#26 遠い星で、また会おう。
※この作品は、フィクションです。
放課後、職員室のドアを叩き、部活の顧問のところへ出向いた。普段、別の学年の授業を担当している顧問は、不思議そうに俺の顔を覗き込んだ。
「あの…。先生、すみません。」
「おう、山元、どうしたんだ?」
「いや…実は、部活を辞めたいと思って。」
「え?どうした?」
「最近、部活についていけないし、家が貧乏で、遠征費が出せないんです。」
「いや、それなら、無理に遠征に出なくてもいいって話はしたじゃないか。」
「そうなんですけど…。」
「他に何か悩んでいることがあるのか?」
「いや。実は、部活に居場所がなくて…。」
「いじめられてるのか?」
「いや、そうじゃないんですけど、部活についていけないし、弱いくせに遠征も出れないし。それで先輩たちの足引っ張るのも嫌なので…。」
「山元、お前、そんなに悩まなくても、楽しんでくれたらそれでいいんだぞ?」
「いや、辞めさせてください。ごめんなさい。部活、楽しくないので。」
俺は、そう言って、顧問の説得を振り切って、無理やり部活を辞めた。顧問からは「俺から、みんなには説明しておく。家庭の事情ってことにしておくから。あまり気にするなよ。」と言われた。そうなんだけど、そうじゃないんだ。涙が少し出て、顧問が俺の肩をポンポンと優しく叩いた。
「大丈夫、気にするな。」
そういうことじゃないんだ。
俺は、帰りのバスに乗り込んだ。昨日の一件で疲れ切った体を座席に沈めた。一番後ろの席から、全体が見渡せる。基本的に全員が部活をする決まりになっているからか、K高の生徒は俺だけだ。窓の外から、雲一つない空が見える。それより、窓にへばり付いた小さなゴミが気になる。指で擦ってみたけれど、取れる気配はない。汚れは外側にある。俺の視界から離れてくれない。
もう、俺はどうしたらいいのか分からないよ。
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この物語は、著者の半生を脚色したものです。
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