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和食と健康

こんにちは。ラブテリ研究チームの鈴木です。
在宅時間が増えたことで食生活が大きく変化し、家での食事の“栄養バランス”を意識することがふえたのではないかと思います。今回は栄養バランスに優れていると言われている和食がテーマです。

和食は平成25年にユネスコ無形文化遺産に登録されたことや、日本が世界で有数の長寿国であることから、世界中で健康的な食事として注目を集めています。厚生労働省も日本人の健康を支える食事を構成する要因のひとつとして、和食の「栄養バランス」をあげています。
和食に特徴的な食材として野菜,果物,豆類,芋類,海藻,お茶などがあげられますが、これまでそれぞれの食材が健康上、有益な作用を示すことが多くの研究で報告されてきました。和食はそれらの多彩な食材を同時に複数摂取することができるという点で優れていると考えられます。

バランスのとれた理想的な和食とは


ところが日本人の健康が和食に支えられていると言われながらも、ここ数十年で日本の食卓にならぶ食事は食の多様化にともない大きく変化していますし、現代の日本人の食卓はいわゆる欧米化が進んでおり、いつの時代の何を和食とするのか難しいところがあります。そこで農林水産省では昭和50年代頃の食生活を日本型食生活と定義し、バランスのとれた食事として推奨しています。ちなみにこの昭和50年代頃の日本型食生活とは、ごはんを主食としながら、魚や肉、野菜、海藻、豆類などの多様なおかずを組み合わせた主菜・副菜に加え、適度に牛乳・乳製品や果物が加わった食事のことをさします。

和食の栄養バランスに関する研究結果


近年和食の栄養バランスについて、科学的に健康有益性を明らかにする興味深い研究報告が増えてきています。動物を対象とした実験では、1975年の日本食を反映させた餌を摂取することで、内臓脂肪の減少や、脂肪肝、糖尿病、認知症の発症リスクの低減、寿命の延伸が期待できる可能性が示されました。またヒトを対象とした研究でも、より欧米化が進んだ現代食と1975年頃の食事を健康な人に食べてもらう実験をしたところ、1975年頃の食事をしたヒトの方が、現代食を食べたヒトに比べてストレスが軽減され、運動能力が増加したという結果(1)や脂質代謝、腸内細菌叢への影響が確認されました(2)(3)。

ストレス軽減に運動能力アップ!?1975年頃の食事とは


研究グループらによると、1975年頃の食事の特徴は下記の5つに分類されます。
①多様性
 さまざまな食材を少しずつ食べる。主菜と副菜を合わせて3品以上を揃える。
②調理法
「煮る」「蒸す」「生」を優先する。次いで「茹でる」「焼く」そして「揚げる」「炒める」は控えめに。
③食材
大豆製品や魚介類、野菜(漬物を含む)、果物、海藻、きのこ、緑茶を積極的に摂取し、卵、乳製品、肉は適度に(食べ過ぎないように)摂取する。
④調味料
だしや発酵系調味料(醤油、味噌、酢、みりん、お酒)を上手に使用し、塩や砂糖の摂取量を抑える。
⑤形式
お米を中心とした一汁三菜[主食(米)、汁物、主菜、副菜×2]を基本として、さまざまな食材を摂取する。

和食の食事パターンは健康寿命をのばす


また、世界中の食事について解析した研究においても、和食のパターンに近い食生活は肥満や心筋梗塞などを減らし、その結果健康寿命(平均寿命から寝たきりや認知症など介護状態の期間を差し引いた、自立して活動できる期間)を延ばす可能性があることがわかりました。
この研究では世界中の国の食事について「和食スコア」を算出し点数の高さと健康との関連を評価しました。具体的には、FAOSTAT(国別食料供給量データベース、家庭の食材の消費量を反映)を使って、伝統的な日本食によく使われる食材である米、魚介類、大豆、野菜類、卵、海藻類の6つの食材の摂取量の多さと、あまり使われない小麦、乳類、肉類の3つの食材の摂取量の少なさを点数化しました。点数が高いほど伝統的な日本の食事パターンであるといえます。そして、この点数と健康寿命との関連を解析したところ和食スコアが高いほど、肥満や虚血性心疾患が少なく、健康寿命が長いことが明らかになりました(4)。

このように和食の食事パターン(食事バランス)が健康によい影響を与える可能性が科学的にも明らかにされてきています。毎日の食事を考え、準備するのは大変ですが、少しでも余力のあるときは和食を食事に取り入れてみるようにしたいですね。昭和50年代頃の食事についてはなじみのない人が多いと思うので、これを機に世界に誇る日本の食文化を振り返ってみてもいいかもしれません。

参考文献:
(1) Tsuduki, T. Scientifically Evaluate the health benefit of the Japanese diet. Journal of The Japan Dietetic Association 60(2017).
(2) Sugawara, S., et al. The 1975 Type Japanese Diet Improves Lipid Metabolic Parameters in Younger Adults: A Randomized Controlled Trial. J Oleo Sci 67, 599-607 (2018).
(3) Kushida, M., et al. Effects of the 1975 Japanese diet on the gut microbiota in younger adults. J Nutr Biochem 64, 121-127 (2019).
(4) Imai, T., et al. Traditional Japanese Diet Score - Association with Obesity, Incidence of Ischemic Heart Disease, and Healthy Life Expectancy in a Global Comparative Study. J Nutr Health Aging 23, 717-724 (2019).

\私が記事を書きました/
鈴木 規恵 博士(学術) 管理栄養士:2020年からラブテリ研究チームに所属しています。学生時代は機能性食品を中心に実験室で行うような基礎的な研究をしてきました。現在は2児の子育てをしながら人々の食生活と健康の関連について研究中です。



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