民間給与実態統計調査の解析 ~ 給付における年収制限の観点から #3

株式会社リュディアです。令和2年分の民間給与実態統計調査について引き続きデータを解析してみたいと思います。

元データは以下から入手した PDF です。

前回までの 民間給与実態統計調査の解析 ~ 給付における年収制限の観点から のまとめへのリンクは以下を参考にしてください。

前回までの2回のまとめで給与分布と所得税の負担分布についてまとめました。実データを元に調査を行うと何となく持つイメージとの違いがわかっていいですね。今回は正規非正規の違いについてみてみます。非正規という言葉もどうかと思うのですがここでは元データの PDF に非正規という言葉が使われていたのでそのまま使用します。

2021年11月7日に行われた衆院選でも非正規の待遇改善は1つのキーワードになりました。街頭演説やメディアでも以下のような論点が頻繁に使われました。

アベノミクスにより失業率が改善したと言っても増えたのは非正規ばかりだ

日本人の給与は安くなっている、株式を購入できるような資産家のみがアベノミクスの恩恵を受けた結果、社会が分断された

例えば立憲民主党の以下のニュースも参考にしてください。

どのデータを元データとして参照するかで結果が変わってくることは理解しているつもりですが、少なくとも令和2年分の民間給与実態統計調査を元にした場合にどうなるか確認してみましょう。

まず給与所得者数の変遷を見てみましょう。以下の表とグラフを見てください。先入観無しに見てどのように感じますか?

画像1

画像2

私は給与所得者総数の増加に伴い正規も非正規も増加しており特別に非正規ばかりが増えているという印象は持ちませんでした。皆さんはどのような感想を持たれましたか?

例えば 2012年と 2020年の比較を増加数で行ってみます。その他(役員など)はほぼ増加していませんので誤差として扱います。

正規:34,825 - 30,116 = 4,709
非正規:12,030 - 9,876 = 2,154
総数:52,446 - 45,556 = 6,890

増加数での比較結果では給与所得者の総数が増加したうち正規 : 非正規 = 7 : 3 程度の割合となっています。特に非正規が多く増加しているというようには思えません。次に 2012年から 2020年に対する増加率という観点から見てみます。パーセントに換算しています。

正規:(34,825 / 30,116 - 1) * 100 = 15.6%
非正規:(12,030 / 9,876 - 1) * 100 = 21.8%
総数 : (52,446 / 45,556 - 1) * 100 = 15.1%

この比較結果を見ると非正規の増加率が大きく見えます。なぜでしょう?非正規の増加率を計算する際の基準となる数 12,030 が小さいからです。非正規が増加している印象を与えるための恣意的なデータを作りたい場合は増加率を使えばよいのですが変な感じですよね?

少なくとも民間給与所得者という条件では非正規が正規と比べて大きく増えているデータは無いと判断してよいのではないでしょうか。

1つの可能性として非正規公務員と呼ばれる立場の人が激増しているかもしれません。今回の令和2年分の民間給与実態統計調査では非正規公務員についての情報は含まれていません。

これについてはまた別の機会に調べてみたいと思います。

民間給与実態統計調査の解析 ~ 給付における年収制限の観点から に関するまとめの続きは以下からどうぞ。

では、ごきげんよう。




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