想定外シナリオと危機管理
東京電力のクライシス対応を軸に、危機管理で「あってはならない」企業行動が論じられている一冊。
東京電力の事故について、売り上げ利益の確保に偏り過ぎ、本来コストをかけるべき、リスク管理がおざなりになっていた、という主張が繰り返しなされています。そこに異を唱えはしませんが、そうなってしまったのはなぜなのかについてももう少し深堀しないと、そりゃそうだよね、で終わってしまうかなという感想を持ちました。
とはいえ、この本が出たのは、2011年で震災の直後。震災直後にここまで明確に言及していることに意味があったのかもしれません。
もう1つ、この本の特性としてあるのは、クライシス対応の際の記者会見の在り方が論じられていることです。危機管理広報を担当している人にとってはごく基本的なことなのかなという気もしますが、ポイントがわかりやすく書いてあります。また過去の失敗事例が何故失敗だったのかも解説してあります。ひどい会見をしてしまうのは記者会見をおこなう社長の認識不足、理解不測ばかりが理由ではありません。そうした不足を呼び起こす準備の在り方や、不用意な囲み取材を生じさせてしまう、記者会見場の動線の作り方なども要因たりえることが、わかりやすい解説からよくわかります。
やや同じことを何度も繰り返している感は否めませんが、わかりやすい文体で大変読みやすいです。また東京電力の対応のリアルを知らない世代が、当時どんなことが起こってしまっていたのか、とっかかりを知るのにはいい一冊だと思います。