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設計あれやこれや15

アンモニアと中空糸膜式ドライヤ

 四国のある大きな工場の新設プラントに組み込まれる分析計を受注した事があります。
 エンジニアリング担当の上司は、分析計のシステムを検討し始めた頃、急病で入院してしまいました。
 私は、機械設計担当だったのですが、急遽、エンジニアリング担当補佐となってしまいました。当然、機械設計担当者の代わりはいませんので兼務となります。
 私自身、化学の知識がある訳では無いのでどうした物かなという感じでは有りました。

 その時、受注した営業の担当者と上司の書きかけのアンモニアの吸収システムのアウトラインのイメージ図を持って、元請けとなるエンジニアリング会社の所に打ち合わせに行きました。

 上司が考えた吸収システムは非常にかわいいコンパクトなシステムで、これで充分にアンモニアを吸収出来るという話でした。

 エンジニアリング会社からは、担当となる方の他に設計士の資格を持つ、プロジェクトリーダーの方が中心となっていて4人位だったと記憶しています。こちらは営業担当と私の2人でした。

 そこでの打ち合わせで、上司のアイデアを説明したのですが、計算的な根拠が無いという感じで、まずは却下されてしまいました。

 設計士さんの目指す所は、お客様に説明するための計算書、つまり計算上で、この方法が可能であるという証明的な根拠が欲しいのかなと、という感じでした。

 上司にはアンモニアガスと水についての親和性について、前もって、くわしく説明を聞いていたのですが、そういう説明ではダメという感じでした。

 後に、ネットでアンモニアと水の実験を見たのですが、そこでは試験管と水の容器が用意されていました。
 アンモニアの入った試験管と水の容器、その間にバルブを用意しておきます。
 次にバルブを開けると、ピューンと音がして、試験管のアンモニアガスが一瞬で無くなってしまうのを見た事があります。
 上司は、この事を言っていたんだなと、妙に納得してしまいました。

 方針が振り出しに戻り、エンジニアリング会社の頭脳という感じの面々は、どういう道筋で解決方法を持っていこうかと悩み倦んでいるという感じでした。

 この仕事を受注まで漕ぎ着けた、営業担当は、しばらくしてから、何気に、化学に関する法則の一つというか、考え方のヒントを提案しました。
 どういう法則かは、忘れましたが、化学に関する考え方である事は間違えの無い事と思いますが。

 ガリレオというテレビドラマ、知っていますか。帝都大学、湯川准教授の役の福山雅治がある問題で、ヒントを得ると猛烈な勢いで大量の計算式を書き殴るシーンが出てきます。
 今思っても、まさにそのもの、という感じでした。
 営業担当が提案したら、「それだったら、使えそうだ」という感じで、計算式を猛烈な勢いで、書き殴っていきました。
 最初、ホワイトボードに書いた式を書き写そうかと思ったのですが、余りに速いスピードで書いて、書ききれなくて、最初に書いた部分は直ぐ消すを繰り返すものだから、すぐに書き写すのを諦めてしまいました。
 そして、各部所のポンチ絵のような絵を書いて、各ヶ所の反応槽の容積を導き出して、ここは、この大きさでという感じで、指示をしました。

 ちょっと前、京浜工業地帯などの夜の工場プラントの見学が幻想的で、流行っていました。
 この林立する、配管や槽の設計をされているプラントを作る会社の設計士として活躍されている方ですから、この辺の計算とか情報がいつも頭の中から、引き出せるのかも知れないですね。
 ただただ、驚いてしまいました。

 怒涛の打ち合わせの後、残された、エンジニアリング会社の担当の方と、方眼紙に計算で出した値を元に3人で相談をしながら書きました。
 何とかなりそうだな、という雰囲気まで、図面をまとめて、その日は終了としました。

 このような事で、分析計を収めるキュービクルの背中に、上司が考えたシステムの10倍ほど有るアンモニアを除去する反応槽システムが出来上がりました。

 たぶん、用意した図面を元に何%のアンモニアガスを何 L/min の流量で水を流したら、何 ppm の濃度までアンモニアを削除出来ますという様な、計算式と計算結果を出していたら、きっと納得していただけたのかも知れません。

 ところで、設計士さんの出した計算は、お客様に計算書として、提出されたのでしょうか?

 上司が職場に復帰しても、そういう計算方法が有るとか、なにかしらの用意がある様な雰囲気は無かったので、私と営業担当のやり方は、それで最良だったのではないかと思っています。

 アンモニアを水に吸収させた後は、試料は飽和水蒸気の状態になっています。
 応答時間を短くするため、大部分はバイパスとして戻し、残りを水冷の熱交換器で冷やして水切りをします。

 この後、最終段の処理として、最初、SUNSEP を計画したので、「中空糸膜式ドライヤ」の中での話になってくる訳です。
 この時、AGC のSUNSEP 担当の方に、アンモニアの濃度によって、寿命までの時間の計算が出来る事や ドライヤ自身がアンモニア除去装置になってしまう、という話を聞きました。

 結局、最終的に、このドライヤを使ったのか、憶えてないのですが、ドライヤの代わりに、分析計の直前で保温ボックスで温調した事により液の発生が起きないようにしています。
その為、ドライヤは使用しなかったと思います。

 この仕事以降、ABBドイツのガス分析計を使用する事が多くなるに従い、ドライヤ(SUNSEP) も使用するようになりました。

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