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多様性の科学

いい本とはどういう本か。
読み終わって感動に打ち震える本もいい本、だし
知らなかったことをたくさん知ることができて満足するのもいい本。
次どうなるのかドキドキしながら読み進めることができるのもいい本。

さてこの多様性の科学も、いい本だなあと思ったのだけど、
上記にあげた「いい本」の定義にはあてはまりません。

英語の本を訳したからか、ちょっと読みにくいし、出てくる例示も訳本だからしょうがないけど、なじみがないものも多い。
でもいい本だなあと思います。
この本で書かれている内容そのものも、はっとさせられるけど
ここまで過去読んだ本や、新聞記事とリンクすることで気づきが深まったり考えが深まることが多くなる本はそうないなあ、と思います。

たとえば、CIAでたった1つの世界観でものを見る人間ばかりで組織されていては、敵を把握して何を計画しているか予測することなどできないという
指摘から、思い出すのは、安全。でも、安心できない|luvhuey (note.com)
の中に出ていた以下の一文です。

人はいったん集団に分けられてしまうと、そのグループ分けの基準が人間性や能力に何の関係もないきわめて些末なものであることがわかっていても、たまたま同じ集団に属したメンバーの性質や能力を高く評価し、優遇するようになるということである。

同質の集団に身を置くことは、とても居心地がよいものです。子どもは大きくなるにつれ、「友達」を作ります。最初はとなりの席にいた、というだけで友達になっていくのだけど、そのうち「気が合う」友達といることが多くなるのはごくごく自然な人間の性。

でも、それだけだと、視野が狭まります。仲の良い友達がいい、と思ってること、は違うクラスの違う同級生は同じように思っているとも限らない。
さらにいえば年齢の違う大人はどう思うかわからないし、違う国の同年齢の人たちはどう思うかわからない。昭和の頃の同世代はまた違った感想をもつかもしれない。異論を受け入れることで、考えも深まってくるし、広がってきます。また少なくとも「違う意見を持っている人もいるのだ」ということを知っているのといないのとでは、見える世界が違ってきます。

同質集団でなれあいの意思決定をすると手痛い失敗をする。「その怖さが分かっている企業がまだ少ない」と成蹊学園長 江川雅子氏は4/22日経の記事で述べています。

そういう意味で異質を受け入れるのは大変、な面もありますが、今同時に読んでいる「オウンドメディア進化論」でこんなエピソードが紹介されています。

「転校生」の立場の私は、その話(注:転職先の従業員の話)一つひとつがとても面白かったんですね。何より、従業員が語る商品に対する愛情や思い入れに感動しっぱなしでした。一見するとクールに振舞う従業員たちですが、いざ自身の取り組んでいることを話すとなると、まるでこどものように目をきらきらさせる。その熱量に触れて、入社するまで抱いていた「大企業」の人のイメージがガラリと変わりました。同時にこの話を「外に出さないのはもったいない」と思い始めました。さらにそういった発信が広告を含めて一切されていないという事実と、従業員もそういった想いを知らないという事実にぶつかりました

このエピソードでもわかるように、自分とは肌の合わないことを言われたりされたりする危険もあるけど、異質な誰かのほうが自分たちの価値を明確に指摘できる、という面もあるのかなあと思ったりもします。

と、こんな形で過去読んだ本、記事が次々と思い浮かび、本の内容と有機的につながることで、「多様性」についての考えが深まった感じがします。
グローバル、だのダイバーシティだのいろいろ言われていますが、それってつまりどういうこと?なぜ必要なの?ということを答えられる人なんていないんじゃないでしょうか?答えられないからかっこよさげな英語で逃げてるんじゃ、という疑惑も私の中にはむくむくわいてきました。
本来多様性であることは、変化していくうえで大事なことだけれども、しんどいことです。そんなかっこいい言葉で、一言で括れるようなものではありません。また何を「多様性」と考えるのか、というところも、基本的なことだけど難しい問いです。この本でも明確に答えが書いてあるわけではありませんが、考えるための「ひっかかり」を多くもらえる良書かなと思います。










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