2024年ノーベル経済学賞を受賞したアセモグルさんの説を酒の肴に語り合う

私:
トモコさん、ノーベル経済学賞を受賞したアセモグル氏(新制度派経済学)は著書「技術革新と不平等の1000年史」の中で、「技術などを含む"進歩"こそが社会的不平等を増大させるという、人類史のパラドックス」について指摘しているみたいですが、では進歩が人類全体の利益(最大多数の最大幸福)とならない原因として何を挙げ、その解決策として何を挙げているんですか?

トモコ:
えっと、ノーベル経済学賞を受賞したアセモグルさんが『技術革新と不平等の1000年史』で言っていることなんだけど、彼は技術の進歩が社会的不平等を広げちゃうという人類史のパラドックスを指摘してるんだよね。
なんで技術進歩が人類全体の利益にならないかっていうと、進歩そのものが富や権力を一部の人たちに集中させちゃうからなんだって。
結局、そのせいで格差が生まれて、普通の人には恩恵が行き届かないっていうわけ。
で、その解決策なんだけど、アセモグルさんは政府による介入や規制で富の再分配を行うことが大事だって言ってるの。
具体的には、税制を工夫したり、労働者の権利をもっと守ることで不平等を是正しようとしてるんだよ。
でも、こういう介入って一歩間違うと起業家やイノベーターたちの意欲を削ぐかもしれないから、バランスが難しいんだよね。

私:
たしかに危ういですね。
その策では、起業家や発明家のやる気を削ぎ、新産業や新技術が生まれる素地(世界全体の経済発展)そのものを毀損する恐れがあるのでは?
(7つの習慣で言う"P/PCバランス"が崩れるような、、)

トモコ:
その策、つまり政府が規制とか再分配を強化するってやり方なんだけど、確かにね、これやりすぎちゃうと起業家とか発明家たちが『もう頑張っても意味ない(旨味が少ない)じゃん』って思って、やる気なくしちゃう可能性があるよね。
彼らが挑戦する意欲を失ったら、新しい産業や技術が生まれるチャンスそのものが減っちゃうかもしれないっていう懸念は、すごくリアルだと思うの。
特に、技術やビジネスって常にリスクを取って何か新しいことをやる人たちが引っ張っていくところがあるから、そういう人たちが『これじゃ自分の努力が報われない』って感じたら、イノベーションのエコシステム自体が縮んじゃうんじゃないかなって思うんだよね。
だから、そのバランスが難しいところなんだよね、やっぱり。

私:
何か彼の主張に良い点についても教えてください。

トモコ:
そうね。アセモグルさんの主張は、ただやる気を削ぐっていうリスクがあるだけじゃなくて、技術進歩がちゃんと社会全体に利益をもたらす形で進むことが大事だってところにフォーカスしてるの。
今のままだと、一部の人たちだけが富や権力を握っちゃって、結局ほかの人たちは置き去りにされちゃうよねっていう問題をどうにかしなきゃいけないってこと。
だから、単に再分配をするんじゃなくて、もっと包括的な制度作りが必要だって考えてるんだよ。
例えば、教育やインフラへの投資を強化して、誰でも新しい技術や仕事にアクセスできるようにすることが求められるんじゃないかって。
そうすれば、ただ富を一部の人から取り上げるんじゃなくて、みんなが技術の恩恵を受けられる仕組みが作れるはず、っていうわけ。
もちろん、このバランスを取るのはめちゃくちゃ難しいよね。
だけど、もしこれが上手くいけば、起業家や発明家たちのイノベーションを止めずに、みんながその進歩の恩恵を受けられる社会が実現できるんじゃないかなっていうのがアセモグルさんの考えなんだよ。

私:
上手くいけばそうかもしれませんね。
でもそれでは「成績が悪い子に合わせて授業をする学校」みたいにみえてしまうんですよ。
それよりも、起業家や発明家の倫理道徳(産業や技術の発展は人類全てを豊かにするのが目的であり、功成り名を遂げて私有財産を人類全てのために使うことこそがカッコいい成功者であり、私利私欲のために起業や発明するのは恥ずかしいことである)を幼少時から繰り返し教育する方が両方の利点を取れると思うんですよね。。。

トモコ:
うん、あんたが言うように、それだと確かに『成績が悪い子に合わせて授業をする』みたいに全体のレベルを下げることになっちゃうと感じる人もいるかもしれないね。
やっぱり優れた起業家や発明家の意欲を削がずに、ちゃんとイノベーションを起こせる環境を守るのも大事だよね。
だからさ、私ももっと良い方法として、起業家や発明家たちの倫理や道徳観を育てる教育が必要だと思うの。
たとえば、アンドリュー・カーネギーが『富の福音』で言ってるように、成功者が自分の富を社会全体のために使うっていう考え方を広めることが大切だと思うの。
カーネギーは、自分の得た富を私利私欲のために使うのは恥ずかしいことで、本当にカッコいい成功者っていうのは、功成り名を遂げた後、その富を社会のために還元する人だって言ってるんだよね。
だから、そういう価値観を幼少期から繰り返し教えることで、起業家や発明家たちが単にお金儲けのためじゃなく、産業や技術を通して人類全体を豊かにするために頑張ろうって思えるようになるんじゃないかな。
そうすれば、新しい産業や技術が生まれる土壌も守りつつ、みんながその恩恵を感じられる社会が作れると思うんだよ。

私:
アンドリュー・カーネギー「富の福音」はいいですね!
他にJSミル「功利主義」(最大多数の最大幸福)、ジョシュア グリーン「モラル・トライブズ(上下巻)」、新渡戸稲造「武士道」なども良いかもしれませんよ!

トモコ:
そうだね!アンドリュー・カーネギーの「富の福音」は、成功者が富をどう使うべきかについての倫理観を強調していて、今でも参考になるよね。
それに加えて、JSミルの「功利主義」もぴったりだと思うよ。最大多数の最大幸福を追求するっていうのは、社会全体の利益を考える姿勢に通じるから。
ジョシュア・グリーンの「モラル・トライブズ」も興味深いね。これは、人間が異なる道徳や価値観を持つ集団でどうやって協調し、共通の利益を見出すかっていうテーマだから、特に技術や産業がグローバルに影響を与える時代に役立つ視点だと思う。
それに、新渡戸稲造の「武士道」は、道徳と名誉を重んじる武士の生き方を現代のビジネスに適用できるよね。彼の考え方は、ただ利得を追うんじゃなくて、自己の倫理観や社会的責任に基づいた行動を求めているから、まさにカッコいい成功者の姿だよ。
こうした本を通じて、起業家や発明家が「自分だけの利益じゃなく、社会全体をどう豊かにするか」を意識する教育ができると、より良い社会が築けるんじゃないかな。

私:
たしかに江戸時代の武士の子は「こうした方が利得を得られるから」という理由で言動を律していたわけではないですよね。
「こうすることが武士たる在り方なのだ。こうしなければ武士を名乗ること能わず」と考えて行動した。
これらの書籍を骨身に刷り込んで、「名士とはかくあるべき」という矜持をもつことが必要不可欠だと思います。
(宗教に頼らない倫理教育という点がまた宗教を跨いで適用できうる感じがしていい!)

トモコ:
まさにその通りだね。武士の子が自分の行動を律していた理由は、単なる利得を求めるためじゃなく、「これが武士のあるべき姿だから」という信念があったからだよね。武士道の本質は、名誉や責任、そして誇りを大切にすることにあったんだ。「こうしなければ武士とは言えない」という強い自覚が、彼らの言動を支えていた。
それを現代に当てはめると、やはり企業家や発明家も単なる成功や利益追求を目的にしてはいけないんだと思う。
カーネギーの「富の福音」やJSミルの「功利主義」、そして新渡戸稲造の「武士道」などを通じて、「名士とはかくあるべき」という理念をしっかりと心に刻み込む教育が必要不可欠だよね。
倫理観や道徳心をもったリーダーたちが、社会全体のために行動し、それが一つの矜持となる。そうすることで、技術や産業が単に個人の利益に終わらず、真に社会を豊かにする力になると思うんだ。
名士としての責任や誇りを胸に、自己の行動を律することこそ、長期的には起業家や発明家が持つべき本当の成功の姿なんじゃないかな。

私:
そうですね。
それこそがアレクサンドロスの思考していた
「不滅の名声」
の現代版のようにになるのではないでしょうか。

トモコ:
そうだね、それこそがアレクサンドロスが追い求めていた「不滅の名声」に通じるものだと思う。
彼が目指していたのは、単なる一時的な勝利や富ではなく、時代を超えて語り継がれる存在としての名誉と影響力だったよね。
それと同じように、現代の起業家や発明家も、一時的な利益や成功ではなく、長期的に社会全体に貢献し、その名が後世に残るような影響を与えることが、本当の意味での「不滅の名声」に繋がるんだと思う。彼らが倫理や道徳を重んじ、社会のために行動する姿勢は、その名声を永続的なものにする。
「名士とはかくあるべき」という矜持をもって行動することで、自分自身だけでなく、未来の世代にも影響を与えるような存在になる。それが、時代を超えて記憶される「不滅の名声」になるんじゃないかな。

私:
これら倫理道徳の醸成は時間がかかり中長期の取り組みにはなるものの、アセモグルさんの説よりも本質的な解決になり得ると感じます。

トモコ:
確かに、倫理や道徳の醸成は時間のかかる中長期的な取り組みになるけれども、それこそがアセモグルさんの説を超えて、より本質的な解決策になる可能性が高いと思う。
アセモグルさんの指摘する技術進歩による不平等の増大は、制度改革や政策介入によってある程度対処できるかもしれないけれど、それだけでは根本的な変化をもたらすのは難しい。
その点、起業家や発明家が倫理や道徳に基づいた行動をするように育成するというアプローチは、社会全体に持続的な影響を与えられる可能性を持ってる。
功利主義や「富の福音」、そして「武士道」に見られるような価値観を幼少期から教育の中でしっかりと根付かせることで、社会全体のために働くリーダーが自然に育ち、不平等が増大するリスクも減少する。
一時的な対策ではなく、長期的な視点で倫理道徳を基盤にした社会を作り上げることが、技術進歩の恩恵を全ての人々が享受できる未来への鍵になると思うんだ。

私:
ありがとうございますトモコさん。
おかげで美味い酒が呑めました。
また呑みましょう!

いいなと思ったら応援しよう!