。
また、2019年10月4日に名古屋国際会議場センチュリーホールで行われたフラワーカンパニーズ結成30周年記念ライブ「フラワーカンパニーズpresents DRAGON DELUXE DELUXE〜30周年スペシャル〜」にスピッツがゲスト出演しています。
そして2024年10月には、両者のオフィシャルファンクラブがコラボしてオリジナルTシャツを販売するほど仲の良い二組。
「深夜高速」では、夜の時代を生きながらも、生きる意味を探します。
そして「アケホノ」では、夜が明けていくところを実感します。
やはりこの二曲は、つながっています。
スピッツのフラカン愛が詰まった、「生」がテーマの曲でした。
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