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目指すのは「感動品質」。国内外の声をもとに、世界基準で価値を高める「品質保証」の舞台裏。

こんにちは。LUMIXの品質保証チームです。

デジタルカメラは数千点の部品で作られており、その数千点の部品の受け入れや組み立て、出荷検査など、一つのカメラを作り上げるまでに多くの工程を踏みます。

そんな数多くの工程に対して、LUMIXでは一つひとつ丁寧に品質保証活動を行っています。

製造される部品の検査にはミクロンオーダーの精度を求め、世界中で使用されることを想定して氷点下でも使用できるよう試験し、外装にバラつきが出ないようカラーマッチにも配慮するなど、性能や使用感、所有欲といったあらゆる視点における「品質」を高め、LUMIXの信頼性が高まるように取り組んでいます。

結果的に、品質保証は企画や設計、工場、CSなど、様々な部門に対してヒアリングや提案をすることから、製品開発における潤滑油的な役割を担うことも。

こちらの記事では、普段は表に出ることがない「品質保証」の活動における舞台裏や具体的な取り組みをご紹介します。


■LUMIXの品質保証とは

安田(製品品質):新製品開発の立ち上げ時に設計品質を担当し、試作品の評価を含めた上流段階のレビュー等、品質を作り込む役割を担っている。また、製品発売後の市場品質管理として、不良品が発生した際の解析や対策も行っている。

「品質」とは、商品開発の基幹部門(企画や設計、工場、営業、CSなど)のみならず、輸送会社や販売会社等も含めた、カメラやレンズ等の製品に関わる全ての関係者によって、そして全ての工程によって作られるものと考えています。

それはあらゆる取り組みの細部に至り、例えば、企画する製品の仕様書や設計の図面を引く動作、輸送時の荷物の扱い、保管する倉庫の環境など、その全てが「品質」に影響するでしょう。

中でも、LUMIXは「品質」に対して大きく2つの視点を持ち、以下のような活動をしています。

【1】設計品質

設計品質(仕様の決定・設計完成度の見極め・製造への配慮等)の向上を図るために、業務手順や作業手順の仕組み作り等を通して品質改善活動を行っています。

例えば、商品に関する仕様や大きな方針を決める際には、まずは品質保証チームの内部で衆知を集めて検討し、チームとして意思決定するよう取り組んでいます。

簡単に申し上げると、カメラやレンズが実際に使用されるシーンを想定して、「お客様の目線でどう使われるか」「この仕様でお客様に感動をお届けできるか」という観点で品質を検討しています。

具体的な事例として、LEICA DG VARIO-ELMAR 100-400mm / F4.0-6.3 II ASPH. / POWER O.I.S.のリニューアルがあります。

LEICA DG VARIO-ELMAR 100-400mm / F4.0-6.3 II ASPH. / POWER O.I.S.

このレンズをリニューアルした際、テレコンバーターを装着すると広角側でフォーカスが合わなくなり、210mm以上の焦点距離でないと正常に使用できない問題が発生しました。

210mm以上では問題無く使用できますが、撮影中に画角はお客様が決めてズーム操作をされますし、動画撮影ではズーム操作でワイド側にすると記録を止める必要があったため、この仕様ではあまりにも不便だと品質保証側で判断し、メカ的なストッパーを設けることで、お客様のストレスを軽減し、商品としての使い勝手を確保する提案をしました。

この仕様の提案は、実際にお客様がテレコンバーターを使用すると想定される野鳥やスポーツの撮影を試験的に行ったり、SNSを用いて実際の使われ方の調査を行い、チームとして意思決定することができました。

本件のように製品開発の際には、変化した点を重点的に確認し、また、一人の視点や価値観では見逃してしまう不具合が出る可能性もあるため、チームの中でメンバーと一緒にレビューをすることで、多角的な視点からお互いに気づきを共有し合っています。

【2】市場品質

市場からのフィードバックを情報源として、迅速に対応することでお客様の満足度を向上させることも、重要な品質改善活動の一つです。

具体的な事例として、GH5のHDMI端子の破損があります。

GH5

GH5から、アマチュアの方だけではなくプロのクリエイターからLUMIXをお選びいただくことが増えてきました。

これまでは、カメラにおけるHDMIの接続先はテレビがメインでしたが、プロの方が「撮影現場で外部モニターに接続するため」にHDMI端子に触れることが増え、使われ方がガラッと変わったのです。

撮影現場でカメラとケーブルが繋がっていると、撮影中に何かが端子に当たったり、時にはカメラが倒れることもあったりと、HDMI端子の故障・破損の件数が増加しました。

そこで、私達も破損時の再現実験を決行。GH5のHDMI端子に対して重りを投下し、その衝撃に耐えられた試験データを以降の設計基準に落とし込んで、端子の強度向上を図っています。

これに限らず、ユーザーが変わることで「ユーザーのカメラの使い方」も変わっていくことを敏感に察知して、ユーザー視点で検証を繰り返すことで、カメラの品質向上に寄与しています。

■段階別、品質保証の取り組み

安武(部品技術):半導体含む電気部品、リチウムイオン電池や充電器などのアクセサリー部品を担当。新規承認の他、4M変更「人(Man)、機械(Machine)、材料(Material)、方法(Method)」 時の評価や市場不良解析なども重要な業務。年に2~3回、仕入先メーカーの海外工場へ赴き、品質監査も行っている。

前述した通り品質保証チームは、一つのカメラが完成するまでのあらゆる工程に携わっています。

こちらでは、カメラが出来上がる工程の一部に照らし合わせながら、品質保証チームが具体的にどのような取り組みをしているかご紹介しましょう。

■「部品」から見た品質保証

・部品受入検査での品質保証
カメラには数千点の部品が使用されており、各部品メーカーからPanasonicへ製品が納入される際には、電気的特性や機械的特性、外観、寸法、安全認証や環境規制が満足されているか、などを厳格に検査しています。

例えば、重要外観部品については色サンプルとズレが無いか照合し、外観検査を徹底しています。さらに、測定した寸法が自動的に入力されるシステムを導入し、非常に高精度の部品を採用する際にはSPC(統計的工程管理)を実施することで、ミクロンオーダーの精度を保っています。

また、新規部品の採用を検討する際には設計部門と品質保証部門でレビューを実施し、従来部品との変化点や新規性(材料、構造、工法、生産場所など)を明確にして部品の重要性をランク付けしていきます。

そして、そのランクに応じて、部品メーカーの協力を得ながら評価内容を決定し、必要に応じて現地での品質監査も実施しています。

・部品の解析と部品メーカーへのフィードバック
各部品メーカーへ部品評価の結果や市場不良の解析結果をフィードバックすることで、メーカーにも協力いただきながら部品品質を確保しています。

不良解析については以下の3つのフェーズに分けて解析しています。

①準備フェーズ(故障発生~故障現象確認)
②解析フェーズ(外観観察→電気特性測定→故障モード推定→非破壊解析→半破壊解析→破壊解析)
③検証フェーズ(故障メカニズム推定~対策)

このように適切な段階を踏むことで、後戻りが発生しない効率の良い故障解析が可能になります。様々な設備を駆使して詳細解析を実施し、その不良要因を検証したのちに、各メーカーへフィードバックしています。

・部品メーカーへの啓蒙

部品の仕入れ先は中国を主体としたアジア諸国が多く、監査が必要な場合は、40項目にわたるカテゴリ別の監査項目を基に、「品質関連資料」と「製造現場」の両面から監査を実施し、品質保証体制が構築され部品品質が確保されていることを確認しています。

電池などのエネルギー分野においては採用しているいずれのメーカーも信頼できる品質を保っていますが、その他の部品メーカーは品質レベルに大きな差があり、稀に我々の要求内容が正確に理解できていないメーカーもいます。

そのようなメーカーの部品で、通常使用が難しいと判断した場合は、問題点を指摘し、改善が確認されるまでフィードバックを繰り返します。

改善が認められれば使用しますが、改善が見られない場合は使用を断念します。

また、あまり表で話すことでもありませんが、時にはサイレントチェンジ(部品メーカーが部品の仕様変更や生産場所変更などを無断で行うこと)が発生することもあります。

サイレントチェンジが発生すると、我々が知らない間に部品の性能や耐久性が劣化していることがあり、ひいてはLUMIXを使用されるユーザー様にとってもメリットがありませんので、これを防ぐための啓蒙活動にも力を入れています。

その上でも部品メーカーが我々との約束を守ってくださらない場合など、そのメーカーとの取り引きをやむを得ず停止しなければならないこともあります。

一方で、今はまだ技術が未熟なメーカーでも、信頼関係があり、会社として長い目で「育てていきたいメーカー」と判断した場合は、改善のためのフィードバックを繰り返し、数年先を見越した成長を促しています。

■「セット(組み立て)」から見た品質保証

・組立段階の品質保証
組み立て後、新機種の出荷前には顧客視点で新部品のリスクを評価し、メニューの見え方やボタンの操作など、中・高レベルで抽出して全ての機能に問題がないかを確認してから出荷しています。

また、製品が各ラインで生産された後は、日常的に出荷検査が行われ、性能や外観、操作感を確認しています。例えば、レンズとカメラを取り付けて使用時に緩まないこと、サードパーティ製品との接続等を確認したりと、細部にまでこだわっています。

さらに、設計段階で部品技術と一緒に行う「全バラ」(全ての部品を分解する検証)を通じて、不具合がないかを一つずつ確認しています。

ユーザー視点での作業性や使い勝手についても意見を出し、改善を提案することがあります。例えば、操作性が悪い部分や断線しそうな箇所などを指摘し、製品としての完成度を高めています。操作性については数値上の話ではなく、カメラ好きとしてのフィーリングも含めながら判断することもあります。

・異なる環境での経時変化の確認
製品の耐久性を確保するために、「低温」「高温」「高温高湿」の環境下での短期保存試験を実施しています。また、落下振動試験を行い、輸送中の影響を最小限に抑える取り組みも行っています。これにより、製品が過酷な環境でも問題なく動作することを確認しています。

■「アフターサービスやメンテナンス」から見た品質保証

顧客の使用意見をヒアリングし、不良内容の迅速な解析と改善を実施。良品の代替機を提供することで顧客満足を向上させています。 

その他、貴重な過去のトラブル事例(過去トラと呼んでいます)をチェックシートにまとめ、なぜトラブルが発生したのかを分析。生々しいトラブルも多く含まれますが、社内だけではなく各メーカーにも提供することで部品製造時のトラブル防止にも貢献しています。

私たち部品技術部門は、製品品質保証チームが行っている完成品のチェックとは少し役割が異なりますが、部品の品質が製品の品質に直結することを強く意識しています。

水際で不良品を止めることも含めて、「お客様のもとにきちんとした製品をきちんとお届けする」ことが私達の使命だと考えています。

■グローバルにおける品質保証活動(中国)

中国の品質保証メンバー

LUMIXがフルサイズ市場に参入した2019年から、中国でのLUMIXの認知や評価も高まっています。だからこそ、工場がある中国で迅速にお客様対応ができる体制を整えるべきという想いから、中国工場起点での品質保証活動が開始されました。

工場がある中国で品質保証活動をすることで、顧客からのフィードバックを迅速に反映し、不良を中国内で留め、改善された製品を世界市場へ展開することができるのです。

中国市場ではまだ趣味でカメラを購入する方よりも、記念撮影や商品撮影等の仕事でカメラを購入する方が多く、短期間での使用頻度が高いため、市場からのフィードバックが非常に早く、多く得られることも特徴です。

以下より、製品の製造を担う中国工場における品質保証活動をご紹介しましょう。

■コンプライアンスの遵守

安全法規について、世界各地で認証が未入手の場合、量産できない仕組みを整えています。また、量産途中でも材料等の変更があれば再度認証が必要かを確認しています。

有害物質管理については、最も厳しいヨーロッパ基準に合わせて量産前に確認し、量産後も定期測定を行うことで、世界中のお客様に安全な製品をお届けしています。

■顧客接点活動

中国市場では、デジタルカメラの使用シーンが多様化しており、旅行撮影やショート動画など徐々に個人の使用も増えてきていることから、それらにも対応した幅広いサポートを提供しています。

修理店とも連携し、お客様の手元で不良が起きた製品を即時回収、原因究明し、生産部隊にフィードバックすることで、中国市場内で起きた不良を中国工場内で改善し、世界に展開する様々な製品の品質改善へと繋げています。

また、新製品開発段階で顧客の意見を反映するために、サンプル機をインフルエンサーに提供し、使用感や意見を収集しています。

■工場内での品質保証活動

工場では、6S3T管理(6S:整理・整頓・清潔・清掃・躾・習慣、3T:定位置、定品、定量)、ISO管理、過去トラブル再発防止、変化点の管理を実施し、品質保証に貢献しています。

また、品質クイックリーアクション会議では、昨日の生産に関連する問題点を取り上げ、その場で解決策を決定し、当日の生産品に反映させています。

過去の事例では、日本に送る前の製品で電源がオンできない問題を発見しました。この問題が発覚した際、すぐに日本側の技術チームが解析を行い、中国チームも朝一で会議を開いて対策を検討。生産を一時停止し、部品メーカーに対して問題箇所の解説を求め、早急に対策を実施しました。

その結果、出荷前に対策が施され、最終的には問題が解決されました。

これらは活動の一部のご紹介になります。LUMIXは、中国の製造段階から緻密な品質保証活動を行うことで、世界中に展開されるカメラやレンズにおけるトラブルを限りなく最小限に留めています。

■品質保証から発信する啓蒙活動

山岡(品質統括):LUMIX全体の品質を統括する役割を担う。表に出ることはないが、内部で仕組み作りや風土醸成、品質教育を担当し、LUMIXに携わるメンバーへ品質保証の意識を浸透させることが使命。

これまでのお話にもありましたが、なにかトラブルが発生した際にはそれに該当する各部門で速やかに対応し、対策を実施しています。そして、その再発防止策を水平展開し、未然防止活動にどう繋げていくかが重要です。

トラブルを二度と起こさないよう社内のナレッジを活用して問題を深掘りし、再発防止策をしっかりと策定しています。

設計基準の見直し等、品質を向上させる取り組みには時間がかかることがあり、新製品の開発に取り組む現場の担当者からすると、品質保証関連の仕事は、過去に発生した品質問題やトラブルデータを基にした分析が中心となり、優先度が低くなってしまう一面もあります。

しかし、それでもスケジュールを守りながら対応してもらえるよう、しっかりと見届けることも我々の役割だと考えています。

貴重な過去のトラブルデータなどの情報はデータベースに保存されており、再発防止のチェックリストにも反映されています。また、重要な事例についてはeラーニングや研修を通じて学べるようにし、新入社員や転入者を含め、いつでもアクセスできるように教育環境の整備を進めています。

■目指すのは、「感動品質」

ここ数年、Panasonicの中でもイメージング部門の品質レベルは大きく向上しており、社内では品質大賞も受賞しました。

現在は「製品として問題なく使用できる品質」から、さらに一段階上の「感動品質」を目指しています。

「感動品質」実現に向けた取り組みは、正常に動作するだけではなく、機能面や性能面、そして使用感など、ユーザーのフィーリングにおいても使って満足いただける品質を目指す考え方です。

この数年でプロのお客様も増えてきたことで、従来の評価基準だけでは品質保証が不十分になってきたと捉えています。

そのため、ここ数年においてはプロのフォトグラファーの撮影現場に同行して実際の使用状況を把握し、そのフィードバックを基に評価基準を見直す取り組みも行っています。

品質保証は直接ユーザーの皆様とコミュニケーションを取ることはほとんどありませんが、間接的に皆様にご満足いただくための土台を支える役割として、皆様と同様にLUMIXを愛している部署です。

品質改善活動に終わりはありません。これからも、ユーザーの皆様の視点を持ちながら、全部門を巻き込んで品質向上に努めてまいります。

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