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うつほ物語『嵯峨の院』

 宮仕えをはじめた仲忠は、源正頼の息子である仲澄と仲良くなり、正頼邸に出入りするようになりました。何度も訪れるうちに、あて宮に仕える侍女と親しくなり、和歌をあて宮に渡してもらうように依頼します。

秋萩の下葉に宿る白露も色には出づるものにざりける
(秋萩の下葉に置く白露も葉が紅葉するとともに色づくものです。私のあなた様への思いも抑えきれずに自然と表に出てきてしまいます)


 10月になり、東宮はあて宮の入内を源正頼に要請します。正頼は、妻の大宮や、長女の仁寿殿の女御(朱雀帝の女御)に、あて宮入内について相談します。大宮は、すでに東宮に入内している女君が大勢いるため、あて宮が東宮の寵愛を受けられず、つらい思いをするのではないかと心配しますが、仁寿殿の女御は、東宮が特別に気にかけている妃はほとんどいないため、心配ないと母大宮に伝えます。

 こうして正頼家の意志はあて宮の東宮入内へ傾きますが、入内は決定はされずにに月日が流れ、年が明けます。求婚者たちは、思い通りにならないつらい気持ちを胸に、あて宮に和歌を送り続けるのでした。

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