ダンス

水飴を引き延ばしたような、デザートのお皿。
それとも月？
惑星のようでもあるけれど。
レコードの溝みたいでもある。
もしかしたら、氷の上とか・・・。

目の前に置かれた時、私は、頭の中で落書きをした。
踊っているみたい。
ジャズエイジの時代の、フラッパーみたいな女の子はちょっと恥ずかしそう。
大丈夫だよって、男の子がリードしている。
食べられなくなっちゃう。

シュー生地の帽子のようなお菓子なのだけれど、
どういうわけか、ゼルダ・フィッツジェラルドの前髪を思い出したのだ。

F・スコット・フィッツジェラルドの妻・ゼルダの全集。

「幸せに、幸せに暮らしましたとさ　ー　そういうのがいい」

夢のような、儚いような、ダンス。
ダンスパーティーで知り合ったスコットとの嵐のような結婚生活。
芸術家としての自分自身を求めていたゼルダ。

デザートで、ゼルダが思い浮かぶなんて。
氷のようにも見えるお皿が、
幻のように透明な、ダンスフロアに見えてきた。

ゼルダ・フィッツジェラルド全作品