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AwBH 第11章 日本語化プロジェクト訳者雑感

※本記事は『鱗羽の天使』本編の核心的なネタバレを含みます。未プレイの方は引き返すことを強くお勧めします。

第11章はヴァラ編。本編の舞台にもなった田舎町にヴァラとその両親が引っ越してきた直後から物語は始まります。とある事情から静かな田舎街での暮らしを選んだ家族の未来には幸せが約束されているように見えましたが、ヴァラの母親が村社会のタブーに触れてしまい…

というのが大まかなあらすじ。ヴァラの母であるリネア(Linnea)と、その父マルコム(Malcom)の仲睦まじい様子やヴァラの無邪気な姿にはほのぼのとしてしまいますが、この先、AwSW本編で彼らに起きることを考えるとただただ心が痛むばかりです。

マルコムはコミックの第4章で登場した電気工の走竜。彼こそがヴァラの父親だったのですね。公式Discordグループでは彼のカスタム絵文字が作られるなど、AwBHで(ほぼ)初出のキャラクターとしてはかなり人気のようです。

そしてこちらがリネア。花びらのような独特のデザインが美しい竜ですね。二人とも作中では名前で呼ばれていないため、名前の出展はPatreon公式やDiscordの公式情報からの引用です。本編でも語られていましたが異なる種族間では子どもを授かれないそうですので、ヴァラもまた二人とは生物学的な血縁関係にないのかもしれません。

また、ヴァラが何らかのハンディキャップを抱えていることがリネアの口から明かされました。ヴァラは本編中で喋りませんが、恐らくハンディキャップと関係しているのでしょう。

ここでヴァラやその家族の身に将来起きることを整理しておくと、本編2章でブライスの話に出てくる、レザに殺害された電気工とはマルコムのことです。リネアも何か重篤な病気を抱えていたらしく、病床に伏して処方薬を服用してたようです。マルコムが生きていた頃は彼が代わりにリネアの薬を手に入れていたのでしょう。しかしマルコムが殺害されたあとはそれもままならなくなり、ヴァラが町中で薬を探し求めてさまよう様子が本編でも描写されています。

ブライスのエンディングの一つでは、ヴァラは亡くなったリネアの躯の横で共に息を引き取ったという悲しすぎる事実が伝えられ、またレミーのエンディングではポータルで逃亡を図るレザに噛みつきます。このエンディングでは最終的にヴァラもレザの凶弾に倒れてしまうのですが、父と母の仇であるレザを止めようとしたヴァラの心中を思うとかわいそうでなりません。

トゥルーエンドではヴァラも生き残って他のキャラクターと同様に人間世界に移住したものと思われますが、レザ(あるいは人間そのもの)に大きな恨みを抱いているであろう彼女が続編であるAwSW2にどのような形で登場するのか、あるいはしないのか、とても気になるところです。

本編ではあまり描かれなかった学校内の様子が見られるのも本章の特徴と言えるでしょう。欧米の学校に基づいた描写になっているため日本語圏の方にとっては馴染みのない点もあったりするかもしれません。保護者会で保護者の竜たちがとてもフランクに話しているのも欧米的ですね。日本語圏ではもっとフォーマルに敬語で進行するでしょうし、保護者間でここまで激しくやりあうことも滅多にないような気がします。最初は日本語圏っぽく敬語に訳すことも考えましたが、原語とのトーンの差が大きくなってしまいますし、ちょっと汚い言葉で言い合うようなシーンもあったので、ここはフランクな会話のトーンを維持して翻訳しました。

保護者会でいちゃついてるし
左下の青い竜はOCだそうです。他にもいるかも?

保護者会に集まっている竜たちを見渡してみると、同種の夫婦が少ないように見えます。AwSW本編でも異種間の恋愛は珍しくない旨が語られていましたが、これほどまでに異種カップルが多いと卵はどこから来るのかという疑問も浮かんできます。異種間のカップルが多いからこそ養子の需要が多くて婚姻前の子作りに躊躇しないとか…?まあ、片方の親しか保護者会に参加していないケースも多いでしょうし、さらにメタなことを言ってしまうと保護者会に参加している竜の中には出演枠のオークションで登場している一般ファンのオリキャラもいるようですので、本編の種族構成を伺い知る資料としてはあまり参考にならないかもしれません。

権力おばさん保護者会代表のアイリス(Iris)。本編に登場するエメラもなかなか高圧的な女性でしたが、4章に登場した地竜の老婆といいAwSW世界に登場する熟年の女性たちには気難しい方が多い気がしてしまいます。作者、何かトラウマでも…?


このシーンは描写が少し分かりにくかった気もするので補足しておくと、アイリスから苦情を受けた経緯を他の保護者に説明しようとするリネアの話を遮るためにわざとアイリスがケーキを落としたということだと思います。結局、この芝居が仇となってアイリスは引っ越し寸前まで追い込まれ、保護者代表からも降りることになってしまうのですが。

この偉い人(竜)の訳出には少し迷いました。"Minister of Education"は直訳すると文部(科学)大臣のようなポジションになるかと思いますが、この田舎町に国レベルの大臣が常駐していて、しかも苦情処理のために一介の教師を直接訪ねてくるとは思えません。恐らく地域ごとに教育機関を監督する組織のリーダーのようなポジションなのだと思います。最終的に教育主任という訳出にしてみましたが、あまり自信はありません。もし欧米の教育機関やその構造に詳しい方で「こっちの訳出の方がいいよ」等のご意見がございましたらLuptasまでお寄せ下さい

性別が分からなかった二人(アイシャドウ入ってるから女性のような気もする…)

最後になりますが、保護者の竜たちの性別は訳者の中で曖昧です。AwSWでは主にまつ毛の有無で竜キャラの男女が描き分けられていますが、コミックは解像度の問題でまつ毛の有無が確認しにくく、全キャラの性別について公式に質問状を投げると原作者の手間になってしまうので、性別に確証が持てなかったキャラは男女どちらとも取れるような口調にしています。

次は12章、本編でバーテンダーとして登場したブライスの友人、ゾンとその家族の物語が描かれます。家族の話が続きますね。ただその前に13章のレザ編がまとめて公開されていますので、先にそちらから翻訳していきます。

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本記事は『Angels with Broken Hearts』の日本語訳プロジェクトです。
オリジナルの公式HPはこちら
http://angelswithbrokenhearts.com/

この翻訳記事は制作者の許可の下で行われている公認プロジェクトですが、訳文はファンによる非公式翻訳です。公式は訳文に一切の責任を負いません。訳文についてお気づきの点は訳者までお寄せください。

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訳:Luptas