![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/171130227/rectangle_large_type_2_2efff6853167c888b24624ad54b84bf8.jpeg?width=1200)
小説を好きになる方法、それは秋山瑞人作品に触れることなのかもしれない
『猫の地球儀』を読み終わりました。できるだけネタバレを避けて話しますが、何の情報にも触れずに読みたい方はここでブラウザバックするか今すぐAmazonで買ってください。Kindle unlimitedなら無料で読めます。
いやー……すごいですね。すごい。まずは言葉を失ってただ圧倒されました。『イリヤの空、UFOの夏』を読んだ時もそうでしたが、クライマックス部分における没入感が半端なかった。秋山瑞人の卓越した文章力が、読者を容赦なく物語世界に引き込み、登場人物たちの視点を共有させる。文章を読み進めていくうちに気づけば登場人物と私たちは一体となる。もはや感情移入なんて言葉じゃ表しきれません。私たちは、幽に、焔に、楽に、震電に、クリスになるのです。物語の結構後半までいろんな視点を行ったり来たりして、どちらかというと俯瞰した視点で物語が進んでいたのに、終盤になると全ての登場人物と同調して、涙を流している。入念に準備された遅効性の魔法です。断言してもいい、秋山瑞人はこれ以上ない天才作家です。本当の“小説家”って、この人のことを言うんだと思います。この人が、あるいはこの人に匹敵する才能の持ち主が存在する限り、小説という媒体は失われるべきではない。
逆に、これほど小説として完成されていると、その魅力を映像化しきれないというディスアドバンテージになってしまうんでしょうかね。『イリヤの空、UFOの夏』のアニメは原作の良さを全く活かしきれていなかった。全4巻の小説をアニメ6話に収めた無理のある構成も問題だったのでしょうが、文章を読むことでしか味わえない感動を映像化しきれなかったという側面が確実にあるでしょう。
少しだけ物語の内容に踏み込むと、全編通して浪漫に溢れた話でした。スカイウォーカーだとかスパイラルダイバーだとかいうなんだかよくわからないけどカッコ良さそうなワードの数々。宇宙にある猫たちの世界。猫たちがゴツいロボットを操って戦うという設定。そして、信仰が民衆を導き、支配する社会において、信仰に背いてまで自分の夢を追い求めようとする者の生き様。そう、この話は一言で言ってしまえば“夢”の話です。夢と、浪漫と、しかしそれだけでは立ち行かない厳しい現実の話。こうして書くとありふれた話のようですが、ありふれたテーマをここまで胸に迫る描き方をすることができるからこそこの作品は名作たりえる。オーウェルの1984か何かで読んだ記憶がありますが、良い本というのは、何か新しいことを教えてくれるものではなく、すでに知っていることを説得力を持って実感させてくれるものだとか。うろ覚えなので適当言ってる気がしますが、とにかくその言葉に則るとしたら、この本はまさしく良い本でした。
ここまで色々と語ってきましたが、私の言葉なんてこれ以上は野暮なだけでしょう。なんなら最初から感想なんて野暮だったのかもしれない。もしちょっとでも気になった方がいたら、とにかく読んで、圧倒されてみてください。通販で買うでも、書店で買うでも、近所の図書館に行って借りてみるでもいいです。何度も言うようですがKindle Unlimitedなら無料です。一応言っておきますがステマじゃないです。
↓確認してみたら『イリヤの空、UFOの夏』もKindle Unlimitedで無料だった。まだ読んでない人類は全員読め。
秋山瑞人という天才に触れて、心動かされたら、きっと小説というものがもっと好きになると思います。