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設計あれやこれや 8

基準圧力は地球

 試料を分析する時、液の場合は圧力が変わっても、密度がほとんど変わるわけでは無いのですが、ガスであれば圧力があると密度が変わってしまうため、いつも大気圧が基準となります。
 地球そのものが基準となる訳ですから凄いですよね。
 多少、高気圧であったり低気圧の時もありますが、それがどの程度、分析に影響を及ぼすのでしょうね。

 分析計へ流す量は出口側が大気圧として、流す試料の量が少なければ、ほぼ大気圧となります。
 又は分析するタイミングで一次的に流れを止めて、大気圧解放する仕組みを設けたりします。

 ですから分析計は大抵の場合、地球の大気圧を使用して、それを基準としています。
 そうすると分析計の所で圧力を調整する必要は無く、試料が流れている事が確認できる流量計が大事となってきます。

 この仕事を始めた頃、流量計はあっても圧力計が無い事に意外性を感じてしまったものです。
 実は、圧力計は地球の大気だった訳ですから。

 圧力計を必要とする場所は試料の取り出し点などで、減圧弁で減圧するため圧力計を必要とします。それは、この部分も含めた仕事を受注した時という事になります。

 試料の取り出し点となると大抵の場合、屋外の設置となります。ここで要求される事は防水に対する保護となります。これを IP 規格で表します。
 エンジニアリング会社から大型の仕事を受注した時の事です。要求された IP 規格の条件が、IP65 という事がありました。

IP65の意味は、
6は完全な防塵構造。
5はいかなる方向からの水の強い直接噴流によっても有害な影響を受けない。
という意味があります。

 これは、かなり厳しい条件です。
 どの圧力計も基本、カタログ上で防水、防塵について載せているのを、あまり見た事がありません、今はたぶん違うかも知れませんが。

 どうしても IP65 という高度な値を満足できる圧力計をみつけられなくて、エンジニアリング会社の担当者に問い合わせてみました。
 教えていただいたのが、長野計器のグリセリン入り圧力計、GV50です。
グリセリン入りとは、ポンプなどを利用した時など、流体に脈動が有る時に圧力計の針の保護のためで、振動で壊さないようにするという役割があります。
 エンジニアリング会社の担当者は、この圧力計にグリセリンを入れない状態で購入しているそうです。

 この話しを聞いた時、思ったのですが、せっかくグリセリンが入って針の保護までしているのに、グリセリンを抜く必要は無いのではないかと考えました。
 グリセリンの無い場合に雨水が入ってしまった時、圧力計の窓越しに雨水の中で動く針を見る事になります。
 あらかじめグリセリンで満たされていれば、水の入る余地が無いという訳です。
 お客様に聞かれた場合、単に防塵、防水機能が高いため選定しましたとだけ、お知らせすれば良いわけです。

 この件以降、圧力計にGV50を選定しても思惑通り反対する者は出ませんでした。

 GV50については、意外な所で使われているのを見て驚いた事があります。
 ABBの分析計に試料を入れる時の条件は、圧力、流量、試料がガスなのか液なのかといった性状が決まっています。その分析計に入れる条件に合わせて調節するシステムの部分を、サンプリング装置といいます。
 たまに、ABBの分析計をサンプリング装置付きで購入する事があります。
 そのサンプリング装置の圧力計に、長野計器のグリセリンの無い GV50 が組み込まれていました。
 残念な事にアメリカの装置のため、圧力計の単位は psi です。日本ではパスカル Pa です。
 サンプリング装置に使われている部品で圧力計のみ唯一、日本製でした。

 塩素の製造ラインでの分析計では、圧力が殆ど無いため水柱マノメータを製作しました。
 塩素の製造は塩水の電気分解で作られます。塩水を電気分解すると、塩素と水素に分解されます。
 塩水を分解するため、塩素ガスの中に塩と水が結構含まれています。そして圧力が殆ど大気圧に近いため、圧力を計る方法として水柱マノメータが適しているというわけです。

 水柱マノメータは8mmのPFAチューブと1000mmのステンレス製の直尺で作りました。
 Max. 10 kPa(G) でテフロン製の圧力計なんて水柱マノメータ以外、無いのではないでしょうか。

 この仕事を始めて、二代目の元、開発にいた上司や開発の部署を定年後、この部署に来られた方は、必ず圧力損失の計算に疑問を持たれるので、その度に実験をして見て頂いたのですが、塩素の仕事の時は、出荷前の機能検査のついでに確認して頂けるので助かりました。逆に計算通りなので、驚いていました。

 思ったのですが、今まで扱っていなかった計算など新しい事は、きちんと確認しないと気が済まないのかも知れません。さすが、開発気質という事なのでしょう。

 水柱マノメータの製作で最後に水を入れるのですが、PFAチューブの内径6mm の中に水を入れるのが結構大変です。間に空気を入れてしまうと、チューブの中で 水、空気、水、空気、水 というふうに交互になってしまい、水を一つにまとめるのが難しいのです。

「スチームを利用する」の話しの中の事なのですが、この状態を見て、蒸気の場合もこれと同じ事が起こっていると思いました。
 管の途中で凝縮水が発生しても、蒸気と一緒に水も押し出されていくイメージです。

 二代目の上司が言っていた、蒸気配管を下に向けると、凝縮水のみ下に流れていくという事について、細い管では、ありえないという事を再確認できたと思っています。
 これは、スチーム部品のメーカやエンジニアリング会社の方から伺った内容と、合っている事の裏付けになると思いました。
 水柱マノメータを製作する事により、蒸気(スチーム)の流れについて、具体的にイメージする事が出来ました。

 水柱マノメータとスチームなんて、関連の無い内容では有りますが、何気ない意外な所でヒントになったりする物ですね。

 ところで、スチームの圧力を計る時、圧力計はどの様に接続したらよいと思いますか?
 圧力計は温度に弱いため、ちょっと工夫が必要です。
 圧力計のメーカでも製品として出していますが、測定したい点から少し延長チューブを出して接続するだけで大丈夫です。延長チューブの部分はスチームが流れないため、熱が圧力計に伝わりにくくなるためです。
 お客様に納めた分析計に使用しているスチームの圧力を計りたくて、圧力計を接続した事があります。この時、300mm位の長さの直径6mmの銅チューブをスチーム管と圧力計の間に入れて計ったのですが、圧力計の根元部分の銅チューブは、手で触っても全然熱く有りませんでした。
 この時のスチームは2kスチームという事でしたが、圧力は0.19MPa でした。

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