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落水…後編

先日、デッドストックのスピニングロッドのブランクと蛍光オレンジのブランクを手に入れた。

その2本にチャンピオンフェルールを付け、これまたデッドストックのパーフェクションガイドに自分でスレッドを巻いた。

スパインの位置とガイド間の距離やロッドの長さに拘り、どんな投げ心地なのか、どんな掛け心地なのか…

そんな思いで一生懸命作った自作のベイトロッドが見当たらない…

それも同時に2本もだ…

夜なべしてコツコツ作った2本の自作ロッド

前編で釣ったバスの引きは、十分堪能はしたが今年の初バスだっただけに正直それどころではなく、ロッドの掛け心地なんて意識も出来ず、曲がり方などほとんど確認出来ていない…

挙句、落水した時は突然の事すぎて何が何だかわからない状況だったのでロッドの事を全く気にしていなかった…

確かルーピールーパーが引っ掛かってそれを外そうとして落水した…

木の枝に引っ掛かっているはずのルーピーを探していると、あるではないか!

ルーピーがまだバッチリ木の枝に引っ掛かっている。

黄色いブルドッグフィッシングラインがルーピーから一直線で水中へとピンと張っている。

足元が急な勾配の岸側でカヌーを横たわせ、中に入った水をなんとか抜き、まずは3mほど前の水面に浮いているオールに向かって片手で交互にパドリング。

運良くスムーズにオールは回収できルーピーの側まで漕ぎ、黄色いラインを掴んでそこから一気に手繰り寄せた。

リールのクラッチは上がっているはず…

グゥゥと腕を上に引っ張ると水中からピーナッツ色のロッドが見えた!

ロッドの先を掴み無事に救出成功!

良かった〜…

と、ホッとしたのも束の間

もう一本の蛍光オレンジのロッドは?

オールを使い、パドリングでさっき上がった岸にもう一度行ってみた。

水中に目を凝らし辺りを見回していると、少しマッディ気味の水中にオレンジ色の細い棒が見えた。

カヌーから手を伸ばしたら届きそうだ。

手を水中に突っ込み手首をグルグル回してみると……掴んだ!細い棒の先にガイドらしき突起も確認!

引っ張り上げると、かなり短い…、折れている…。

その下にブラブラ状態の途中から折れたロッドとグリップとリールが現れた。

ワンピースだったはずのタックルはツーピースになって返って来た。

二度と繋げないツーピースとなって…

当たり前だがライフジャケットは絶対着用で


当然だが命が助かっただけでもありがたい。

それは百も承知だ。

しかし、目の前にはルアーが散乱している。

その数の多さに頭を抱えてしまう。

これらを今から全部回収しなくては…

1人で…

オールで…

シンプルに元気がない…

というよりも元気が出ない…

なんだかんだでだいぶ体力を使った…

ほっぺたをつねったが痛かった…

夢であって欲しかった…

全身びしょ濡れで、ビーンブーツを無くし、ここぞの時にいつも被っていたバケットハットもどこへやら…

しばらく途方に暮れた……疲れた…

そんな時だった。

ティラリラティラリーン ティラリラティラリーン 

びしょ濡れの僕のズボンのポケットから携帯が鳴った…

この携帯電話にする時、防水仕様を選んだ事を思い出した。

画面を見ると液晶に表示されたのは

「トップウォータージャンキー 内藤さん」

すぐに電話をとった。

「佐藤くん、来とるんやな〜車が見えとるよ〜どんなんで〜」

偶然にも内藤さんも僕と同じ場所に釣りをしに来たのだった。

…奇跡だった。

ここ徳島はバス釣りするフィールドは沢山ある。

ピンポイントでなぜここに。

まさに蜘蛛の糸。

普段から虫に優しくしていて良かった。

内藤さんに今年の初バスをミルヘッドターキーで釣った事が嬉しくてその写真を見せ、落水するまでの経緯を説明した。

助かって良かったなぁと心配しながらも内藤さんはジョンボートを出してくれ、散乱したルアーも一緒にすくって浮いている荷物も全て回収出来た。

本当に申し訳ない。

内藤さんが来ていなかったらと思うと…恐ろしい…
ありがとう、内藤さん!


結局薬局、無くした物は左足のビーンブーツ、長年愛用のバケットハット、それと偏光グラスだけで済んだ。

ズボンの前やシャツに色んなルアーがぶら下がっているのを内藤さんに外してもらう時は耳が赤くなった。

なんとも見窄らしい姿の47歳である

その後の釣りはというと何度かバイトはもらったが、キャッチは出来なかった。

僕も内藤さんといつも通りの釣りをして落水した事をその間は忘れる事ができたのでそのまま夕方まで楽しんだ。

びしょ濡れだった服も天気が良かったのでいつの間にかほとんど乾いていた。

初バスを釣った4月26日は、内藤さんに始まり内藤さんで終わった。

もし、僕があのまま帰らぬ人になっていたら第一発見者は内藤さんという事に…

とんでもない迷惑をかける所だった。

生きていて良かった。

これからも引き続き虫は大切に扱おう。

内藤さん、本当にありがとうございました。

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