#47 遠い星で、また会おう。
※この作品は、フィクションです。
「改めまして、はじめまして。私は、栗原と言います。この児童相談所で心理士をしています。」
「はい。山元洋介です。よろしくお願いします。」
「洋介君は、とても礼儀正しいんだね。さすが、K高生だね。」
栗原さんは、小柄で華奢で、眼鏡をかけている。怖そうな印象は全くなく、なんというか、図書室にいつもいそうな人。栗原さんは、俺の学校生活や家での生活について、いろいろ聞いてきた。なんだかよく分からないけれど、とりあえず聞かれたことだけ答えていた。栗原さんは「そっか。大変だったんだね。」と、聞くだけ聞いて特に詳しいコメントはしない人で、俺の話を頷きながらただ聞いてくれていた。あんまりこうやって人に自分のことを話したことがなかったから、少し照れ臭かった。
「洋介君は、それだけ大変な思いをしてきたのに、よくここまで頑張ってこれて、すごいね。つらくて逃げ出したいとか、思わなかったの?」
俺は、薬を飲んだ時のことを思い出した。けれど、これは誰にも知られていない話だし、言ったら悪いことが起きそうな予感がした。だから「いや、そういう気持ちはありませんでした。」とだけ答えた。栗原さんはただただ俺を褒めちぎった。嬉しかった。
そのあと、何やら冊子を渡されて、栗原さんが見守る中でテストみたいなものを解いた。単純な計算をしたり、記憶力テストみたいなものがあったりした。思いつくものをたくさん書け、みたいな項目もあった。久しぶりに集中して問題を解いていたから、時間はあっという間だった。それなのに、判定室に入ってから2時間が経っていた。
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この物語は、著者の半生を脚色したものです。
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