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防災減災のための地域づくり No.2 災害避難

防災減災に努める「#共助 」の方法を学ぶ機会はあまりありません。これは#防災減災の地域づくり  のためにアーカイブ動画に学ぶ事例学習資料です。「NHK地域づくりアーカイブス」は過去のNHKの多くの番組から「地域づくり」の良い実践例(good practice)の動画(視聴時間5~10分間程度)を集めたアーカイブスサイトです。このアーカイブスの地震や豪雨の災害に関連する動画から、私は① #災害避難 、② #防災のまちづくり 、③ #避難所運営 、④ #災害復興  へ最初の一歩、等の実践を紹介する事例を幾つか選びました。①から④のそれぞれのテーマに含まれるアーカイブ動画を視聴し、私なりに学び考察したことを纏めました。過去の良い実践例を学び、防災減災にむけた地域づくりについて、考え、計画し、行動するための参考資料として、あなたの地域社会に少しでも役立つならば幸いです。

下記のⅠからⅣのテーマについてシリーズの記事で提供する予定です。今回の記事は「Ⅱ 災害避難」です。
Ⅰ 防災のまちづくり
Ⅱ 災害避難
Ⅲ 避難所運営
Ⅳ 災害復興へ最初の一歩

 災害避難

「災害避難」に含まれるアーカイブ動画の事例は、大きく分類すると A「 #避難のタイミング と経路」、 B「 #避難場所 」、 C「 #避難訓練 」、 D「障害者や高齢者の避難」、 E「 #防災教育 」です。この分類に従い、今回の記事「Ⅱ  災害避難」の内容は以下の通りです。

A. 避難のタイミングと経路

●「避難のタイミングと経路」に関する事例の動画内容とリンク

B. 避難場所

●「避難場所」に関する事例の動画内容とリンク

C. 避難訓練

●「避難訓練」に関する事例の動画内容とリンク

D. 障害者や高齢者の避難

●「障害者や高齢者の避難」に関する事例の動画内容とリンク

E. 防災教育

●「防災教育」に関する事例の動画内容

A.    避難のタイミングと経路

避難のタイミングは住民には最重要の課題です。近年は災害の可能性が切迫している時に、行政の「避難指示」が大きな音量とともに、私たちのスマホに届きます。しかし実際に避難するのは限られた人数に止まります。2018年7月の「西日本豪雨」では、行政の避難勧告にもかかわらず、住民が避難しなかったために、多くの犠牲を出しました。私は2019年3月から5月まで「西日本豪雨の被災と復旧の語り部に変えて」と題して、豪雨災害とその後の復旧の記録をシリーズのブログ記事にしました。このシリーズ記事の中でも何度か避難に言及しました。住民が自主的に早めに避難することが一層重要になっていますが、避難の実践は今も最重要課題として残されています。

この記事で紹介するアーカイブ動画の事例では、積極的に避難する体制を地域レベルで作っています。その背景には、①過去の災害や苦い経験が教訓となり、避難する覚悟が地域レベルで出来ていることがあります。あるいは②巨大地震で大津波が予想されているからです。①と②のどちらでもない地域では、積極的な避難をする体制づくりのために、住民の話し合いを始めることが必要です。

避難のタイミングや経路を自主的に判断するには、災害の予兆を監視して避難行動を起こす「スイッチ」が有効です。率先して避難する人たちが、住民に「#避難の呼びかけ 」をする準備や体制も必要です。つまり避難する腰が重くなりがちな住民を、顔の見える関係で「避難させる」ための呼びかけが必要です。

私たちの町の災害に備えて、町内会や自治体から避難場所が知らされています。しかしその避難場所に行くまでの経路までは知らされていません。行政が指定する避難場所に行くまでに、例えば側溝のふたが無い危険個所を通らざるを得ないことがあります。行政から住民に向けて発信される避難情報に加えて、住民が自主的に避難するタイミングや経路を決定する積極的な姿勢が必要です。住民の近隣には避難のタイミング、経路、避難先を判断する参考となる情報が埋もれているので、自分でそれを発見する能動的な努力が必要です。

事例の(2)(4)(5)では避難のタイミングを住民が決定しています。動画(1)(3)(10)では避難ルートを住民が設定しています。住民に避難の呼びかけをするのは(3)(4)(5)の事例です。避難する際に「避難済み」カードを自宅入口に掲げる(10)の事例は、避難したかどうか外から一目で分かるので、救助に向かった人が災害に巻き込まれるのを防げます。(10)は避難先における生活の準備まで含んでいます。

●「避難のタイミングと経路」に関する事例の動画内容とリンク

(1)高知県土佐清水市中浜地区の自主防災の事例:「津波に備える住民たちの自主防災」(2014年放映、以下同様)。住民たちが自らの安全を守る地域づくりを消防団と住民が始めた。どの家からも15分以内で高台に避難できるよう、町をくまなく歩いて、独自に20か所以上の避難ルートを設定し、ボランティア住民の手作りで、避難時に歩きやすいよう、そのルートの整備を行った。住民の命を守る #防災マップ を作成した。女性たちは保存食や寝具を持ち寄って、避難所生活の準備を始めた。

(2)70年前のカスリーン台風などに襲われた群馬県下仁田町川井地区の独自の防災体制の事例:「過去の災害に学び予兆をつかむ」(2017年)。過去の災害時に起きた予兆現象や災害場所を調べて「土砂災害緊急避難場所地図」に情報を書き出した。その情報を基に、地区の各地で山や川の状況や予兆を監視する担当者をつくり、各担当者が防災委員長に連絡する。自治体の避難勧告よりも早く、自分たちで危険を察知して命を守る。

(3)京都府京丹波町上乙見地区の消防団が避難を判断した事例:「避難を判断する『避難スイッチ』の備え」(2018年)。町の避難勧告は出ていなかったが、川の異常に気づいた消防団員が一軒一軒を回って強い言葉で避難を呼びかけた。また避難所へ向かう橋が濁流にのまれ、使えなくなっているのを見て、小高い場所にあるお堂をとっさに避難場所として、逃げ遅れた人たちを誘導した。全員避難してひとりの犠牲も出さずに済んだ。近隣の山や川の状況に応じて、迅速な判断と行動をすることの重要性が分かる。避難のタイミングと場所を住民が自ら判断できる「スイッチ」をもつための活動が行われている。

(4)住民に呼びかけて避難する「率先避難」を広げた事例:「逃げ遅れを防ぐ『率先避難』」(2019年)。2018年の西日本豪雨災害では、身の危険を感じた人の半数が実際に避難しなかった。山口県で住民の避難を促す「率先避難」の訓練が始まった。 #率先避難 とは、避難する人が周囲の住民に呼びかけて一緒に避難する取り組み。しかし訓練で見えてきた課題は、自治会80世帯余りの内4世帯のみが訓練に参加したという結果。率先避難を住民全体に広げた地域は愛媛県大洲市三善地区。三善自治会の全世帯に配布された「大洲市三善地区災害避難カード『私の避難行動』」には、住民が「気にかける人」をあらかじめ書き込んで、避難時に呼びかける人を決めていた。西日本豪雨では、カードを基にした率先避難の呼びかけが行われ、多くの住民が避難して全員が無事だった。

(5)鹿児島県鹿児島市永吉地区の自主防災体制の事例:「住民自身が避難を判断」(2004年)。過去の水害時に行政の避難勧告が届かず多くの住宅が浸水。住民が避難を決める仕組みを作った。雨量や川の水位の情報(予兆)を収集して状況判断する班、防災広報車で避難誘導する班、自力の避難が難しいお年寄りを救出する班、避難した住民の食事を準備する班に分かれ、住民自身が連携して住民たちを避難させる #自主防災体制 である。

B.    避難場所

避難場所は行政が指定していますが、避難場所までの実際の所用時間、避難経路の安全性などに基づいて、住民自身が歩いて確認しなければなりません。もし安全性を満たさない場合は、住民自身が決定する必要があります。事例(6)は所要時間の他に住民が通り慣れていることなども考慮しました。(7)は行政が避難の対象にしていない、通勤者などの昼間人口を対象にする救助訓練の紹介です。先に紹介した避難のタイミングと経路に関する事例にも、住民自身が避難場所を設定しているものがあります。以下の「避難訓練」に関する事例(9)(10)でも住民が避難先を決定しています。

●「避難場所」に関する事例の動画内容とリンク

(6)住民たちが街歩きをして避難場所を検討した福岡県博多区春住地区の事例:「徒歩5分以内にある避難所」(2004年)避難場所が遠くてお年寄りが避難しなかった過去の教訓をもとに、どの家からも5分以内で到着できる避難場所を設けた。避難場所は、行政が定めた場所の他に、病院や銭湯などお年寄りの通いなれた道をたどれる場所、災害時優先電話がある郵便局、高層マンションの空きスペースなどである。

(7)東京都江東区の町会がマンションの自治会と協定を結んだ事例:「行政に頼らず市民の力で首都直下型地震に備える」(2012年)。木造住宅が集中し海抜の低い江東区では、首都直下型地震による火災や津波に備えて、マンションの廊下などを使わせてもらう協定を結んだ。新宿区の行政の救護所は、区民が対象で区内の小中学校にあり、ビル街の企業で昼間勤める30万人は考慮されていなかった。新宿駅の周辺では、高層ビル街の企業で働く人たちが、首都直下型地震に備えてビル街で負傷者の救助訓練を行った。

C.    避難訓練

避難の経路、避難場所などの設定の際には、実際に避難場所まで歩いて自分で確認する避難訓練が欠かせません。(8)は効果的な避難訓練が、東日本大震災の際に功を奏した事例です。(9)は津波が到達する前に、住民たちが避難を終えることができるように、避難経路と避難場所を確認する避難訓練を頻繁に実施した事例です。(10)は住民の避難を包括的に把握する防災計画です。すなわち住民一人ひとりが避難経路、避難先を設定し、防災責任者が住民の避難、避難先、安否などを確認することを含む計画です。

●「避難訓練」に関する事例の動画内容とリンク

(8)東日本大震災の大津波で犠牲者ゼロの岩手県洋野町の避難訓練の事例:「町を救った『犠牲を出さない』防災訓練」(2018年)。昭和三陸地震津波の災害に基づいた「絶対に犠牲を出さない」津波対策が効を奏した。その第1は、1998年に築いた高さ12メートルの防潮堤。第2に、消防団員の命を守るため、防潮堤の閉門作業にかかる時間を短縮し、津波到達の10分前からは何も作業をしないで避難するルールを決めたこと。第3に、避難訓練の時期を昭和三陸地震津波が起きた3月3日早朝から、住民がより参加しやすい9月半ばの休日に2006年に変更したこと。2011年の東日本大震災の発災時には、「10分前」のルールで高台に退避する消防団を見た住民は急いで避難して、洋野町は死者行方不明を一人も出さなかった。

(9)防災を地域の文化にする高知県黒潮町の事例:「巨大設備に頼らず防災を地域の文化に」(2014年)。黒潮町万行地区では高台まで歩いて20分かかる。想定では地震発生後23分後に津波が到達、30分後に全域が水没する。どんな逃げ方があるか、逃げ方の選択肢を増やすことを模索している。町は住民3700世帯全員の「津波避難行動カルテ」を作成。世帯ごとの避難に関するあらゆる情報が含まれる。自分の命は自分で守る意識を住民全員に徹底して広げる。住民たちは避難経路を確認する避難訓練を頻繁に実施。住民それぞれが考えた方法で避難先に向かう。訓練を通して新たな課題が判明。多くの住民が #避難タワー に集まった。タワーの階段を登るのに時間がかかる高齢者のためにゴンドラの導入を検討。高台避難に時間がかかる地域には新たな避難タワーの建設を決定。避難の方法と防災設備のハード・ソフトの両面が必要である。町は1年半で500回のワークショップを繰り返した。それを永遠に繰り返したい。地域の中で文化的な形に仕上げなければ防災は機能しないと考えている。

(10)最上川豪雨氾濫による水害を経験した山形県酒田市の「わがこと防災」の事例:「一人ひとりに対応した防災計画を」(2022年)。水害と津波に備えて「誰もとり残さない避難」のために自治会が以下の①②③④の取り組み。①「一人ひとりに避難経路を考えてもらう」こと。側溝の蓋がない場所など、周辺の危険ポイントが書き込まれた防災地図を見ながら、災害時に自宅から避難所まで、どのルートで避難するのかを、住民一人ひとりに書き込んでもらう。②住民の避難先を把握する。安否確認が速やかにできるよう住民の携帯電話の連絡先を自治会長が把握する。③携帯電話が使えない場合に備え、トランシーバーを用意して、住民の避難誘導に使い、安否確認をして市役所に伝える。④「 #避難済み 」カードを導入して、避難する際にカードを自宅入口に掲げてもらう。避難したかどうか外から一目で分かるので、救助に向かった人が災害に巻き込まれるのを防ぐことができる。

D.   障害者や高齢者の避難

 #障害者 が土地勘のない場所では、目や耳の障害で避難所と経路に関する情報を得ることは容易ではありません。(10)の事例では障害者と地域住民が共に、町の安全性を検証するための防災訓練を行い、安全な町づくりのための課題を発見しました。災害時の避難に特別の支援が必要な高齢者・障害者には、「 #個別避難計画 」を地域が作成することになっています。(11)の事例では様々な人たちが関わって、「個別避難計画」を作成するプロセスを紹介しています。

●「障害者や高齢者の避難」に関する事例の動画内容とリンク

(11)障害者と地域住民がともに検証する防災訓練が大阪市東淀川区淡路で行われた事例:「障害者と地域住民の防災訓練で課題を発見」(2018年)。二つの川に挟まれた海抜が低い場所。障害をもつ人が、土地勘のない場所で外出時に災害に遭ったら、無事に避難できるか。町の中で近くに目印となる高い建物がなく、どこに逃げればいいか分からない。高い建物があっても車椅子では階段を登れない。狭い商店街の中で地震が起きた時、多くの人が右往左往して車椅子が通れるか。目や耳の異なる障害をもつ参加者たちは、商店街の人々に何度も聞きながら、ようやく避難場所の公園に向かった。公園にたどり着いたが、車止めがあるので入りにくい。障害をもつ参加者の体験から、障害のない地域住民にとっても、安全な町づくりのための多くの課題が見えてきた。案内を設置するなど、課題を解決するための提案がされた。

(12)避難支援が必要な高齢者・障害者ための大分県別府市・防災推進専門員の事例:「専門家と地域が関わって災害時の避難計画を作る」(2018年)。南海トラフ巨大地震の津波避難対策。高齢者・障害者(当事者)を誰がどう助けるのかが課題。当事者と支援できる人を結びつけるコミュティソーシャルワーカーの役割を防災推進専門員が担う。 #ケアマネジャー や相談支援専門員など、ふだんから当事者をよく知っている専門職に、災害時の「個別避難計画」を作ってもらう。その計画について実際に避難を助ける地域(自治会や自主防災組織)の人の意見を聞く会議を開催。地域の人々から避難方法のアイデアが提案された。年に一度の避難訓練の日に、作成された「個別避難計画」を実践して、高台に避難する急な坂の移動方法を検証した。実際の訓練で地域の多くの人に、支援方法を知ってもらい、地域のみんなで支援を考えることが大事。

E. 防災教育

(13)は #幼稚園児 の避難訓練に取り組んで、避難行動の改善を実現した事例です。

●「防災教育」に関する事例の動画内容とリンク

(13)幼稚園が防災教育を取り入れた千葉県九十九里町の事例:「子どもの遊びに取り入れる防災教育」(2013年)。千葉県九十九里町の幼稚園では、東日本大震災時に子どもたちは日ごろの避難訓練通りに行動できなかったが、海から1.4㎞の幼稚園まで津波は辿り着かなかったので、園児は辛うじて助かった。毎月行っている避難訓練により力を入れことにした。安全教育推進校に指定されている東京都文京区の幼稚園の防災訓練を訪問して見学。防災教育に遊びや音楽を取り入れる新しい手法を学んだ。九十九里町の幼稚園で新しい手法を実践した後、避難訓練をしたら避難移動完了の目標時間15分以内を達成することができた。

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