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じぶんを大事にするってどうすること?

 「ご自愛ください」とか「お大事に」とか言うけど、それってつまりどうすることなんだろう。自分を大事にしようとか自己肯定感とか聞くけど、具体的に何をどうすればいいんだろう。
 喉が渇いたら水を飲むことや、寒いから靴下を履くことはご自愛に含まれるのかな。でも喉が乾く前に、寒さを感じる前に、違和感に気付いて不快になる前に行動することは、大事にしてるっぽさがよりある。自分が不快になることを避けて行動したり、環境や人間関係を選ぶことが自分を大事にするってことなのかな。
自分を大事にしてない人は、その違和感に気付きにくいのかな。それとも気付いても無視しちゃうのかな。不快だと分かっていても我慢しちゃうのかな。どうして?自分を大事にしたい、自分を大事にしようと思っていないから?めんどくさいから?自分に何かをしてあげることはめんどくさいことなのか。大好きな人たちにはやってあげたいけど、自分にはしない。後回し。自分のこと大好きじゃないから?24時間365日一緒にいる自分のこと、好きになって親友になったほうが楽しいと思うけど、自分と親友になるにはどうすればいいんだろう。自己肯定感?
 自己肯定感って一体何?自分をいいねって感じること?自分のいいところがわからなくても、ただ生きてて、呼吸してて、存在してる自分のことをいいねって思えること?道を歩く。木がある。いいね。鳥が飛んでる。いいね。川が流れてる。いいね。自分がいる。いいね。そういうこと?赤ちゃんが泣いてる。いいね。ピアノが聞こえてくる。いいね。ランニングしてる人。いいね。かたや自分ときたら、何もせず、誰の役にも立たず、不満ばかり持って、暗くて、よくないね。そう思ってしまうのはなんでだろう。もう何年も、何十年も、自分に対してだけそう思う。逆特別。自分のこと特別扱いしすぎじゃない?自分なんて、ただの人間なんだから、木と一緒で、ピアノと一緒で、いいねって、それでいいんだから、悪い木も、悪いピアノもないように、悪い自分だってないはず。苦手なことや汚い部分はあっても、それが圧倒的によくない理由にはならないし、劣ってる理由にはならない。冷静に考えたらわかることが、わからなくなるのはなんでだろう。
 考え方の癖って、ほんとうのこととは別物のことがよくある。事実じゃなくても、こうって思い込んで決めつける。トマトは赤いけど、トマトは青に決まってるって思い込んで毎日自分に言い聞かせたら、赤いトマトを見ても、トマトは青って思っちゃう。ありえないんだけど、でもこういうありえないことが自分に対して起きてる。癖になるきっかけが、いつか遠い昔にあったのかな。よくないねって誰かに言われたことや、よくないなって自分に対して思ったことが、その時はちいさなこと、ほんの一瞬のことだったはずなのに、毎日毎日何度も何度も思ううちに、クジラより大きくなって、自分にのしかかってくる。重たい。動けない。もうめんどくさい。じゃあそれでいいや。ああ、自分ってよくないね。
 この座礁クジラを海に帰すにはどうすればいいんだろう。コップの水をクジラにかける。自分っていいねって言いながら。それを毎日やっていく。自分っていいね。パチャ。自分っていいね。パチャ。そしたらお水がどんどん溜まっていって、足首、膝、腰、胸、どんどん水位が上がって、自分っていいねが自分を包む。頭のところまできたら、クジラが泳ぎだす。クジラも身動きが取れなかったんだね。コップの水はできれば塩水がいいね。クジラは海の生き物だから。そんな思いやりがある自分ってやっぱりいいね。クジラはどんどん遠くなっていく。ときどきこっちを振り返ってヒレを振ってくれる。広い海で暮らすであろうクジラ。いいね。大きく手を振り返す。これが自己肯定感かどうかはわからないけど、それでもいいね。自分のことまだ大事にできなくても、大事にしてみたいなとは思えるようになってきた。いいね。
 そしたら自分が今こころよいのか、違和感があるのか聞いてみよう。どうですか?うーん、肩が凝っているような気がする。知らなかった!自分は肩が凝っていたんだ!お風呂にゆっくり入ってみましょう。胃が疲れている気がする。なんと!胃が疲れていたんだ!じゃあ優しいものをよく噛んで食べてみましょう。体がなんだかスッキリしない、滞ってる感じがある。たしかに!じゃあちょっと早歩きでお散歩して巡りを良くしてみましょう!と、まあ、こんな風にどうすればいいかはわかるようになる。
 でもさ、どうすればいいかはわかっても、まだめんどくさいって思うよ。お風呂の掃除して、お湯溜めるのめんどくさいし、優しいご飯作るのめんどくさいし、歩く格好に着替えて、外出するのめんどくさいし。自分のこと大事にしたい気持ちはあるけど、でもなぜかうまくできないんだよね。じゃあやらなくていいよ、今は何もやらなくていいよ。心が疲れてるのかもしれないね。できることをできるときにできるだけやる。それでいいよ。ただし、できなかったことは数えないこと、考えないこと。できたことだけを数えて、思い出す。今日はできたこと0個です。でも息ができた。いいね。それでいいね。
 あの人は仕事で出世して、あの人は結婚して子供を産んで、あの人は趣味を楽しんでいて、あの人は、あの人は…。焦らない焦らない。羨ましくなったり、自分は何もしてなくて悲しくなったりするね。でも大丈夫。怪我した状態で山に登ったら危ないよね。地図にのってない、自分にとって一番いい山を探そう。元気になったら登る山探そう。みんなが登ってるからって自分にとって一番楽しめる山かどうかはわからないから、どんな山がいいか考えながら、まずはゆっくり元気になろう。小さいことでもいいから、葉っぱの緑色のこととか、風のにおいのこととか、好きな音楽のこととか、自分を元気にするものを集めてながめよう。今こうしてあなたに話しかけているのは、あなたの親友、あなた自身だよ。一人だけど、一人じゃないから、いつも一緒だから、大丈夫だよ。あなたが自分を大事にできなかったとしても、わたしはいつもあなたを大事に思ってるよ。ずっと前から、生まれた時から、いつも思ってるよ。何があっても守るよ。だから大丈夫だよ。どんなに自分を大事にできてないって思っていても、できてる部分もあるよ。ちゃんと生きてるよ。大丈夫大丈夫。あなた(わたし)は大事な人だよ。

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