妄想と裏切りの彼方へ
この素晴らしき妄想力よ。
人の妄想力、いや想像力とは、本当に凄いと心底感じる出来事があった。
妄想は中坊が全盛期かと思っていたが、半世紀生きた人間でも捨てたものではなかった。
かれこれ7、8年一緒に仕事をしている人がいる。
ただ一緒に仕事をしたとは言っても会社の同僚でもなく、はたまたクライアントなどではなく、所謂元請と協力会社さんといった関係である。
長い付き合いといっても昨今の世の中の状況もあり、電話でのやり取りのみだった。何故かこの方とはオンラインでのやり取りは無かった。
なのでリアルなKさん(仮)にはあった事が無かった。※いきなり登場人物をKさんとさせて頂いた。
リアルどころかビジュアル的な情報は全く無かった。
Kさんとの打合せは電話とメールのみだったが、すこぶる仕事が出来、その口調や声から伝わる雰囲気でかなり人物像が出来上がっていた。
仕事柄、モノづくりの関係なので図面のやり取りをしていたが、その図面が私は丁寧、親切、真面目ですと完全にしゃべっていた。
目は口ほどに物を言う、ではなく図面は無口な彼に代わり叫んでいた。
既に妄想の中で、Kさんは無口のキャラで出来上がっていた。
妄想は性格面だけでなく、ぼんやりだがビジュアル方面にも突っ走っていた。
電話、図面から読み取れる情報でワシのAIはフル稼働し、優しい中肉中背のちょっとだけ小柄の青年像を叩き出した。
死語だが、間違いない‼︎と思った。
そんなKさんが色々あって会社の同僚になることになった。
って言うか本当に世界は狭いって思う。
滅茶苦茶広いけど、自分の周りの世界は狭いといつも感じる。
話しを戻すと、Kさんが会社に来る。
あのお世話になりまくったKさんが、あの綺麗な図面を描くKさんが同僚に。
現役ドラフトで相手チームの4番バッターを指名出来たくらいの戦力だ。
会社が盛り上がる喜びとともに、少しドキドキがあった。
さあ答え合わせだ。
完全に裏切られた。
いや、性格は顔認証いけるぐらいそのままだった。
デカい。兎に角大きかった。
ビジュアルに裏切られた。
意外‼︎。凄く意外。
Kさんの初出社日に挨拶を交わした瞬間に心の断崖絶壁で叫んでいた。
185cm以上はありそうで、少しぽっちゃり目だったが、そこは不思議と威圧感は無かった。
顔認証出来るほどの性格面の合致がそれを中和させたようだ。
ワシのAIはバージョンアップが必要のようだ。
結果、完全にビジュアルを裏切られたのだが、ちょっと待てよと思う。
逆を言えば、この限られた情報で良くキャラ設定したなと。
恐らくだが、人が変われば同じ情報をインプットしたとしてもみんな違う妄想をし、自分の中でそれぞれ違うキャラを作るだろう。
その受け手の違いで様々な妄想が広がると言うなんとも面白い構造だなと思う。
なんだかスゲーな脳味噌と思い、この妄想力を持つ人間とはなんて素晴らしい生き物かと思うのです。
いつまでも止まらない、この素晴らしきかな妄想で創造を。
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