【Vol.1】世界初(※)の新機能「リアルタイムLUT」が誕生するまで
こんにちは。LUMIXの設計チームです。
2023年1月に発表されたLUMIX S5IIから新機能「リアルタイムLUT」が搭載されました。
実は、LUTを適用した写真を記録できる機能は世界初(※)。「フォトスタイルが無限に作れる」という触れ込みもあり、発売から今日までご盛況をいただいております。
そこで今回の記事では、リアルタイムLUT開発に深く関わった私達から、改めてその機能や開発の背景などをお話しさせていただきます。
リアルタイムLUTについて
まずは、改めてリアルタイムLUTについてご紹介させていただきます。
リアルタイムLUTとは、LUMIX独自のフォトスタイルに加え、新たにカメラ本体でLUTを適用し、自分好みの絵作りを写真・動画に反映して記録できる機能です。
これにより、「フィルムルック」「ノスタルジー」「ナチュラル」「ティール&オレンジ」など自分の好みにあった雰囲気・色合いを撮って出しで記録することができ、撮影後の色補正が必要なくなるので、ワークフローの効率化も図れます。
LUTは有償・無償を問わずインターネット上で入手することができるので、LUTを作れない方でもリアルタイムLUTは有効に活用していただけます。
例えば、撮影後すぐに大量のフィルムルックな作品の納品が必要なブライダル業界、特に結婚式のエンドロールを流すような場面でも、お役立ていただけるでしょう。
V-Log / V-Log Lビューアシストとの違い
LUMIXには「V-Logビューアシスト(一部マイクロフォーサーズ機ではV-Log L ビューアシスト)」と呼ばれる機能がGH5から備わっていました。こちらはLUTを適用した映像をモニター/ファインダーに表示したり、HDMI出力したりして、仕上がりのイメージを確認するための機能ですが、リアルタイムLUTは「LUTを適用した写真や映像をそのまま記録する」という意味で大きく異なる機能です。
リアルタイムLUTが生まれるまで
リアルタイムLUTが世に出るまで、構想と開発に約2年半を費やしました。ここからは、その変遷を簡単にご紹介します。
実は、リアルタイムLUTの誕生にはLUMIXのある「フォトスタイル」がキッカケの一つになっているんです。
「L.クラシックネオ」の誕生
リアルタイムLUTの構想が始まったのは2020年8月のことです。
以前から絵作り委員会メンバーの中では、「自分の好きな写真家やクリエイターの絵作りを自分でも再現できれば嬉しい」という話が出ていたこともあり、LUTを適用した写真・動画の記録を上層部に提案しました。この時、実はフォトスタイルを全て廃止してLUTに置き換えようという案もあったんです。
キッカケは、当時まだ開発中だったフォトスタイル「L.クラシックネオ」の完成度がとても高かったこと。想定以上の完成度に、「新機種毎にフォトスタイルを更新するのではなく、いっそのこと、既存のフォトスタイルを廃止して、LUTを写真・動画の双方に適用し、自由にフォトスタイルを増やせるようにすれば良いのでは」という発想が生まれました。
「画質最優先」の想いから再検討へ
「自由にフォトスタイルを増やせる」という発想自体は今も継承されていますが、フォトスタイルを廃止するという点では、LUMIXの「画質最優先」の想いが勝りました。
というのも、LUMIXのフォトスタイルは「どのような状況でも画質が破綻しない」ように設計されています。フォトスタイルの中でどのように設定を微調整いただいても絵作りが崩れないことが最優先事項でした。
フォトスタイルを廃止してLUT適用のみにした場合、LUMIXで撮影できる写真・動画のイメージが崩れる可能性があったため、フォトスタイルを廃止する案が通ることはありません。そういった意味では、「L.クラシックネオ」もかなりギリギリまで攻めた絵作りと言えるでしょう。
こうして発想自体は2020年夏頃に生まれていたリアルタイムLUTですが、当時は検討を深掘りすることはなく、2021年3月には中期テーマとして見送られることとなりました。
ニーズの把握、水面下での開発
2021年3月に一度見送りにはなりましたが、2021年4月にはある写真家さんへ構想の相談に伺っていました。
同時進行で、塘が「新しい画像処理エンジンであれば十分な画質を担保しながら写真へのLUTの適用ができるかもしれない」と、SNSで流行っていた色味を再現したLUTで試してみたところ、LUMIXの写真として十分成立する画質で撮影できることがわかったんです。
この「新しい画像処理エンジン」が、S5IIに搭載されている新エンジン。像面位相差AF同様、新エンジンによって「高画質でのLUT適用」が実現されました。
同年7月にはある映像クリエイターさんにも相談に伺っています。写真家さん、映像クリエイターさんの双方からご期待の声をいただき、映像クリエイターさんからは「無限のフォトスタイルが作れる」というコメントもいただきました。
私達も同様の想いを持っており、ここでリアルタイムLUTの方向性が確固たるものになったように思います。
ニーズを確信し、水面化で開発を進めていたリアルタイムLUT搭載への道が、ここから躍進します。
そして、「リアルタイムLUT」へ
2021年7月、企画会議がありました。ここで改めて、当時まだ「LUT適用写真動画記録機能」と呼ばれていたリアルタイムLUTの機能を提案したところ、上層部も絶賛で、開発中だったS5IIへの搭載へと進んだのです。
実は、リアルタイムLUTという名前がついたのは1年後の2022年7月のことです。
各部門への情報共有をし、マーケティング部門へ「LUT適用写真動画記録機能」の情報が届いたのが2022年4月のことでした。
そこで、マーケティング部門から「よりユーザーもわかりやすいキャッチーなネーミングにしたい」という要望とともに「リアルタイムLUT」という呼称の提案があったんです。
この提案を貰ったとき、「これだ!!」とビビッときました。
スチルユーザーに馴染みがない「LUT」という言葉をあえて機能名に使い、スチルユーザーが「これLUTで撮ったんだよ」と動画業界の専門用語を使う姿が、かなりクールにイメージできたんです(笑)
こうしてようやく具体的な搭載への目処が立ち開発が進められたリアルタイムLUTは、2023年2月のS5II発売と同時に世に出され、多くのクリエイター・インフルエンサーに記事や動画、SNSで取り上げていただきました。
現在も、様々なクリエイターがオリジナルのLUTをカメラへ読み込み、SNSで作品を発表されています。
これが、世界初(※)の写真へのLUT適用機能「リアルタイムLUT」が誕生した歴史になります。
(続きます)
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