#38 遠い星で、また会おう。
※この作品は、フィクションです。
2学期が始まってからというもの、完全に今までの生活に戻っていた。変わったことと言えば、伯母さんがご飯を作りに来てくれていたことぐらい。あとは、基本的に浩介と二人の生活。浩介は、部活が忙しいらしく、毎日朝早く家を出て、遅くに帰って来た。
伯母さんが来てくれるから、食事の準備は忙しくなくなった。浩介も、自分のことは自分でできる。母さんが、外泊や入退院の手伝いを伯母さんにお願いするようになった。寝る時間も十分に取れるようになった。気づけば、自分のことに集中できる環境が出来上がっていた。
でも、俺は既に、家族のために部活を辞めている。家に1人で早く帰宅して、勉強する時間はたくさんあるが、全くやる気にはならなかった。
夜、部屋の天井を眺めながら、自分の生きている意味について考えた。友達と会話をしない学校、元部活仲間との気まずい関係、勉強以外にすることがない自宅、学校と自宅を毎日毎日行き来する生活。楽しくもないし、これ以上楽しくしようという気にもならない。何もかもから逃げ、世俗から離れ、生殺しの状態で、だらだらと生かされている感覚がした。生簀の中で捌かれる日を待っている魚のような自分が、疎ましかった。いっそのこと、殺してほしかった。
ん? 殺す? 自分を?
ふと、戸棚に隠した薬のことを思い出した。そうか、その手が残っていたか。
俺は、明日、朝、浩介にどんな言葉をかけるか、考えた。できるだけ不自然にならないように、あくまで自然な流れで。少しだけ、気分が高ぶった。明日、実行に移そう。そう思うと、心が軽かった。
母さんも、こんなことを考えていたのかな…。
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この物語は、著者の半生を脚色したものです。
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