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黄金の夜明け

12月28日、29日。B.LEAGUE第15節。
川崎ブレイブサンダース対茨城ロボッツ。
この日は、川崎ブレイブサンダースの3rdユニフォームが見れるエナジーデイズという興行の日。
昨シーズンから見始め、その時の黒いユニフォームに稲妻があしらわれているかっこよさを思い出して、ワクワクしてたデザイン発表。
ところが、出てきたユニフォームは、アレは沖縄の…いや、正直に思った事を書こう。

川崎ゴールデンキングスかな?
あ、聖闘士星矢か?ペガサス幻想が聴こえる……。

これがはじめに浮かんだ本気の感想。
篠山竜青も、新しくできた推しことマシュー・ライトも、また黒くてかっこいいユニフォームを着ると思っただけに、勝手に残念になっていた。

ただ、ユニフォームが期待外れでも、それが試合に行く行かないを決める理由にはならない。
ホームゲーム、年末のバスケ納め。
推しと川崎ブレイブサンダースをみたいだけ。
応援したいだけ。
それで理由は十分。

※※※※
ロスター発表は、当日の開始に近い時間ギリギリになってなされる。
舞台でも、俳優が体調不良や怪我で公演を休む事を事前に知らされるが、幸いな事に推しキャラ役や推し俳優がそうなる事を経験したことはない。
 
でも、バスケでは、ある。

昨年、初めて篠山竜青のうちわを作った日、彼が体調不良で帯同しなかった。
それを知ったのは、会場についてからだった。
メンタルクリニック受診後の水曜だったと思う。
ハッキリ言ってショックだった。
別に薬を飲みたくなるレベルではなかったけど。
当日、ニ推しだった藤井選手はいた。
ただ、当日の熱量の差で言えば篠山竜青が遥かに上回っていた。

でも、舞台でもそうだが、役者一人がいないだけでは中止は早々ない。
(主役級であれば話は変わってくるが……)
物語は回る。そこにいる人間で回す。
バスケもそう。そこにいる人間で試合を回す。

ロスターの情報はSNSで発表される。
当日ドタバタと買い物をしたり、グッズ取引したり、一息ついてご飯を食べたりとしていると、入場がいつの間にか始まっていて、結局事前に情報を見る事なく、アップにいるのかいないのかで知るパターンが多い。

今回のエナジーデイズもそのパターンだった。
ただ、初めはコートの遠くで見えたこと、あとはもう一人の推しのマシューや、特別指定選手の米須くん、山内くんに無中になってしまった事もあり、気づかなかった。

篠山竜青、長谷川技、体調不良でロスター外。

キャプテンとバイスキャプテンが、この年末最後にまさか出場無しとは想像も付いていなかった。
3rdユニフォームの二人が見れない、それは少し悲しくなった。

必然的に、鎌田選手を除けば、クラブの在籍年数の歴が浅く、また若い選手たちに試合の出来が掛かってくる事になると簡単に予想ができた。
ただそれは不安というより、不思議と期待が先だった。 
推し選手の欠場や3rdユニフォームのデザインの納得出来なさよりは、新しい川崎ブレイブサンダースの姿が見れる可能性の面白さが上だった。
(たった観戦歴二年目が新しいというのもおこがましいが)

推しの篠山竜青にフォーカスをすると、初めは最年長なのかと驚くくらい、プレイタイムがあり、スターティング5に名を連ねていた時期があった。
だが、徐々にその時間や機会は減っていた。
あるときは小針選手、ある時は柏倉選手が先発になる。
最近特に、柏倉選手のスターティング起用が増えている。
個人が好きが故に寂しい反面、チームが好きな故に逆に嬉しくもなっていた。
目に見えた変化をしている。変化を試そうとしている。
まるでスローガンの体現のようで。
……良いように自己解釈で納得してると、クラブの手のひらに転がされているような気もするけども。(或いは勝手に転がっているとも。)

ただ、この特別なユニフォームの日にロスター外になるというのは、正直驚いた。
私の中のファン感情としては、やはりいつもと違うユニフォームで、年末のホームゲームだからこそ、プレイしてる姿は見たかった。
走るゴールドの36歳、見たかった。
……だって、あなたキービジュアルになってるじゃない。ロスコ様とツーショットよ。

けど、今は結果的にこれで良かったのかなとも納得している部分がある。
連敗を10でストップ。 
試合は、今季では初の同一カード2連勝。

そのうち一試合は新加入(ある人にとっておかえりともいう)の川崎の未来、米須玲音の鮮烈な活躍ぶりがあった。
マエストロのタクトで、チームは息を吹き返し、勝利へのプレイを奏でた。
山内くんについては、正直もっと活躍の時間をあげて暴れさせてほしいと思ったけど。
それでも、二人にとってデビュー戦に勝ち試合を経験できた事は、とても大切な糧になるのではと、勝手ながら嬉しく思った。  

一方で、こう考える自分もいた。
これから必然的にロスター外選手は出る。
もう少し先取りをすれば。
篠山・長谷両選手はチームでは年長の部類になる。鎌田選手を含めて、チーム内最後の東芝組だ。
私は、チームから東芝組が全員去るとき、川崎ブレイブサンダースは、新陳代謝が一段落して新しい姿になると想像している。
そのときに、どれくらいのファンがそこに残るのか……商業的には無視できない要素だと思う。
チームが好きな人、選手個人が好きな人、マスコットが好きな人……ファンとは様々であるだろうが、川崎にお金を落とし続ける顧客は居続けてもらわなければならないだろう。
エンタメという商売であるから。
だから、今季のキャプテン、バイスキャプテンである両名を真っ先に外したのは、意図的な面があったのではないか。
ファンが振り落とされないように、いずれ来る未来の為に、勝機に賭けておためし版を提供した。
自分を納得させるための解釈として、そんな風に考えてしまった。

事象はただ在るだけ。
意味付けは個人の勝手。
これは私の妄想。

ただ、篠山・長谷川の二人は、実際調子を崩して病み上がりだったらしいが帯同してる……という話をSNSで見かけた。
勝手な妄想とは別に、ロスター外になるだけの理由はしっかりあったわけだ。
しかしながら二人を欠いても、チームはしっかりと動き、勝利ができた。
大人がいなくても、若い川崎の力でやっていけるところを、ファンにしっかりとみせつけた。

※※※※
29日、私はベンチ側のコートエンドに座っていた。
前日の様子をSNSで見た限り、二人は体調不良とのアナウンスではあったものの、楽しげに試合を見ていた話をチラホラみた。

アップが始まって、シューティングシャツでもなんでもない、黒いパーカーの篠山選手、長谷川選手がコートに入ってくるところを見た。
どこかラフな雰囲気な二人に、思わず、「あれ(出で立ちが)OBなんだよなぁ~」と、悪い癖でクソでかい独り言が出てしまった。
その落ち着きは、前日に勝利したせいもあったのかもしれないが。
体調不良で激しくは動かないからかもしれないが。
ただ、そんな言葉を口にしてしまうくらい、現役選手なのに、選手というよりは、一つ引いた立場にいるような雰囲気を感じた。
寂しいけど。
でも、別なかっこよさは堪能できた。

なによりも。
試合が始まって、ロスター選手の後ろの席に座る二人が、視界の中にチラチラよく映った。
二人の間に、何となく柔らかい空気を感じた。
ときに神妙に、ときに笑顔で、リアクションもしつつ、楽しげに試合を見つめていた。
ここまで背負ってきた肩の荷を、今ばかりは降ろしているかのようにも見えた。
その姿を見て、OB……というより、もはや父兄参観にきた父たちのようですらあった。 
これはSNSで他の方も書かれていたが、本当にそう形容してしまうような姿であった。
そんな二人の笑顔が見れたのが嬉しかった。

二人がどんなセカンドキャリアを描いているのか分からないが、これは川崎に起こる「あり得る未来のひとつ」の姿かもしれない、ぼんやりそんな風に考えた。

※※※※
日本の元日の風習は、現代人から見たら縛りプレイのようなものがたくさんある。
火や水の神様に休んで頂くように、あらゆる事を「してはいけない」としている。
あるいは、縁起が悪くなるという理由で、「してはいけない」という事もある。

火を使うな。
洗濯をするな。
包丁を使うな。
掃除をするな。
風呂に入るな。

知っている限りではこれくらいだ。
要するに、生活全般への制限であり、別な解釈としては「正月くらいは家事労働をお休みしましょうよ」という、意味もあるとかないとか。
(諸説があるので私も不明瞭)

そんな話を家族としていてふと思った。

これは結果論であり、バスケとは対チーム相性、個人技、チームプレイ諸々の要素も沢山あるとは思う。
だけど、キャプテン・バイスキャプテンの二人が欠場した2試合で勝利をした事実がある。
それに代わるように、特別指定選手の米須・山内が登場した。
特に米須選手の活躍は「末恐ろしい」という言葉がピッタリなほどであった。

神様ではないけども、川崎を川崎たらしめる要の二人がお休みした日。
ここから、もしかしたら新しい年が始まるかもしれない。
そうであれば、ヴィクトリーゴールドのユニフォームで彩られたこの節は、年末であれど川崎の元日なのかもしれない。
開けない夜はなかった。
それも、黄金色の夜明けを迎えた。
その試合を推しと見れることができてよかった。
きっと、いつかは居なくなってしまう川崎のシンボルと。
そんな風に、今ばかりはチームが勝った嬉しさを噛み締めている。

※※※※
今回の勝利の余韻や二人の欠場を受け止めるため、こうしてまるで筋のある物語かのように自分の中で納めた。
だが、事実は小説より奇なり。今後良い方にも悪い方にも何が起こるかわからない。
これは私が点と点を繋げて解釈した物語であって、正解でもない。
未来は誰にもわからないのだ。
我々は自分の物語を生きている。
チームも、選手も、あなたも、私もそう。 

Xでポストするより文字数制限がない分、この方がやりやすいのかもしれない。
半端に書いてしまうより、吐き出したい事、噛み締めたいことがあれば、また書いていきたいと思う。

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