
隣人と奇妙な出会い
これは偶然であり、必然であり、そして、
"奇妙"な2人の出会い
瞳月:はぁ…
夏鈴:…122回
瞳月:なぁ、
夏鈴:なに?
瞳月:人のため息を数えんのやめてくれへん
夏鈴:人前でため息つきまくる瞳月が悪いよ
瞳月:はぁ…だからって普通数えるか100回以上のため息を
夏鈴:まぁ…好奇心が勝っちゃったよね、あと今ので123回目ね
瞳月:夏鈴!
夏鈴:ふふっ、ごめんごめん
瞳月:まったく…
夏鈴:で、何があったの?
瞳月:ん?
夏鈴:そんなため息ついてるんだからなんかあったんじゃないの?
瞳月:いやぁ……恋したいなぁって
夏鈴:よし、解散
瞳月:嘘やん!嘘ちゃうけど嘘やん!
夏鈴:なに?大学1モテてる山下瞳月さんが恋したいとか嫌味?
瞳月:…そんなつもりで言ったわけちゃうもん
夏鈴:はぁ、なんで恋したいの?
瞳月:……白馬の王子様に会いたいから
夏鈴:お金は置いとくから
瞳月:ごめんやん!さすがに2回目はボケやから!
夏鈴:次は無いよ
瞳月:…はい
夏鈴:それで、なんで恋したいの?
夏鈴:あんた今日も告白されてたじゃん
瞳月:そう!それやねん!
夏鈴:うわ、びっくりした…
瞳月:しーって可愛いからモテるやんか
夏鈴:…チッ
瞳月:おいこら、舌打ちすな
夏鈴:はぁ、続きを
瞳月:やから言い寄ってくる男はいっぱいおるけどそいつらって全員しーの上辺しか見てへんわけやん
瞳月:まぁ分かるで、しーってめっちゃ可愛いから分かんねんけど
瞳月:しーの見た目に惹かれへん、しーの中身を好きになってくれる男に出会いたいねん
夏鈴:…まぁ、瞳月の中身って最悪だもんね
瞳月:言い方な
夏鈴:…そんなに言うならさぁ、瞳月から気になる子にアプローチしたらいいじゃん
瞳月:…それで何回も失敗してるの知ってるよね
夏鈴:あぁ、ラーメン食べに行って麺やわで頼んでフラれたやつね
瞳月:あれは粉落としで頼むあの男が分かってへん
夏鈴:あとあんたストーカー気質なところあるもんね
瞳月:…気になったらとことん知りたなんねん
夏鈴:それで夜道に不審者と間違われてたしね
瞳月:あん時は大変やった…
夏鈴:そんな瞳月の中身も全て愛してくれる男の子に現れてほしいと
瞳月:そう!
夏鈴:…無理でしょ
瞳月:なんでや!?
夏鈴:瞳月みたいに顔が良いと加点式じゃなくて減点式になるの
夏鈴:その顔でその性格はアウトだね
瞳月:うぅ…しーの王子様は一体どこへ…
夏鈴:まぁその内現れるよ
瞳月:…ほんまに?
夏鈴:あっ、私次授業だから行くね
瞳月:おい夏鈴!
夏鈴:王子様探しがんばってね〜
瞳月:…あの薄情者め
瞳月:はぁ…ほんま何時になったらしーの王子様に出会えんねん
瞳月:おー…さぶっ
瞳月:やっぱり寒い時はラーメンよなぁ
瞳月:すいませ〜ん、ラーメン超やわで
瞳月:いただきます!
瞳月:美味っ!
瞳月:やっぱり超やわやねんって
瞳月:粉落としとかほんまナンセンスやわ…
瞳月:あ〜美味しかった
瞳月:でもしーも衰えたな…替え玉3つしか出来んかった…
「お会計1610円になります」
瞳月:は〜い…?…あれ?
瞳月:あれ!?ない!?なんで!?
○○:……あの〜どうしましたか?
瞳月:いや…あの……お金が無くて…
○○:…払えないってことですか?
瞳月:…はい、
○○:じゃあ僕が払いましょうか?
瞳月:え!?いやいや!申し訳ないですよ!
○○:でも今払えないんですよね?
瞳月:…それはそうです
○○:ならここで会ったのも何かの縁ですから
瞳月:…ならお言葉に甘えて
「ありがとうございました〜」
瞳月:さっきはありがとうございました!!
○○:いえいえ、困った時は助け合いですよ
瞳月:このお礼は必ずしますから!絶対に!
瞳月:ほんまに!何がなんでも返すから!
○○:ふふっ、面白い方ですね
瞳月:え?
○○:いや、綺麗な人だと思っていたので中身のギャップが面白くて
瞳月:中身が面白いって初めて言われたかも…
○○:そうですか?綺麗で面白いなんて最高なのに
瞳月:ふへへ、ありがとうございます
○○:いえいえ、それでは僕はこれで
瞳月:あっ、名前だけ聞いてもいいですか?
○○:○○です、村井○○
瞳月:私は山下瞳月です!
○○:ふふっ、また会えたらいいですね
瞳月:ぜひ!
瞳月:ふへへ…
瞳月:ふへへ〜
夏鈴:…キモ
瞳月:ふへへ〜
夏鈴:…ダメだこりゃ
夏鈴:バン!
瞳月:うわ!?
夏鈴:気は確かになった?
瞳月:…急に机叩かんとってや
夏鈴:目の前で脳内お花畑になってた瞳月が悪い
瞳月:だってぇ〜、ふへへ〜
夏鈴:おい
瞳月:…ごめんなさい
夏鈴:っで、何があったの?
瞳月:実はな、出会ってしまってん
夏鈴:だれに?
瞳月:運命の王子様に
夏鈴:帰っていい?
瞳月:今回はほんまやから!
夏鈴:どこで出会ったの?
瞳月:カクカクシカジカ…
夏鈴:ふ〜ん、そんなことがあったんだ
瞳月:聞いた割に興味なしかい
夏鈴:だってその運命の王子様に出会う可能性低すぎるでしょ
瞳月:低いからこそ出会えた時に運命感じんねやろ
夏鈴:それに出会いがラーメンって…
瞳月:しーらしいやろ
夏鈴:直近で気になった男の子とラーメンで揉めたの忘れたの?
瞳月:あんなヤツと彼は違う
夏鈴:そのしーの恋をすると真っ直ぐになる性格心配
瞳月:次は大丈夫やから
夏鈴:まずはまた出会う所からだね
瞳月:そうなんよなぁ〜…
夏鈴:まぁ頑張れ、私次授業だから
瞳月:は〜い、頑張って〜
そして時は過ぎて春先に
瞳月:ん?誰か隣に引っ越して来るんかな…?
瞳月:…まぁええか
瞳月:あ!!!
夏鈴:ふ〜ん…それで出会えたんだ彼と
瞳月:そうやねん!しかも隣の部屋に引っ越してくるとか運命やろ!
夏鈴:あー…はいはい
瞳月:毎朝ベランダに出るとマンションから出る彼が見える…最っ高やわ〜
夏鈴:…変態
瞳月:なんか言った?
夏鈴:…なんにも
夏鈴:運命の彼とは話したの?
瞳月:…一回も話してへん
夏鈴:なにやってんの?
瞳月:ちゃうねん!しーやって話したいよ!
瞳月:…でもどうしても緊張が勝ってもうて
夏鈴:隣に引っ越してきたなら引っ越しの挨拶とかなかったの?
瞳月:…居留守使った
夏鈴:ほんとバカ
瞳月:だってぇ…
瞳月:相手のことが分からへんと不安やねんもん…
夏鈴:猪突猛進かと思えば変に奥手になるよね瞳月って
瞳月:何かないかな、簡単に彼のことが分かる方法とか
夏鈴:相手の生活を覗き見るとか?
瞳月:盗撮とか盗聴ってこと?
夏鈴:そう
瞳月:それって彼の部屋入らなあかんから難易度高ない?
夏鈴:ならベランダから覗き込んだら?
夏鈴:瞳月のとこのベランダ避難用の板で遮られてるだけでしょ
瞳月:その板を超えて彼のベランダに行けばいいっていうことか…
夏鈴:まぁ普通に犯罪だから辞めた方がいいけ……
瞳月:天才やな夏鈴!試してみる!
夏鈴:あっ、行っちゃった…
夏鈴:…瞳月が捕まっても私の名前は出しませんように
夏鈴:お願いします神様…
瞳月:ほんま夏鈴は天才やな、やっぱり持つべきものは友やねん
瞳月:よいしょっと…
瞳月:彼は……おった
瞳月:ふへへ…意外と筋肉質やねんなぁ
○○:…え!?
瞳月:あっ…
○○:…何してるんですか!?
瞳月:えっ、あ、あの、
瞳月:…この前貸していただいた1610円です
これが私たちの奇妙な出会い
そして……奇妙な再会を遂げた話
fin…