電動キックボードが、日本で初めて“公道“で”実証“されることの意味
お久しぶりです。Luupの岡井です。
前回のnoteから、なんと半年も経ってしまいました…。
今回は、「電動キックボードの日本初の公道実証」が始まったことを受けて、Luupにとっての電動キックボードの位置付けと、今回の実証実験の意味について、可能な限りわかりやすく伝えたいと思い、noteを書きました。
また少し長くなってしまいそうですが、お付き合いください。
そもそも、電動キックボードとは
「電動キックボード」と聞いて、ピンと来る人は日本にどのくらいいるのでしょうか。僕の予想だと、3~4割程度でしょうか?
というのも、電動キックボードは2017年から世界で爆発的に普及が開始している新しい乗り物です。直近数年間たまたま海外旅行に行っていない人は、知らなくて当然なのです。一方で、直近海外に行った人は、ほぼ間違いなく目にして帰国することになります。
なので、僕らが電動キックボードについてプレゼンする時も、「あぁ、あれね!」とすぐにイメージできる方と、そうでない方の差が激しいです。
電動キックボードとは、こんな乗り物です。
・子供達がよく乗っている「キックボード」にバッテリーをつけて、電動にしたもの
・アクセルがついていて、それを押すとスーッと前に進む
・こぐ必要がないのでスカートで乗れたり、スーツがシワにならなかったり、自転車と異なる利点がある
子供の頃に乗っていたキックボードが、アクセル付きの、キックする必要がほぼなくなった乗り物に進化したイメージをしていただければと思います。
日本における電動キックボードの法的な位置付け
日本では、電動キックボードは「原動機付自転車」に該当します。原付に該当するとはどういうことか?それは「原付としての保安基準を満たし、原付の走行ルールに従う必要がある」ということです。
具体的には、一部ですが、以下を満たす必要があります。
・バックミラー
・ナンバー
・ヘルメット着用
・免許帯同
・車道のみを走行
原付版電動キックボードを開発・改造し、実際にそれを走らせていたり、事業化したりしているケースも直近は増えてきました。
もちろんその形でも、安全で便利かもしれない。ですがLuupと、僕が会長を務める業界団体「マイクロモビリティ推進協議会」は、電動キックボードが安全に正しく走行されるための条件が「原付」なのか「別のなにか」なのか検証が完了していないと考えています。(もちろん法的には電動キックボードは「原付」の枠組みの中に入りますが、新たに生まれた機体モデルなので、新たに検証が行われるべきと考えています)「シェアリング」というプラットフォーム事業の実現を目指す以上、安全性の検証は必須です。よって、マイクロモビリティ推進協議会の各社は、原付版電動キックボードの事業化は行わない方針で、これまで運営をしてきました。
僕らが電動キックボードの実証を急ぐ理由
とはいえ、電動キックボードの実証実験は急いでいます。この新しいモビリティは、世界の先進国と呼ばれる場所では日本を除く全ての国で実証の段階を終えて、普及に向けて進んでいます。
コロナの影響を受けて、当初の予定を大幅に前倒してイギリスでも緩和が行われました。各国では、マイクロモビリティ専用レーンを増やす動きも活発になっています。11月末にはニューヨーク市でも正式に電動キックボードが合法化していたり、お隣の韓国では、12月10日から電動アシスト自転車の部類となることが決まっています。
「新しい移動手段の確保」「三密を避けた移動方法の普及」は、世界中のホットなテーマです。これに関する検討が、先進国で唯一日本でだけ遅れている現状について危惧しているのです。
電動キックボードは、普遍的、理想的なモビリティでは”ない”
こんなに電動キックボードについて熱く語っていると、まるでそれが普遍的な乗り物だと信じているかのように聞こえるかもしれません。実際に、Luupも「電動キックボードの会社」として覚えてくれている人も多いかと思います。
ですがあえて言うと、電動キックボードは、普遍的でも理想的でもない乗り物です。
電動キックボードは足を置く位置と地面が近いので、危険を感じた時にすぐ降りることができるのが大きな利点としてあります。しかし、体幹がしっかりとしていてちゃんと直立するためのバランス感覚がないと、もちろんふらついてしまいます。誰でも簡単に乗ることができますが、それは一般的には50代くらいまでの足腰が健康的な方に限られます。高齢化が加速するであろう日本において、全ての移動課題が電動キックボードによって解決されるとは思っていません。
僕は、最終的には「電動キックボード」ではなく、電動・小型・一人乗りの「電動マイクロモビリティ」の未来が来ると信じています。誰でも乗ることができて、IoTとの接続により速度制限やエリア制限などの安全対策が向上されている、少し未来の乗り物です。(Luupが思い描く将来のモビリティについては前のnoteをご覧ください。)
そして、電動キックボードは世界中で始めて公道で認められた「電動マイクロモビリティ 」の1つなのです。つまり、電動マイクロモビリティの普及のために、その第一歩として電動キックボードの安全上の検証とそれにまつわる技術革新を進める必要がある と思うわけです。
だからこそLuupは、「まずは急いで電動キックボードについて考えて、検証を急ごう」というスタンスを持ち続けてきたのです。
まずは「走行場所の拡大」から実証しよう
10月末から開始している今回の実証実験は、産業競争力強化法に基づく「新事業特例制度」を用いた実証実験です。車道に加えて、「自転車レーン」での走行が初めて緩和されました(もちろん、緩和対象は事前に申請を行った特定のエリア内の、Luupが提供する電動キックボードのみです)。
海外では、ナンバーやバックミラーはもちろん、ヘルメットなども不要な形で走行できるパターンも多くあります。日本の道路においては、どんな条件であれば安全性と利便性が担保できるのか?を探っていくのが、今の日本のステータスです。
シェアリングの形では提供できず、台数・ポート数・参加者数も大きく限った形での実証ではあります。いきなり平等に便利に提供できず心苦しいですが、未来に向けた大事な一歩となる実証です。
※参考:本実証に関するLuupのプレスリリース
9月16日 電動キックボードの公道走行実証の参加者事前公募を開始
10月16日 電動キックボードの公道走行実証の計画が「新事業特例制度」に認定
実は既に走行”されてしまっている”電動キックボードの現状
ちなみに、みなさんのうち何割かは「とはいえ電動キックボードって、今も街中を走ってるよね?」とつっこみたくてウズウズしているかもしれません。そして、その通りです。電動キックボードが国内で走行している形は以下の3つに分類できます。
1)原付化し、車道を走行
2)原付化せず、車道や歩道などを走行
3)今回の特例制度下において、原付化された電動キックボードの一部要件が緩和された形で、車道と自転車レーンを走行
「1)原付化し、車道を走行」は、法令上の問題はありません。ただ、車道でしか走行することができないため、例えば自転車レーンがある道では自転車レーンに侵入することはできないので、道路の真ん中を走行する必要があります。僕らは、その危険性の懸念から、これまで原付としての走行を行ってきませんでした。
「2)原付化せず、車道や歩道などを走行」は直近急増しています。渋谷や中目黒だと、1日に5回は見かけます。そして、原付化の必要性や法令に関する認知が不十分であることから、不適切な走行が減る見込みがありません。
「3)今回の特例制度下において、原付化された電動キックボードの一部要件が緩和された形で、車道と自転車レーンを走行」が、今回僕らが行う実証の走行の形です。
僕らの実証が「完璧に安全」だとは誰も言えませんが、国内で既に走行している電動キックボードと比較して「より安全」だとは言えると思っています。自転車レーンがある時は、左に避け、より安全な速度で走行することができるからです。
今回の実証によって、電動キックボードの規制に関する再検討が進むと同時に、原付化せず車道や歩道を走行してしまっている電動キックボードについて、正しい知識をつけ、間違った走行をやめるきっかけを与えられたらと思っています。
違法に乗られた電動キックボードによる凄惨な事故が起きてしまう前に、自分たちが電動キックボードの安全性の検証を急ぎ進めることで、関係者を皆巻き込んで正しい電動キックボードの在り方を布教していく責任が自分にはあると考えています。
この業界にとっての「最速」は「一歩ずつ」
僕らは引き続き、最大限丁寧にコミュニケーションをとりながら、最速で、階段を1つずつ登っていきます。
新事業特例の実証実験期間中、街中でLuupの電動キックボードを見かけたら、日本の「マイクロモビリティ」の未来を少し想像してみてください。そして、もし共感できたら、応援して頂けると嬉しいです。
さいごに
Luupでは
・CFO候補
・電動キックボード事業責任者 兼オペレーションマネージャー
・事業推進部長
・セールスマネジャー
・経営管理部メンバー
・プロダクトマネージャー
・ソフトウェアエンジニア
・ハードウェアエンジニア 等
を採用しています!
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