2020.12.03.Fri.
私の隣に誰かが自ら望んで立つ未来など、想像したこともなかった。
想像しようとしたことはあった。けれどいつも想像はぼんやりと輪郭を結ばずに蜃気楼のようだった。それが今、現実となって、私の隣に実像を持って存在している。
奇跡だ。
私のことが特別に好きな人がこの世にいるとは。嘘のようだ。どうしてこの人は私のことが好きなんだろう。どうして私はこの人のことを手放し難いのだろう。どうして連絡無精の私が毎日連絡を楽しみに取れているのだろう。
「まだ病み上がりなんだから、まっすぐ帰って休んでよ。ほんとは一緒に帰りたいけど」
と送ると
「やだ。ってなわけで一緒に帰ろう。仕事早く終わらせるからさ」
と返ってきて、早朝、凍える部屋で私は笑い声をあげてしまった。
「はは……なんだよ『やだ』って。意味わからん。風邪引きだろうに」
何度見返しても笑えるが、同時に私の両目からは涙が止まらなかった。
「はは……変な人……」
特別に愛されるがゆえの幸福を、私は齢二十四にして初めて味わっていた。
こんなに甘いものなのか。特別がもたらされる幸福とは。まるで砂糖菓子、中毒にさせられてしまいそうである。
いつも信じられない速度で返ってくる返信や、律義に約束を守って送られてくる朝晩の生存確認もとい連絡。私の心の奥深くに根付く猜疑心が根負けし始めているのを感じている。
「こんなに好かれてるんじゃ、疑いようがないぜ」
と、いつか臆病な私が逃げ出してくれますように。
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