平畑徹也「先日はロマンス feat. suis from ヨルシカ」(3000PVリクエスト企画②)
まえがき
前回に引き続き、3000PV記念の読者様リクエスト企画となります。
今回は②平畑徹也「先日はロマンス feat. suis from ヨルシカ」を紹介していきます。
(過去のリクエスト企画記事はこちら↓)
曲紹介
作詞:suis from ヨルシカ 作曲・編曲:平畑徹也
2023年3月22日発売のアルバム「AMNJK」に収録。
大変恥ずかしながら、今回のリクエストを頂くまで平畑さんのことを存じ上げなかったのですが、数々の有名アーティストと共演されている凄い方のようです。
アニソン界隈で例えたら、重永亮介さんや黒須克彦さんが自分名義のアルバムを出して、今まで楽曲提供・レコーディング・ライブで共演してきたアーティストがゲストボーカルとして各曲を作詞して歌う、みたいな感じでしょうか。
・・・なにそれ、胸熱じゃん・・・。
そんな胸熱なアルバムの中で、ヨルシカのボーカルsuisさんが作詞・歌唱されているのが今回ご紹介する「先日はロマンス」になります。
ヨルシカは有名なのでバンド名は聞いたことがあります。
・・・はい、実は曲はまだ聞いたことがありません。
というわけで、平畑徹也さんもヨルシカも何も知らないニワカ丸出しの筆者が、曲だけ聴いて勝手に歌詞についてあれこれ考える、というスタンスの記事になります。
ファンの皆さんには大変恐縮ですが、「筆者が全然知らないアーティストに出会うキッカケ」というのも読者リクエスト企画の醍醐味と考えておりますので、予めご了承頂ければ幸いです・・・。
歌詞
前述の通り、何も知らない筆者は前情報ゼロでとりあえず歌詞カード見ながら何回か曲を聴いてみました。
まず思い付いた率直な感想は「不倫なのか浮気なのか知らんけど、よろしくない形の恋愛の話?」でした。
そう思ったキッカケは2番の「嘘つきのチャペルでキスをして」。
チャペル(教会)でキス、普通に考えると結婚式ですね。
神の前でお互いの愛を誓いあうキスをするわけですが、それが「嘘つき」のチャペルだって言ってるわけです。
なんか、世間に堂々と胸を張れない恋愛の匂いがします。
そう仮定すると、意味深なサビのフレーズ「真綿 首絞め合った 同意殺人の共犯者」も同じニュアンスに聴こえてきます。
真綿で首を絞めるように、ジワジワとお互いを苦しめるような恋愛。
でも、私もあなたもそれを分かった上でこの関係を続けてるよね?
「同意殺人の共犯者」が筆者にはそんなニュアンスに聴こえてきました。
ただ、いかんせん歌詞が抽象的で、どうとでも解釈できてしまうこの曲。
これが正解!って断言できる材料が足りないので、開き直って自分の妄想100%の解釈を垂れ流そうかと思い始めていた時、平畑さんの以下ツイートを発見しました。
お?作詞したsuisさんご本人がディレクションしたMVあるの?
しかもリリックビデオ?これは見るしかないじゃんと早速視聴。
このMVを見て、筆者の中での解釈は固まりました。
結局は筆者個人の解釈ですが、この曲のストーリーを以下と仮定してこの後の考察を進めて行きます。
※なお、説明を簡略化するためにMVの金髪の人物を男性(彼)、青髪の人魚姫を女性(彼女)として話を進めます。
金髪の人物は女性っぽくも見えるので女性同士の同性愛と考えても全然問題無いですが、あくまで説明簡略化のためとご理解ください。
というわけで、今回はMVの映像と一緒に歌詞を読んでみたい思います。
本ブログでは初めての試みなので上手く行くかちょっと不安ですが、お付き合い頂ければ幸いです。
イントロ
男性が目を覚ますところからMVが始まって「水面に君を待って 夜は明けぬまま朝になった」の歌い出し。
男性の隣には誰かが寝ていますが、男性が見ているのは寝ている人とは反対方向の窓の向こうの海。(「水面に君を待って」)
海にいるのは人魚姫の女性。
「波泳ぐ月のひれ 銀に淡く光り 夢を見てるまま」は、人魚姫に戻って海に帰ってしまった女性との再会を望んでいる男性の心情と解釈しました。
「夢を見てるまま」と「水面に君を待って 夜は明けぬまま朝になった」はちゃんと繋がってますよね。
君が水面から顔を出すのをずっと待っているけど、その夢は叶わないまま。
夢から覚めないまま朝を迎えてるから「夜は明けぬまま朝になった」という矛盾した表現なのかなと思います。
1番Aメロ・Bメロ
イントロが終わった後の1番からは、過去の回想シーンと解釈しています。
「田舎から都会に出てきた無垢な女性」と筆者は仮定しましたが、Aメロの歌詞と「人魚姫」というモチーフからこのイメージが湧きました。
人魚姫といえば「人間の王子に恋をした人魚のお姫様が、尾びれを人の足に変える薬を己の声と引き換えに海に住む魔女から受け取り、王子様と結ばれるために人間となって陸に上がる」という童話。
それを現実に当てはめたら「田舎から都会に出てきた無垢な女性が、都会で出会った男性に恋をして、彼と付き合うために本音を押し殺して背伸びして彼に好かれようとする」みたいなイメージかなぁ、と勝手に思いました。
「文明の朝に街を歩いた 靴は慣れずとも心は躍る」は、陸に上がったばかりで歩くのに慣れていなくて転ぶMVの人魚姫・都会の生活にまだ慣れてない自分の両方を表現してるのかなと。
(まだ慣れないけど、新しい世界に「心は躍る」)
「嘘つきの喉奥に栓をして」も声を失った人魚姫っぽいですよね。
彼に対して薄々違和感を感じてたり、言いたいこともあるけれど、とにかく彼に好かれるために「喉奥に栓をして」何も言わないことを選ぶ。
解釈が難しいのが「旧時代人類の掟に則り」ですね。
最初はハンムラビ法典の「目には目を、歯には歯を」的なことを言っているのかと思ったんですが、声を失った人魚姫解釈に則ると「女は黙って男についていく」的な昭和な価値観を指しているのかな、と考え直しました。
MVの映像をさらに見ると、Bメロの最後の「喉奥に栓をして」の直後に女性が何かを言おうとしたけどやめる(ようにも見える)シーンがあって、その後に男性が女性の手を取ります。
彼と一緒にいるためには「喉奥に栓」をする必要があった、という解釈がそれなりに当てはまりそうに見えます。
(もちろん、これが唯一の正解と言えるほどの自信はないですが)
1番サビ
サビは二人がベッドの周りではしゃぐ映像なんですが、ベッドの上でのいわゆるそういう行為の暗喩のように見えてしまいます。
その後の「呼吸を潜め」で、男性が不敵な表情で自分の唇を指差した後にキスしてるように見える映像になるので、余計そうとしか思えません。
「白絹に月明り」は、お互いの首を絞める真綿(白絹)に月明りが当たって光る様子、「肺で呼吸を潜め」は言いたいことを口の外に出さず押し殺してる感じ(&水中で息を止めてる人魚姫的なイメージ)でしょうか。
「同意殺人の共犯者」から「ジワジワとお互いを苦しめるような恋愛だけど、私もあなたもそれを分かった上でこの関係を続けてるよね?」ってニュアンスを感じるという話を最初にしましたが、改めて考察しても意外と合ってるんじゃないかなという気がしてきます。
イントロは男性側の心情でしたが1番は女性側の心情メイン、と考えていいんでしょうかね?
とりあえず筆者はそう思っておくことにします。
2番Aメロ・Bメロ
一転して、2番は男性側目線の歌詞に聴こえます。
MVの映像と合わせると、Aメロ・Bメロは二人の出会いの場面を指しているんだと思います。
都会の光に憧れる女の子を、上手いことちょっかい掛けて釣り上げて、
そのまま自分(男性側)の家に連れ込んで、
最初の方で触れた「嘘つきのチャペルでキスをして」となるわけです。
2番サビ
「いつの日か培った信頼はどこかに消えたわ」
男性が魚のフライを作っているのを目撃し、ショックを受ける女性。
人魚姫の女性にとって「自分の仲間の魚を食べている」というのはそれほどの衝撃であり裏切りだった、ということでしょう。
これ、深読みかもしれませんが「浮気現場・証拠を目撃した」シーンの暗喩ではないでしょうか?
「自分の仲間の魚を食べている」(意味深)ということで、彼が他の女性にも手を出しているのを知ってしまった。
色々議論の余地がありますが、筆者はそう解釈しました。
「刃渡りばかりの月 隠し」の映像では、調理に使ったと思われるナイフに気付き女性が更に怯えるんですが、男性は「そうだよ?これが俺の本性。今さら気付いたの?」とでも言いたげな表情。
隠していた刃渡りをついに女性に見せたシーン、ということでしょうか。
Cメロ
イントロの「水面に君を待って」は男性側の未練と解釈しましたが、Cメロの「海を見てた」は女性側の未練に聴こえます。
「水を掻いて手繰り寄せた」彼の指を、当分は忘れられないのでしょう。
ラスサビ
1番~Cメロまで続いた回想が終わり、イントロの現在の時間軸に戻ってきました。
歌詞だけだと分かりづらいですが、MVの映像付きだとイントロの続きなのが分かりますね。
曲はここで終わりですが、最後にもう1つだけ持論を展開してみます。
このストーリー、元々の童話「人魚姫」のアンチテーゼ的な意味合いも含んでるように思います。
童話の人魚姫は、女性側がただただ我慢する悲劇的な結末を迎えます。
(著作権切れの古い童話は青空文庫で原文を読めるのが良いですね)
要約すると、以下のような悲しい結末です。
MVの中に出てくるナイフが海に沈むシーンも、恐らく童話のストーリーを意識しての演出でしょう。
ですが、この曲はある意味ではその結末の続きになっていて。
「人魚姫が海に消えたあと、王子様が消えた人魚姫に未練を抱く」というストーリーになっているんですね。
そして、海に戻った人魚姫はなんだかんだ楽しそうに暮らしている。
「酷い男と別れて、直後は未練もあって辛かったけど結果オーライで今は幸せ。しかも私を弄んだ男は今さら私の良さに気付いたみたい」という、考え方によっては女性側にだいぶ救いがある結末になっています。
なんか、ここだけ切り取るとフェミニズム的な今っぽさを感じますね笑
もちろんこれはあくまで筆者の個人的な解釈にすぎませんが、女性のsuisさんが作詞したからこその、女性目線での「人魚姫」の再解釈という側面もこの曲にはあったのかもしれません。
「先日はロマンス」という曲名から、そんな終わった過去の恋愛をふと思い出しているイメージを感じました。
あとがき
というわけで、平畑徹也「先日はロマンス feat. suis from ヨルシカ」でした。
平畑徹也さんもヨルシカも何も知らない筆者が長々と6,000文字近く書いてみましたが、いかがだったでしょうか?
やはり、リクエスト企画の曲は自分のアンテナでは見つからなかったタイプの曲が多く、新鮮な出会いがあって面白いですね。
suisさんの声も平畑さんのトラックも素敵なので、ちょっとヨルシカにも興味出てきました。
素敵な曲に出会わせてくれたリクエスト主様、改めてお礼申し上げます。
抽象的な歌詞でどういう切り口で書こうか結構迷いましたが、MVのお陰で何とかそれっぽい考察が書けました。
逆に、MV無しの歌詞だけだとあまりに余白が多く、筆者が最初抱いたような漠然としたイメージしか持てないのでは?という気もします。
ただ、「同意殺人の共犯者」とか印象的なフレーズが沢山あるので、仮に意味が分からなくてもなぜか言葉が耳に残る。
そういう意味では、この抽象的な歌詞もsuisさんの才能の1つということになるかもしれません。
以上で3000PV記念企画は終了となります。
嬉しい悲鳴なんですが、この記事を書いている現時点で3650PV越えちゃっていて、このままだとまたすぐ4000PVリクエストになりそうです。
このブログも段々色んな人に読んで頂けるようになったんでしょうか?
嬉しい限りですが、ちょっとリクエスト企画の頻度は今後考えたいと思います・・・笑
4000PVは一旦お休みして、5000→7500→10000と2500刻みに一旦変更してみようと思います。
というわけで、5000PV到達時も皆様からのリクエストお待ちしております。
ではでは、また次回お会いしましょう。
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