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コロナワクチン批判で引用された論文、実は逆の結論だった!?
新型コロナワクチンに関する情報は多く、その中には誤解や偏った解釈も少なくありません.
SNSでよく見られる「スパイクタンパク質が有害」という主張もその1つです.しかし、この主張の根拠とされる論文を調べてみると、実際の結論はまったく異なっていました💡
*参考文献📖
① Lei Y, et al. Circ Res. 2021;128:1323-1326.
② Yonker LM, et al. Circulation. 2023;147:867-876.
この記事では、科学的根拠に基づいてこの誤解を解き、ワクチンのリスクとベネフィットをわかりやすく解説します😊
1. SNSで広がるスパイクタンパク質の毒性主張
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新型コロナワクチンに批判的な人々の間でよく言われるのが「ワクチンで作られるスパイクタンパク質が体に毒性をもたらす」という主張です.
この説は、2021年3月に Circulation Research 誌に掲載されたある論文①が根拠とされています.
★論文の概要
この論文では、スパイクタンパク質を持つ疑似ウイルスをハムスターに接種した結果、ACE2受容体(血管の健康に関わるタンパク質)に影響を与え、血管内皮細胞に障害を与える可能性があることが示されました.一見すると、ワクチンの安全性に疑問を投げかける内容のように思えます.
2. 論文の本当の結論
しかし、この論文の結論部分には驚くべき記述があります.
それは「ワクチン接種による抗体や外因性の抗Sタンパク質抗体は、新型コロナ感染だけでなく血管内皮細胞の障害からも保護する可能性がある」という内容です.
★ポイント
ワクチンが体内で作るスパイクタンパク質は一時的なもので、免疫反応により速やかに排除されます.論文の結論は、むしろワクチンの有益性を支持するものです.
SNS上での拡散は、論文の一部だけを切り取った不正確なものでした.
3. 心筋炎リスクに関する最新の研究
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もう1つの注目すべき論文②は、mRNAワクチン接種後に報告される心筋炎のリスクについて調べた2023年の研究です.
★研究の内容
対象:ワクチン接種後に心筋炎を発症した若年者と、同年代の健常者
結果:心筋炎患者の血液中に、抗体が完全に結合しきれていないスパイクタンパク質が微量検出された
★解釈
・心筋炎の発症率は「ワクチン接種約100万回に1回」程度と非常に低い
・発症リスクにはワクチン由来のスパイクタンパク質が関与する可能性があるが、その量は極めて少ない(平均33.9±22.4pg/mL)
・心筋炎には内因性の要因(例えば遺伝的素因)が関与している可能性が高い.
4. リスクとベネフィットをどう考えるべきか?
ワクチン接種の副反応は確かに存在しますが、それがワクチン全体の有益性を否定する理由にはなりません.新型コロナウイルス感染症による健康被害や死亡リスクを大幅に減らす効果があるからです.
★リスクの伝え方の課題
「100万回に1回」という頻度は非常に低いですが、直感的に理解するのは難しい.例えるなら、宝くじで1等が当たる確率よりもさらに低い程度です.
★ゼロリスクは存在しない
すべての医療行為にはリスクとベネフィットがあり、そのバランスを考えることが重要です.SNSで広がる誤情報は、このバランスを見失わせる危険があります.
5. 次世代ワクチンに関する誤情報の広がり
現在、SNSでは次世代mRNAワクチン(レプリコンワクチン)についてもデマが流れています.このような誤情報は、新たな技術に対する恐怖や不信感から生まれることが多いです.
★対策
正確な情報を広める努力が求められます.医療従事者や科学者は、専門的な内容をわかりやすく伝えるスキルを磨く必要があります.
まとめ
SNSで広がる「コロナワクチンのスパイクタンパク質が毒性を持つ」という主張は、根拠となる論文の一部を切り取った誤解です😢
実際の研究結果は、ワクチンの有益性を支持する内容でした.心筋炎リスクも非常に低い頻度であり、ワクチン接種のベネフィットがリスクを大きく上回ることを理解することが大切です.
あとがき
情報が溢れる中で、何を信じるべきか迷うこともあるでしょう.
しかし、科学的根拠に基づいた情報をもとに判断することが重要です.
この記事が、ワクチンについて正しく理解する一助となれば幸いです.
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