見出し画像

決戦!株主総会 ドキュメント LIXIL死闘の8か月

CEO辞任の経緯が不明確、偽計といえる形で株式を3%しか所有しない一経営者の一存で決まってしまったことに対して、異を唱え、株主提案をし、最後CEOに返り咲くまでの8か月を描いた1冊。
固くとらえれば、コーポレートガバナンスとはどういうことか?を
具体的なエピソードとともに学ぶ本、であろう。しかし、そこまで考えずとも、単純に「読み物」として読んでも十分、面白く、読み応えのある本である。

会社側についた人物にも取材を申し入れてはいるようだが、やはりどうしても瀬戸氏の言い分に寄っているところは否めない。読み物として楽しめるとはいえ、小説ではなく、あくまでもドキュメント(タイトルにもそうある)会社側の主張、潮田氏の瀬戸氏に対する見解など、相手方からみた視点を
もっと知りたかった気もする。ガバナンスとして問題があったのは事実としても、相手方から見えている世界は違っていたであろう。テレビドラマのように正か悪か、で切り分けられるほど単純なものではないのでは、という気もする。

企業側についたIRジャパンについては、近年利益相反について問題視されている。LIXILについてはむろん、利益相反にはならず、あくまでLIXILの主張を通すためにIRジャパンは策を練ったわけで、そのこと自体は否定されるものでもないが、仮に企業側が勝った場合、企業にどういうメリットがもたらされると考えていたのだろうか。勝てばそれでよかったのだろうか、という思いが渦巻いただけに、企業側の視点、言い分が不足していたのはもどかしかった。取締役だけでなくIRジャパンや、かかわった弁護士の言い分も聞きたかったが、それこそ機密事項として拒否されてしまうのだろうか。

LIXILは24年黒字に転じているようである。しかし業績好調とも言い難いようにもみえる。「死闘その後」の続編も読んでみたい気がする。この本では
瀬戸氏がCEOにめでたく返り咲いてハッピーエンド、という態ではあるが、実際の企業活動においてはこれはエンド、ではなくスタート、なのだから。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?