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両利きの経営

イノベーションのジレンマ|luvhuey  は、成功している大企業がなぜ成熟期ののち、苦戦していくのかが語られていますが、この本は、そこからどう脱皮していけばよいか、が書かれているといえます。スタートアップのように守る者もなく、一点突破で事業を切り拓いていくのではなく、既存の事業リソースを使いながら、新規の領域に踏み出していくやり方、です。
リソースとは、お金のことだけを言っているのではなく、新規領域に応用できる技術や思想、スキルも含みます。この本の中に出ていたフィルムの酸化防止技術を化粧品の開発に活かした、という富士フィルムがよい事例でしょう。

むろん、こうした新規事業はすぐに芽が出るわけではありません。既存事業の売上のほうが断然大きく、目標達成確率も大きい。そうすると企業内でも衝突が生じやすい。また見る視点も重要視するべき目標も、既存事業と、新規事業では違います。この本の中ではそれを「探索(exploration)」と「深化(exploitation)」といういい方で分けています。

深化させることだけだって、経営は相当大変です。でも成熟した社会においては両方みていかないといけない。ここでは偉大な経営者たちがこの難しい経営を、理念を浸透したり、組織体制を、探索と深化で分けたり、さまざまな手法で成し遂げていく様子が紹介されています。

偉大な経営者がいなくては確かに、成たたない経営なのだけど、一人の経営者だけで本当に成り立つのだろうか。さらにいえば、この「探索」の形も自社の利益だけ見ていては成り立たない社会になってきている。地政学の問題もある。そんな中で経営者一人でどうにかなる問題なのか。

マーケティング力も、商品開発力もいるし、プロジェクトマネジメント力、BPR、会計スキル、トップサポート力、コーポレートガバナンスなど、一流のスキルをもつ人たちの活躍なくしてこの難しい経営は成り立たないのではないかしら。マーケティングはいろんな理論が発展しているし、商品開発力もPDCAなど汎用的に通じる理論もある。プロジェクトマネジメントもPMBOKなど可視化されたスキルがある。会計スキルもしかり。コーポレートガバナンスは論文はたくさんあるけど、汎用化できる形で理論化されているとは言い難い。何よりではそこで論じられていることを実践していく人をどうやって見つけて、どうやってスキルを磨いていくのか、ということはなんだか宙に浮いたまま、な気がします。この両利きの経営を支える幹部の人財像と人財を輩出するためにはどうしたらいいかを考えることが必要かもしれないなあ。



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