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『全修。』は日本アニメの名シーン詰め合わせで面白い
『全修。』を三話まで見て、今までのアニメにはなかった切り口の楽しみ方にウキウキしている。しかし、これは単に、そういう楽しみ方をするアニメなのか、それともその先があるアニメなのか、、という話。
どーも、昼餉虚無僧です。25年の冬アニメ、MAPPAオリジナル制作の『全修。』を見ています。このアニメ、現時点で「日本アニメ史の名アクションシーンをオイシイところだけ見れる」というとってもお得な作品で、愉快痛快です。
個人的には、このまま名アクションシーンを一話ずつ紹介していくアニメでもいいと思うのですが、何だか三話で不穏になってきましたね。
ド派手なアクションシーンは、2Dアニメの醍醐味
真っ白な紙の上に、世界を創造していく。それがどんなものであるかは、絵を描かない私にはわからない。
アニメーターはその世界に更に「時間」という命を吹き込み、あたかも存在する世界であるかのように錯覚させる。その中でも更に、日本アニメのド派手なアクションシーンは、手書きだからこそできる適度なウソや誇張で、臨場感と迫力を出している。もはや、超現実の域である。
『全修。』第一話で巨神兵(?)が出てきて、ビームで一気に敵を倒したとき、にんまりとした視聴者も多かっただろう。そうそう、これが一度は夢見た、「ピンチの時にあのアニメのシーンを現実に召喚する」というアレだ! と熱い気持ちになるシーンだった。
『全修。』二話では、空から敵が飛んでくる、という空中戦の状況で、主人公の広瀬ナツ子は、板野サーカスと呼ばれるミサイルを用いた独特の映像演出を召喚した。(さらに、実際のアニメはその発明者である板野一郎氏自身が担当して話題となった。)
実のところ私は、このような技法を「板野サーカス」と呼ぶことを初めて知った。MAPPAという大きいアニメ制作会社ならではの演出と、本人を起用する力の入りようは、まさに日本アニメ名シーンのハッピーセットと言える。このアニメを起爆剤に、もっと作画についての理解や知識が深まれば、アニメを見るのがもっと楽しくなるだろう。『全修。』を軸に、アニメの展覧会をするのも面白そうだ。
未だ底知れぬ主人公
そんな本作だが、数クール続く作画使いの魔法少女モノになるのだろうか。(それはそれでオモシロイ)
一クールでオリジナル作品として完結するならば、カギになってくるのは主人公が何に向き合い、何を乗り越えていくか、だろう。
現時点の主人公は、「初恋 ファーストラブ」の創作に行き詰っているという壁を抱えている。しかしそれが、一体何に対して行き詰っているのかは、ま
だ明かされていない。
そこに、主人公、広瀬ナツ子の核を見たい。
彼女は作画についての知識は豊富で、腕も立つアニメーターのようだ。仕事も早く、自分の能力が高いがゆえに他の人に頼るのが苦手。勝気なところがあり、こだわりも強そうだ。22歳にして監督まで上り詰め、初監督作品は社会現象まで巻き起こしているのだから、センスもあるのだろう。
だが、今のところ、戦っている武器(アクションシーン)はすべて過去の偉人の借り物で、初監督作品もどこか、見覚えがあるような作品である。対して、鶴山亀太郎『滅びゆく物語』は、興行的に大コケ、駄作扱いではあるが、「訳がわからない、でもそこがいい」と主人公が感じるように、オリジナリティに溢れている。
それは、意図的に設置された主人公の欠陥なのか、それとも、単に「名シーンで敵と戦う」という物語の仕組みなのだろうか。
重要なのは主人公の表層の情報ではない。彼女の欲、ガソリンは何なのか、そこが物語を動かしていくのではないか、という予感がしている。
その根幹が、果たして憧れなのか、恨みなのか、美なのか、自己顕示欲なのか……。今の広瀬ナツ子は、どんな姿にも変貌しうるだろう。これからの展開が待たれるところである。