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スチームを利用する2

 保温ボックスにスチームを利用する時、これで能力を確認するにはどうするのかな、と思っていました。
 エンジニアリング担当の方に、それとなく判断方法とか聞いてみるのですが、体験的に今まで続いている内容で進めているという感じでした。
 この仕事は、前任者から引き継いだわけで、引き継ぎの時に話を聞いてみると、その辺はエンジニアリング担当者の領分という話でした。

 そこで今回は、自分なりにスチームを利用する時の判断材料の話しでもしようかと思います。
 スチームによる温調ボックスを使うキッカケは、ABBの分析計の機械設計担当となってからです。

 温調ボックスの目的は、試料の性状により、分析計のサンプリング装置としての役割をもっています。

 基本、お客様側の方がスチームを扱う達人なわけだからだと思うのですが、熱交換器の時のように性能計算書を提出みたいな事は有りませんでした。

 とはいえ、いくらエンジニアリング担当者の領分とはいえ、圧力損失や熱交換器の計算のように何時、自分に降り掛かってくるかわからないと思いました。

 また、自分が設計した温調ボックスが、きちんと性能を発揮するか心配でもあるし、その判断のできる材料は欲しいと思いました。

 それはABBの分析計の担当になって、程なく訪れました。
「設計あれやこれや5」のなかで4流路の試料で使用している温調ボックスです。

 60℃ の温調ボックスを使用したシステムで、分析計の値に問題があって、1週間ばかり張り付いた事があります。

 この時、分析値の問題とは別に、合間の時間を使って、スチームボックスの能力的な事をテストしてみたいと思いました。
 そこで予定した試験をほぼ終えた辺りで、確認をしたい事が有れば自由にやって良いという許可をもらって最後に確認しました。

 このシステムの条件は
  ・スチームは 2k スチーム、
  ・シールテックのSTシリーズの60℃の温調弁、
  ・ボックスの大きさは、縦×横×奥行(600mm×600mm×300mm) 、
  ・断熱材はt25、64Kグラスウールボード、
  ・スチームの温調に使用した6mm銅チューブの長さ(約 5m)をサンドイッチのように鉄板に挟んでボックス背面に設置し内部を温調していました。

 温調ボックスに供給される蒸気の圧力、スチーム入口部の蒸気配管の管壁の温度、スチーム凝縮水出口の管壁の温度、蒸気の凝縮水量の計量等を測定しました。

 ・蒸気の圧力 0.19 MPa(G)
 ・スチーム入口部の蒸気配管の管壁の温度 127℃
 ・スチーム凝縮水出口の管壁の温度 124℃
 ・銅チューブを挟んだ鉄板の温度 80℃以上は有りました。
 ・ボックスの扉を閉めて内部温度が 約60℃ の時の凝縮水量 8分間で 160mL
 ・ボックスの扉を開放して温調弁が全開の時の凝縮水量 8分間で 200mL

 2Kスチームの飽和蒸気温度は、約130℃ で、ボックス内部の温度上昇は感覚的には、温度の上がる速度も速い感じでした。
 この時、背面ヒータの鉄板が80℃以上あるため、70℃ 位までは余裕で、いけるのではないかという感じを持つ事ができました。

 この事がキッカケで温調ボックスの能力について、自信をもつ事ができました。その後、2Kスチームで、80℃を越えた場合、ボックスの背面だけでは無く、側面、底面にスチームヒーターを追加し、断熱材を50mmにして気密性を上げる事で対処しました。
 実際の所、80℃を越える要求自体、殆ど無い事ですが。

 数年後、同じ大きさのボックスで、オールテフロンの仕事を受注した事があります。この時の温調ボックスは、たまたま、私が1週間張り付いた時と同じ条件でした。
 ただ違う事は、ボックスの中に入れる部品は、テフロン系のフッ素樹脂で、最高使用温度を100℃で設計しました。もちろんフッ素樹脂ですから、チューブ以外は100℃を越える物は手に入りません。

 そこで使用している温調弁に異物が挟まった事が原因と思われるのですが、バルブが閉まらなくなってしまいました。

 交換用の温調弁がくるまでの間、一ヶ月の間、閉まらなくなった温調弁を使い続ける事になってしまいました。
 その時のボックス内温度は、ほぼ100℃ に近づく温度になっていました。
 ですから先の1週間、張り付いた時のシステムでも、温調弁が開きっぱなしになれば、25mmの断熱材で100℃位までは、徐々に上がってしまう可能性がある事が判断されます。

 この事も、さらに自信を深める追加の材料となりました。
 そして、これらの事は私にとって自信を持ってスチームによる温調ボックスの設計ができる根拠となりました。

 ところでボックス内を温調するとボックス内で場所により結構、温度ムラが発生してしまいます。
 この温度ムラを無くすため、流量制限チューブ(キャピラリ)等で空気を流して、ボックス内部を撹拌するようにして対処しました。「流量制限チューブの設計」
 参考までに。
 ところで蒸気の消費量を、テスト結果、凝縮水量8分間で 200mLから求めると、1.5kg/h となります。
 これもまた、参考になりませんでしょうか。上司は新規の仕事で、お客様から蒸気の消費量を要求された時、この値を使用していました。

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