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【Vol.12】写真家 豊田慶記氏が聞く、LUMIX S5II「深堀り」開発者インタビュー

写真家 豊田慶記氏によるLUMIX S5II開発チームとのロングインタビュー。12回目となる本記事が最終回となります。

今回は「LUMIX S5IIXのデザイン」についてのインタビューです。

▼前回の記事はこちらから!

・聞き手:豊田慶記

・開発チーム(敬称略)
開発リーダー :中村光崇
デザイン :北出克宏
外装設計 :金田憲和
AF開発:福川浩平
AF開発:大神智洋
画質設計:栃尾貴之

ーー: 
S5IIXについて、LUMIXのブランドロゴを含めて印字類をグレーにするというのはかなり思い切った決断だと思いました。 
 
北出: 
写真家やクリエイターの撮影同行やヒアリングの気づきを元に、撮影に集中できる道具を目指すという考え方を「無心~Shaping Emotions〜」というデザインフィロソフィーに集約して、Sシリーズ以降のLUMIXのデザインを進めてきました。今回S5IIXをデザインするにあたっては、そういった創作活動の「黒子」としての考え方を突き詰めることにしたんです。 

上面や操作面の文字印字については、全体のバランスを見て白からグレーに変更しました。ちなみにダイヤルの文字は通常モデルはレーザー加工で白くしているのですが、Xでは文字部を彫りこんで、グレーのインクを色入れするという手を込んだ加工をしています。コストはかかりますが、印字が剥がれないように配慮しつつ、品位を上げるよう仕上げました。

唯一RECボタンについては、正面から見えないことと、S5IIXが動画性能が高いモデルということもあり、赤いボタンのままにしています。 
 
ーー: 
操作部位の視認性を下げることになりますので、慣れるまでは戸惑ってしまいそうですが、一旦慣れてしまえばボタンなどは見ずに操作出来ると思うので、実使用上での不都合はあまりなさそうですし、こういったデザインに関係する提案は大歓迎です。 

モノクロ専用機などの特別なモデルがこういったステルスタイプの印字となっている例外もありますが、ブランドロゴには厳格な運用ルールがあるはずです。特にルールに厳しい日本の企業としては「相当頑張ったな」と思っています。 
 
北出: 
今回はS5IIのシリーズとして、2機種展開するということもありましたので、上位機種として振り切ることが出来ました。

実はマーケティング部門からは好評で、彼らが後押ししてくれた、というのもあります。実際、撮影現場ではクリエイターやプロがパーマセルテープでロゴを隠して使用されている状況があるのは知っていましたし、被写体やシーンによっては機材の主張が極力少ない方が良いという配慮もあるかと思います。 
 
ーー: 
ということは、ルールに準拠したベーシックな製品があったからこそ、特別仕様にステルスカラーを実現出来た、言わば裏技的な手段でS5IIXのカラーリングは日の目を見ることが出来た、ということですか? 
 
北出: 
包み隠さず言えば、そういう側面もあるかもしれません。標準タイプのS5IIに対して、その派生モデルとしてより動画性能の高いS5IIX、という位置づけがあったからこそ、このステルスタイプのモデルが実現できたと思います。 
 
ーー: 
S5IIXに組み合わせるレンズについて、同様にステルスタイプが欲しくなります。 
 
北出: 
実はS5IIと同時発表のS14-28mmではハーフマクロも撮れるということもあり、映り込みに配慮して、レンズ前面の文字はダークグレーにしています。 
 
ーー:
なるほど。個人的にはダークグレーが映り込みや好みの点でも好ましいと考えていますので、ぜひ今後の検討をお願いします(笑) 
 
色々とお話を伺って、LUMIXは実際に開発者がカメラを使っていること、ユーザーや現場の声に耳を傾けて製品開発していることがよく分かりました。
 
その他にも製品開発の現場を垣間見たような心地で、これまで以上にLUMIXを身近に感じられたように思います。 製品の細部がなぜそのようになっているのか?についてのお話を聞くことで、製品への愛着が強まるのでは、と考えていますし、S5IIに対する興味や理解を深めるキッカケとなれば嬉しく思います。 

今後の製品のさらなるブラッシュアップを期待しています。

(豊田慶記)


こちらで全12回に渡る 、豊田慶記氏のインタビュー連載は終了となります。

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