花粉症と食事の関係
みなさま、こんにちは。ラブテリ研究チームの横尾です。最近暖かい日が多いおかげで、花粉症の症状が本格的につらくなってきてしまいました。私は5年ほど前から花粉症を発症し、健康診断時にアレルギーテストも行ったのですが、見事にスギの花粉症という診断が下りました。今年は外出自粛や常時マスク着用という事情にもより、花粉症の症状が抑えられてもよさそうですが・・・週末に子供の公園につきあうだけで、かなりの症状が出てしまっています。
なるべくなら、薬の服用をしなくても、食生活を含めた生活習慣の改善で花粉症の症状を軽くしたいもの。そこで、日本人を対象とした研究知見を中心に、エビデンスの紹介をいたします。
まず、食については、自社で乳酸菌をもつ食品メーカーさんが、乳酸菌の花粉症への影響を検証した文献をいくつか出されています。少数の研究結果を個々に見ただけでは科学的な妥当性がわからないので、そのような場合には、過去に行われた多数の研究の結果を総合的に検討する「システマティックレビュー」や「メタアナリシス」という方法で行われた研究を参照します。いわゆる乳酸菌のような菌を腸内に届ける「プロバイオティクス」という方法が、花粉症などのアレルギー性鼻炎に有効であるかを総合的に検証した外国論文では、プロバイオティクスの摂取がアレルギー性鼻炎患者のQOLを改善するという結果が見えてきました(1)。
なぜ腸の状態が変化することで、アレルギー性鼻炎が改善されるのでしょうか?その秘密は、免疫細胞にあります。免疫細胞の7割は、実は腸にあると言われています。免疫というのは非常に複雑な仕組みで制御されており、腸においてその制御に関わる免疫細胞をコントロールすることができる一つの方法は、先ほどのプロバイオティクス含め、食品であることがわかってきています。
プロバイオティクス以外にも、大阪母子保健研究の結果からは、大豆由来のイソフラボンや、EPA・DHAなどの魚由来の油を多く摂っている女性、また、海藻や各種ミネラルを多く摂っている妊婦さんで、アレルギー性鼻炎が少ないことがわかってきています(2)~(4)。EPA・DHAなどの不飽和脂肪酸や、海藻に含まれる食物繊維には、腸内環境を整える効果が認められていますので、納得の研究結果ですね。
また、日本人大学生を対象にした研究では、花粉症の有無と食生活の間に関連は見られなかった一方で、喫煙の有無や、ストレスの有無との有意な関連が見られました(5)。ストレス状態によって、免疫細胞のバランスが、アレルギー症状を引き起こしやすいバランスになってしまうという知見もありますので、日々のストレス管理による、アレルギー発症の抑制も重要であることが示唆されます。
ストレスに関しては、昨年、精神科医の江村和世先生が寄稿くださったコラムや、ストレスを和らげる効果が期待できる栄養素についてのコラムもありますので、ぜひそちらもご一読くださいね。
花粉症がつらい皆さん、何を食べようか迷ったときは、ちょっと腸のことを気にして食事内容を決めたり、ストレスをためないよう軽い室内運動などで気持ちをすっきりさせることを、考えてみてくださいね。
参考文献
(1) Zajac et al. A systematic review and meta-analysis of probiotics for the treatment of allergic rhinitis. Int Forum Allergy Rhinol. 2015 Jun;5(6):524-32.
(2) Miyake et al. Soy, isoflavones, and prevalence of allergic rhinitis in Japanese women: the Osaka Maternal and Child Health Study. J Allergy Clin Immunol. 2005 Jun;115(6):1176-83.
(3) Miyake et al. Dietary intake of seaweed and minerals and prevalence of allergic rhinitis in Japanese pregnant females: baseline data from the Osaka Maternal and Child Health Study. Ann Epidemiol. 2006 Aug;16(8):614-21.
(4) Miyake et al. Fish and fat intake and prevalence of allergic rhinitis in Japanese females: the Osaka Maternal and Child Health Study. J Am Coll Nutr
. 2007 Jun;26(3):279-87.
(5) 大森玲子. 花粉症に及ぼす生活習慣の影響について. 宇都宮大学教育学部紀要 第1部 (59), 127-134, 2009-03.
\私が記事を書きました/
横尾美星: ラブテリ研究チーム所属。2児の母。ラブテリでとったデータを国内のみならず世界にも発信し、女性・子どもの健康ケアの重要性を世の中に伝え、環境整備につなげていくのが夢です。