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仕事も学位も諦めない、第三の選択肢。LINEヤフーの社会人ドクター進学支援制度

理系分野の学生の間では、大学院修士課程に進学してから企業に就職するというキャリアは決して珍しくありません。しかし、修士課程修了後の進路については、大学に残り博士課程まで進むか、企業に就職するかで迷った経験のある人も多いはず。

そういう経験を持ち、かつ業務経験を通して、あらためてより深い勉強の必要性を考えるようになった社員のためにLINEヤフーが提供するのが「社会人ドクター進学支援制度」です。今回は、LINEヤフー研究所所長の田島 玲に制度設計の背景や詳細を語ってもらいました。

プロフィール

田島 玲(たじま あきら)
LINEヤフー研究所 所長。日本IBMの東京基礎研究所で数理科学チームのリーダー、戦略系コンサルティングファームのA.T.カーニーでのコンサルタントを経て、2011年にヤフー(現LINEヤフー)入社。現在はLINEヤフー研究所の所長として、LINEヤフーが保有する多様で大量なデータや先端技術を活用し、ユーザーにより良い体験を提供すべく、部門を越えた取り組みを進行中。


研究開発とプロダクト開発が近いからこそ、学術研究の経験が生きる

ー 社会人ドクター進学支援制度を導入した背景を教えてください。

田島のインタビューカット

我々の業界の特性として、研究開発とプロダクト開発の現場の距離が近いことが挙げられます。最先端研究の成果が現場にすぐ採り入れられることが多いのです。そのため、高度な学術研究の経験とそこで得たタイトルは大きな意味を持ちます。

新卒・中途を問わず、エンジニア採用における博士号取得者の応募は少なくありません。一方で、事業部門の現場でも、先端的な研究開発に従事する社員の中にはいずれは博士号を取りたいというニーズが徐々に増えてきました。

特に若手エンジニアには修士課程修了者は多いのですが、一方で就職のために博士号取得を諦めた人もいます。そんな人でも、企業で数年経験を積むと、現場ならではの課題を背景に自分の研究テーマを深掘りしたくなるもの。実は私自身も、日本IBM基礎研究所時代に社会人留学制度を活用して博士号を取得しました。

むしろ、「修士から博士課程へそのまま進学するよりも、企業に就職し、業務を経験してからのほうが、研究テーマがより具体的になるのでよい」と考える人もいます。そうした人々に、会社を辞めて大学院に戻るのでもなく、博士号を諦めるのでもない、業務を続けながら博士号取得を目指すという選択である、第三の道を用意することにしました。

今回、旧ヤフーで立ち上げた支援制度の新規募集を再開する形をとることになったわけですが、それに先立って若手エンジニアにヒアリングを実施しました。すると、「進路を考える際にこの制度を意識していた」という回答が半分以上からありました。

若手エンジニアだけでなく、将来を考える学生のみなさんにとっても、「修士を出て就職する=博士を諦める」という構図にならないことに大きな意義があることを改めて実感しました。

田島のインタビューカット

ー 具体的にはどのような制度内容なのでしょうか。

主にデータプラットフォームやサイエンス領域におけるテーマで、社会人向け大学院の博士課程に進学し、最終的には博士号取得を目指す勤続2年以上のLINEヤフー原籍の正社員を対象として、学費の補助(上限半年100万円)や学習日の確保などを通して支援します。

学習日とは、週1日は会社に出社することなく自宅や大学で勉強できる権利のこと。対象の研究分野は現時点で、強化対象領域となるのは、自然言語処理をはじめとする13分野です。

国内外の大学などへの社会人留学制度を設ける企業は少なくありませんが、博士号取得を明確に掲げた制度は珍しく、その分、一般的な留学制度よりも審査条件は厳しいものとなります。

審査では研究テーマと業務との関連性も重視しますが、もっとも大事なことはその人の覚悟と準備です。準備とは、「どこの大学、どこの学部、どの先生につくか、どういう条件がそろえば学位を取得できるのか、取得まで何年ぐらいかかりそうか」などの事前調査が挙げられます。

田島のインタビューカット

博士号の取得は決して甘いものではなく、3年で取れれば早いほうです。就業時間のあとに研究する、土日も研究に充てる、それらを家庭生活と両立させるなど、強いモチベーションがなければとうてい続くものではありません。審査では、その覚悟はあるかどうかをしっかり確認することにしています。

大学院進学後も、年に一度は、研究の進捗状況を確認する面談の機会が設けられています。部署が変わったり研究テーマが変わったりすることもあるため、個人の状況に合わせて半期に一度、面談を通して相談するケースもあります。研究のために業務が滞ってしまっては困りますが、むしろ私たちが心配するのは大学院での研究が行き詰まってしまうこと。二足のわらじを履いている間に、部署が変わったり、研究テーマと仕事の内容が違ってしまったりすることもあります。そのあたりはきめ細かく相談に乗りたいと考えています。

エンジニアのバリューをより高め、さらなるスケールアップを目指す

ー 今後、どのような効果を期待していますか。

現在プロダクト開発に取り組む事業の現場エンジニアからも、この制度にエントリーする若手エンジニアが次々に生まれることを期待しています。

この制度の目的は、LINEヤフーの博士号取得者数を増やすことではありません。単にそれを目的とするなら、博士号取得者を採用すればいいだけの話。私たちの仕事では最先端を極めれば極めるほど、博士号を持つにふさわしい人材が必要です。

そうした人々の可能性を広げるための選択肢がどうしても必要でした。意欲と可能性を持つ人たちにとって、LINEヤフーがより外に開かれ、より恵まれた職場になるためにも、社会人ドクター支援制度は不可欠なオプションだと私は考えています。

エンジニアがLINEヤフーで働く意義をより高め、研究開発とプロダクト開発の相乗効果を生み出しながら、さらにスケールアップすることを楽しみにしています。

田島のポートレートカット

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