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【意外】思わぬ資源が枯渇。文明を支えてきた”砂”の減少と、今後我々が変えねばならぬこと:『砂と人類』

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人類は「砂」を使うことを諦めるしかない

「砂」が枯渇している?

環境問題への意識は非常に高まっており、プラスチックごみの削減や化石燃料からの脱却など、様々な取り組みが進められている。

しかしそんな環境への意識が高まっている現代でさえ、ほとんどの人に知られていない資源の減少がある。それが「砂」だ。

このような状況からして、遅かれ早かれ砂不足になることは避けられない。実際、すでに起こりつつある。カリフォルニア州の環境保護局は2012年の報告書において、砂と砂利については今後50年間で必要量の三分の一程度しか州は入手できないだろうと警鐘を鳴らした。英国では、陸地での砂採掘に圧力がかかっているため、徐々に海砂の採掘へと転じており、今では必要量のおよそ五分の一が海底の砂でまかなわれている。だが、これらの砂の供給はあと五十年しか続かないと予測されている。ベトナムの建設省は2017年に、このままでは十五年未満で国内の砂を完全に使い果たすことになると警告している

砂? と思うだろう。私も、本書を読み始めた時はそう感じた。砂なんか、そこら中にあるだろう、と。

そこでまず、「砂」に関する認識を統一しよう。

砂というのは厳密に定義されており、

直径が0.0625ミリメートルから2ミリメートルまでの、ばらばらの粒状になっている硬い物質

であれば、素材がなんであれ「砂」と呼ばれるのだそうだ。もちろん、私たちが普通にイメージするのは、岩や石が砕けたものだろう。しかしそれだけではない。

多くの砂浜には生物由来の砂もある。貝殻やサンゴや海の生き物の骨が砕けて粉々になったものだ。ピンク色や極端に真っ白な砂浜があるのはそのためだ。(不思議な色をしたたくさんの砂浜のなかでも特に珍しいのが、ハワイが誇るカウアイ島のグラスビーチだろう。砂の大部分が、長らく侵食されてきた色とりどりのガラスの無数のかけらなのだ)

ガラスも、規定の範囲の大きさのものであれば「砂」なのである。

使える「砂」と、「養浜」という衝撃

さて、そうなるとますます、「砂はあちこちにあるだろう」ということになる。それこそ、砂漠に行けば山ほどある。しかし本書で取り上げられるのは「産業用途で使える砂」である。そして残念ながら、砂漠の砂は産業用途には向かないのだ。

ほとんどの場合、砂漠の砂が産業用途に使われることはない。建設に用いるには、砂漠の砂粒のほとんどは丸すぎる。

だったら砂浜の砂はどうなんだ、と思うだろう。砂浜の砂は産業用途に使える。しかし、だからこそ問題が起こっている。というのも、世界的な砂の需要に応えるために、世界中の砂浜で砂が盗まれているからだ。

砂浜に鍵をかけておくことはできないから、盗まれ放題である。裁判所に訴えても、なかなか現実的には解決しない。悪徳業者の無許可の採掘のために、世界中の砂浜が今危機に瀕しているのだ。

しかし実は、砂浜の危機というのは、違法採掘だけではない。むしろ、今から話す事実の方がより衝撃的かもしれない。

「リゾート地」や「ビーチ」といった単語からイメージされる砂浜というのは、基本的に「人工物」である。ハワイもマイアミも、あの美しい砂浜は、観光客を呼び込むために人の手で作られているのだ。そういう砂浜は基本的に、どこかから持ってきた砂をただ敷き詰めているだけである。当然、波や風によって砂は持ち去られ、普通にしていれば砂浜は維持できない。

ではどうするのか?

「養浜」を行うのだ。

言わば砂浜の継ぎ足しである養浜は、すでに一大産業となっている。アメリカではここ数十年で七十億ドルを費やして、全国的に何百キロもの砂浜を人工的に再建しており、その費用の大部分が税金でまかなわれている

砂浜が人工物で、「養浜」しなければ維持できない、という話はまったく知らなかったので、非常に驚かされた。しかもこの「養浜」、当然だが、定期的に行わなければならない。砂浜というのは、大金を掛けても数年しかもたないのだ。また、世界的な砂不足で供給が難しくなる上、砂浜の砂は盗まれてしまう。我々が生きている間に、世界中の美しい砂浜はどんどん失われてしまうのかもしれない。

なぜ「砂」が足りなくなるのか?

砂浜が無くなるかどうかは、一部の人の関心しか惹かないかもしれないが、砂不足は全人類に関わる問題だ。そもそも不思議ではないだろうか。なぜ産業用の砂がこれほど足りなくなっているのか、と。しかし、次の文章を読めば納得せざるを得ないだろう。

空気と水を別とすれば、砂は私たちが最も利用している天然資源である。人間が消費する砂と砂利の量は、推定で毎年500億トン近くにのぼるという。

空気と水を除いて、我々が最も使っている天然資源が砂。そうだとするなら確かに、急激に無くなっても仕方ない。

しかし、「砂」なんか、使っているだろうか?

あなたは起きてから部屋の明かりをつけただろうが、その光の源であるガラス球は溶かした砂からつくられている。よろよろと入った洗面所では、砂を原料とする磁器製の洗面ボウルの上で歯を磨いたと思うが、そのとき流した水は近隣の浄水場で砂を通して濾過されたものだ。使った歯磨き粉には含水ケイ酸が含まれていただろう。これも砂の一種で、刺激の少ない研磨剤として、歯のプラークや着色汚れを除去するのに役に立つ。
あなたの下着が適切な位置に留まっているのは、シリコーンと呼ばれる人工的な化合物でつくられた伸縮素材のおかげだが、このシリコーンの原料もやはり砂である。(中略)
こうして着替えて身支度を整えたあなたが職場へと車を走らせたその道路は、コンクリートやアスファルトで舗装されている。職場では、コンピューターの画面も、コンピューターを動かすチップも、インターネットに接続する光ファイバーケーブルも、すべてが砂からできている。作成した文書を印刷する用紙は、プリンターのインクの吸収をよくするために、砂をベースとした薄い層でコーティングされているだろう。貼って剥がせる付箋に使われている粘着剤さえも、砂からつくられている

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