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EC「618セール」、広東省の購買力は全国トップ

《 福福の知りたい広州!vol.15 》

【 従来のEC大手 ”618セール”で強敵出現  】

中国最大級のECセールイベントと言えば、11月11日「独身の日」を思い浮かべますが、その「独身の日」に匹敵するEC商戦がこの「618セール」とのことです。

中国のECサイト京東商城(JD.com)が、運営する京東集団の創業記念日6月18日にちなんで、2010年から始めた大型セールイベント。6月1日から6月18日にかけて開催され、今では中国全土のECサイトが一斉にセールを実施する年央の一大EC商戦となっているということです。
※EC:eコマース(ネットショッピング)

『廣州日報』2021年6月21日
「~传统电商“618”大战遇“劲敌”~ 广东购买力全国第一」より

このほど、京東、蘇寧、アリババなどのEC大手が続々と「618セール」の結果を公表した。

今年の「618セール」は、多くのカテゴリーで前年比プラス成長を達成。コロナ禍による在宅需要もあり、携帯電話、ノートパソコン、家電などの売れ行きが好調だった。

京東商城の発表したデータによると、京東プラットフォームの累計注文額は3,438億元を超え、236ブランドが1億元以上を売り上げた。また、18日の広東省の売上高は前年比36%増となり、購買力で再び全国1位となった。

「618セール」の期間中、宅配量は通常の5割増となり宅配員は大忙し。広州のある宅配会社関係者によると、宅配量の大幅な増加と共に、返品も増えているとのこと。「以前にくらべると倍以上。毎日平均300~500件の返品を受け付けている。衣類や靴の返品が多くみられる」

今年は、抖音(TikTok)や快手などのショート動画アプリが初めて「618セール」に参入し、従来のEC大手と真っ向勝負した。
抖音の統計によると、5月25日から6月18日の抖音ECライブコマースの放送時間は累計2852万時間に達した。
快手、抖音の最多新規ユーザーは2000年代生まれで、次に1990年代生まれの増加が著しい。

EC業界関係者は、今年の「618セール」は、ユーザーの興味関心の変化、事業者の広がり、コロナ禍など様々な影響を受け、ライブコマースが商戦の主戦場であり、また、ECにおける新しい成長分野のひとつとなったとみている。


【 福福より 】


今回は、私自身が“618セール”の存在を知らなかったこともあり、取り上げてみました。

記事中では、誇大広告への注意や、頻繁なプロモーションや次々に登場する購入特典や価格保証などの各種優待サービスに人々が次第に「鈍感」になってきていることなどにも触れられていました。

今回の廣州日報のタイトル前半「传统电商“618”大战遇“劲敌”(従来のEC大手 ”618セール”で強敵出現)」

抖音や快手などのショート動画アプリの参入が、「618セール」の従来の構造に変化をもたらし、その主戦場はライブコマースに移っているとのこと。

人々が「何を買うか」に焦点を当てた従来のEC事業者が実施するライブコマース。
一方、人々が「誰から買うか」を重視する、抖音、快手などのライブコマース。

従来のEC事業者にとって、既に多くの固定ファンを有する抖音、快手の配信者という強敵が現れたということなのかと想像するのですが…???

ライチ局長、中国の最近のEC事情について教えてくださーい!

【 ライチ局長より 】

福福さん、いつも新鮮な情報をありがとうございます。確かに、日本ではあまり知られていませんが、中国のこの時期の風物詩といえば、すっかりこの「618セール」になってしまいました。

内容は、福福さんがほとんど紹介してくれている通りなのですが、中国2大ECサイトの一つ京東商城(JD.com)が、2010年から創業記念日の6月18日に始めたセールイベントになります。ただ、その他のECサイトも京東に対抗して、同じ時期にセールイベントを実施することになったので、結果的に、アリババが始めた11月11日の「W11セール」と並び、中国2大セールイベントに成長しました。

期間中の売り上げ規模は、2019年が2,015億元(約3兆5千億円)、2020年が2,692億元(約4兆6千億円)と右肩上がりに上がっています。なお、2020年のW11セールでは、セール期間を長く設定したことや、コロナによる反動で4,982億元(約8兆5千億円)という驚異的な売り上げ規模を達成したこともあり、そうした面からも今年の618セールは注目をされています。

また、この618セールに限らず、EC商戦の台風の目となっているのが、「抖音(TikTok)」や「快手」などのショートムービー企業の参入です。日本では、若者が音楽に合わせて踊っているような印象があるTikTokですが、中国では、ライブ配信機能も充実し、ニュースや面白動画、語学に歌にと様々な進化を遂げていて、コンテンツの細分化も進んでいます。

そんな中、TikTokも快手も、共にEC機能を充実させてきています。これにより、視聴者は、コンテンツを見て興味を持ったら、直接アプリ内の店舗で購入することができます。さらに、TikTokに至っては、独自の決済システムである「抖音pay」もリリースしており、アリペイを擁するアリババの牙城を脅かす存在とも言われています。

なお、TikTokと快手は、ユーザー数や若者の利用割合などに大きな違いはないものの、TikTokが上海や北京などの一級都市を中心とした都心での利用者が多いのに対して、快手は中小都市などの利用者が多いと言われています。それに伴い、内容もTikTokはオシャレな都会の生活をカッコよく彩るような動画が多いのに対し、快手の方は生活の素朴な動画が多い印象があります。

こうしたショートムービーアプリの強みは、提供する動画コンテンツの内容により、フォロワーの囲い込みが容易なことにあります。数百万人、数千万人と囲い込んだフォロワーに対し、直接商品のPRができれば、高い宣伝効果が期待できるのです。

従来のECサイトが、実店舗をオンライン上に移行させたような考え方であるのに対して、TikTokと快手は、SNSで商品の売買が気軽にできるようになると考えたら分かりやすいかもしれません。日本で言えば、TwitterやFacebookやInstagram、YouTubeなどで、それぞれのコンテンツからそのまま商品の売買ができるようなイメージです。したがって、従来のECサイトは通常のショッピングのように買い物をするつもりで訪れる人にとっては最適であり、TikTokなどのサービスは、街をあてもなくブラブラしているように、特に買い物をする気があって訪れたわけではない人にまで興味を持たせて購買まで至らせる、という点で違いがあります。

さらに、TikTokを運営するバイトダンスは、元々「今日頭条」というニュースアプリの運営で成長してきた企業です。このアプリの最大の強みは、利用者の興味関心に合わせてニュースを提供する機能にあります。この強みは、TikTokを訪れた人に、好みの動画やコンテンツを紹介する機能として強みを発揮します。ちょっとした退屈しのぎに開いたTikTokで、思わず素敵な商品を見つけて衝動買いしてしまった…、なんてことになるわけです。

ここまで、駆け足で紹介してみましたが、それぞれが今の中国を象徴する最先端の内容になりますので、やっぱり限られたスペースでは紹介しきれませんね。

なお、私のTikTokを開くと、ライブコマース機能で、ひたすら魚を捌いている動画や、ひたすら工芸品を作っている動画、農村の畑から配信する動画など、製造過程をライブ配信しながら商品PRを流しているコンテンツが多数見られます。これは、ECの性質上、間の小売店を挟むことなく生産者が直接PRしやすいということがあるのだと思います。

勝手なイメージですが、日本の生産者は職人気質で、制作過程では多くを語らず、完成品の質でこだわりを伝えようとするような傾向があるような気がします。しかし、中国では逆に生産者が製造のプロセスを積極的に公開していくことでコンテンツとして商品の宣伝に変える手法が広がっている、というのは面白い点だと思っています。

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