LUMIX Life Frames 「早めの帰り道」編
カメラを通した撮影体験の記録をお届けする連載、「LUMIX Life Frames」。
今回は、「早めの帰り道」編です。
ある日、仕事がいつもより早く終わったので、偶然カバンに入れていた小さなカメラ「LUMIX S9」で家までの道のりを歩きながらスナップしてみました。
すると、スマホを触りながら歩いたり、電車の中やオフィスの中にいた時には気づけなかった、時間の経過による風景の違いや街に住む人々の営み、そして、興味に向かって足を動かすことの喜びと癒しに気づきます。
SNSで有名人になれるような綺麗な写真は撮れない、でも好きな被写体に向かってシャッターを押すことがただ楽しい、そんな私の撮影記録です。
空がまだ青い。
夕暮れというには明るく、しかし確実に濃く、重たい空の時間の訪れを感じる。
出先で一通りの用事を済ませ、定時も近い時間だったので、会社には戻らずそのまま家路に着くことになった。
嬉しい。そして困った。早めに家に帰っても、特にすることがない。
一人でディナーに行くほどの華やかな出来事は無く、こんな時間に誘える友人もおらず、買い物や豪遊をするほど財布に余裕もなく、とは言え家でSNSや動画を見て時間を潰すには勿体ない。
手元にあるのは最近買ったカメラのみ。
ほとんど毎日歩いているような道だから目立った被写体があるわけじゃないけど、できない理由ばかりを数えていてもしょうがないので、とりあえず適当に散策しながら家まで歩いてみることにした。
鉄骨やビルのガラスに空の色が反射している。
街一面が、空の色に染まる時間。この時間だけは、この街が好きになれることを、カメラを通して初めて気づけた。
最寄りの駅で電車には乗らず、乗り換えをする数駅先まで足を伸ばしてみる。
小さな公園に着いた。
木の根っこってこんなにツヤツヤしてたっけ。
時計を見るとまだ18:00過ぎ。普段はまだオフィスにいる頃だ。この時間の公園って意外と賑やかなんだな。
そういえば、カメラを持ちながら歩いていると時間のことを忘れていた。
普段はパソコンやスマホで自然と時間を気にしながら生活し、インターネットで時間を消費していることも多い。
視野を上下左右に広げ、街の音を聴き、足を動かして身体中に血を巡らせているこの時間が、部屋でゴロゴロしている時間よりも心を癒してくれていることにも気づけた。
ネットの向こうからサッカー少年たちの声が響いている。そういえば昔サッカー習ってたっけ、と思い出した。最近、運動不足なことを反省する。
ビルから溢れる室内灯が道を照らし、だんだんと街が暗くなってきたことに気づく。
皆が家路を目指し始める時間。
駅が近づくにつれ、人も多く、賑やかになってくる。さっきまでと比べて、繁華街は時間の流れも人の流れも早い。
日が暮れ、ネオンや提灯に火が灯る。
そろそろ帰ろうか…と思ったけど、歩き疲れたので少しだけカフェで休憩することにした。
早く帰って身体を休めることもできたのに、わざわざ長時間歩いて、疲れて、外で休憩してるって不合理な話だなと思いながらも、カメラで撮った写真を見返して一息つく時間はとても充実感がある。
火照った身体を冷ますためにアイスを頼んだが、空調が効いていて少し寒くなってきた。
冷えた身体をもう一度温めるがてら、また電車には乗らず、家までの道を歩いてみる。
空はもう何を撮っているわからないくらい真っ暗で、自然とアングルが下がり、気がつくと目線か、目線より少し下くらいで撮っていた。
仕事終わりに難しいことは考えたくないし、考えられない。真剣なような、適当なような、誰に評価されるでもない自分だけの時間。
無心でシャッターを押すと、頭を空っぽにできて、久しぶりに深呼吸をしたような胸の落ち着きを感じる。
カメラを持っていなければ、信号機を下から上まで観察することも無かっただろうな。
家が近づくとネオンや街灯も減り、暗くて何も撮れなくなってきたので、今日はもうおしまい。
気づけばいつも帰ってくるのと同じような時間。
想定より長い時間外を歩いていたけど、心地よい身体の熱と頭を空っぽにしてくれた時間、そしてカメラを楽しんだ充実感が、日々の疲れを癒してくれていた。
・・・・・
ふとした何も予定がない時間に、鞄に忍び込ませておける小さなカメラとレンズがあると、それだけでいくつもの感情や気づきに出逢える。
特別なイベントや被写体も無かった、なんでもない帰り道の写真も、いつかは何かを思い出すキッカケの一枚になるのだろうか。
そんなことを考えながら、街の記録を残すように、自分の気持ちもフレームに収めてシャッターを押した時間だった。
「早めの帰り道」編
【使用機材】
カメラ:LUMIX S9
レンズ:LUMIX S 26mm F8
使用LUT:Sample LUT1
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