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at990
【声劇】春を待つ
登場人物:20代男女
~落ち葉を踏み歩く音~
女:ある秋のデートの帰り道
突然俯いたあなたがこう言った
男:「実は、僕 もう長くないんだよね」
女 : その一言はこれまでの幸せな日々を
一気にどん底に落とすものだった
目の前が真っ暗になった
あなたの儚げでさみしそうな横顔を見て
この気持ちは心の中に隠しておこうと決めた
男:「次の春、一緒に迎えられるかな?」
女:その言葉があまりにも悲しくて
私は思わず目の前のあなたを
ぎゅっと抱きしめた
堪えきれずに涙が溢れた
~場面転換~ (強い風が吹く音)
女(語り):その後あなたは入院し、
季節が秋から冬へと変わった
お見舞いの帰り際にいつも
男「また明日、少しだけお別れだね」
女:その声は消え入りそうなほどに小さく
たくましかった手は細くなり
力もなくなっていた
ここににいるときだけは
時間が止まればいいと願った
女 : 新しい年を迎えて間もなく
あなたは私の前からいなくなった
~場面転換~
(切なさの中に希望がある感じのBGM)
女:あなたとさよならをして
2ヶ月分かってはいたけど
あなたがいない毎日は
心が張り裂けるほど悲しくて辛かった
女:唯一の救い
それは命は巡るということ
生まれ変わってもきっとまた出逢って
同じように恋をするの
「そう考えるととても素敵じゃない?」
「ロマンチックだね」そう答えるように
写真の中のあなたは柔らかく微笑んでいた
待っていた春はもうすぐだよ
~完結~