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中空糸膜式ドライヤ
分析計によっては、試料に含まれている水分に干渉を起こす場合があります。
試料に水分が含まれていて、その水分によって干渉する事が考えられる場合、中空糸膜式ドライヤ SUNSEP を使用して水分による干渉を小さくする対策をよくします。
このドライヤは二重管の構造となっていて、内管に試料ガスを流し、外管と内管の間に計装空気を流して使用しました。
内管の水分の多い試料から、内管の外側を流れる乾燥空気(計装空気)に水分のみが移動する事により除湿されます。
お客様の試料の温度が高く、水分が多い、例えば飽和蒸気に近い状態で有ったならば、液として、水が発生するとSUNSEP をダメにしてしまう為、まず試料ガス中の水分をボルテックスクーラを利用した熱交換器により、水を分離させた後、更に除湿をする為に中空糸膜式ドライヤ SUNSEP という使い方をしました。
しかし、試料の温度が高くなければ、そこまでせずに気液分離のみで対応しました。
気液分離方法については、「ガス中の液を排除する方法1」 や圧力が低い場合、水封による方法、金属配管が使えない場合は、しごきポンプを利用するなどの方法が有ります。
海外の仕事を受注した時で、ABBドイツのガス分析計を扱い始めた時だったと思います。
この時、初めて水分を取る対策として、中空糸膜式ドライヤを使用しました。
多分、選定した分析計の中に、試料に水が含まれると、正確な分析が出来ない等の情報を入手しての対策だったのだと思うのですが。
エンジニアリング担当の上司が見つけた物は、中空糸膜式ドライヤ(または、メンブレンドライヤとも言います。)ではあったのですが、CKD、SMC、コガネイの何処かの製品でした。
忘れてしまったのですが、このどれかを採用して、試料の水分除去として、中空糸膜式ドライヤを選択し装置に組み込みました。
その時のいきさつも、あまり覚えていないのですが、選択したドライヤは、装置を出荷した後、問題を起こしてしまいました。
最初に選定した中空糸膜式ドライヤは、水分子が通過出来る程度の穴が空いているため、水が通過出来るという事でした。だから水分子より小さい水素分子も通過してしまうという事が分かったのだそうです。
だから、このドライヤを使用すると、分析している水素まで排除されてしまうため、正確な分析が出来ないという事でした。
そこで、水素の漏れないドライヤとして、見付けてきたのが、パーマピュア社とAGC社(旧社名は旭硝子)が扱っている中空糸膜式ドライヤです。
このドライヤの材質はテフロンの仲間のナフィオン(Nafion)で、これを中空糸膜に利用したガスドライヤです。
ナフィオンは、ガス中の水分子を吸収して膨潤するという特徴があるそうです。
そして、管壁がナフィオンの場合、膨潤したフィオン中の水分子を管の外側か内側の湿度の低い方に放出して、管の内外の湿度を同じにしようとする性質があるという事です。
この性質を利用するとドライヤ又は加湿器として、利用する事ができます。だから他のメーカの中空糸膜式ガスドライヤと名前が一緒でも全然、別物です。
ナフィオンの利点としては、テフロンの仲間で、大抵の試料に対応する事ができます。
ただし、ナフィオンは弱酸性という特徴が有ります。
その為、試料がアルカリ性の時は使用できないという事になります。弱酸性のナフィオンがアルカリに反応して、破壊されてしまうそうです。
逆に、この特長を利用して、アンモニアスクラバーという製品をパーマピュア社からアンモニア除去装置として販売されています。
実は、AGCのSUNSEP を初めて使用する時、他部署で大量に使用している事が、この時、分かったのです。
これもまたイハラサイエンスの継手の時と一緒で、灯台下暗しだったわけです。「設計あれやこれや10 」
早速、SUNSEPを組み込んでいる装置の担当者に話を聞きにいきました。
その時の話は、大気の分析を行う部署だったのですが、大気中の80% もの水分を除去する能力を持つドライヤだという事で絶賛していました。
この話を聞いて気を良くした上司は早速、出荷してしまった海外の装置に使用したドライヤをSUNSEPに交換する手筈を整えました。もちろん装置に組み付けの設計は私ですけど。
この後、その直ぐ後に次の仕事で計画している試料の事も有り、もう一度、上司に命じられて今度は私だけで聞きに伺ったのですが、上司と一緒の時とは、180度違う対応で、「そんな都合の良い物など、あるわけ無いだろう」と、けんもほろろの対応でした。昔の事でしたので、何に問い合わせたのかは、いまいち覚えていないのですが、試料にアンモニアが含まれている場合の事だったかも知れません。
上司には、対応出来る物は無いという事のみ、報告した事を覚えています。
この人は、人によって態度を変えるのだなと思って、この人に聞きに行くのは、もう止そうと思いました。
それから後は、AGC のSUNSEP 担当の方に直接、教わる事にしました。
アンモニアを含む試料をSUNSEP に流すと、アンモニア除去装置になってしまい、寿命が短くなってしまうという話です。
アンモニアの濃度によって、寿命までの時間の計算も出来るようでした。
毎回の仕事の度に除去される水分量の計算もして頂き、これに伴い、露点計算の仕方も教わりました。「露点の計算方法」は、その方に教わった方法です。
分析計の性能に関わる事なので、どんなにか助かったかと、思っています。ありがとうございました。
SUNSEP やパーマピュアドライヤは、ジャパンコントロールスさんから購入する事が出来ます。
また、SUNSEP はAGC の製品を扱う所であれば、どこでも購入できます。
私は技術情報が日本語でありメーカの担当者と直接、相談出来るわけで、もっぱらSUNSEPばかり使ってましたが。
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