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ライブハウスの撮影にも活きる、S5IIXの漆黒のボディと動画性能|クマザワコータロー

こんにちは。音楽と写真と映像を扱うクリエイターのクマザワコータローです。

この度、LUMIX S5IIXを先行試用させていただきました。

ライブ撮影はレンズ交換がシビアなため2台のボディをお借りしました

筆者は日頃から音楽ライブのステージ撮影においてLUMIX S1H、GH6に圧倒的な優位性を感じ、積極的に使用しています。

以前、LUMIX Magazineにおいてもライブハウスの撮影について記事を書きました。

そんな私から今回は、ライブハウスのような特殊な環境におけるS5IIXの優位性を軸に、S5IIXの魅力についてお話しさせていただきます。


ブラックを基調としたボディ

とにかく渋い

なんと言ってもS5IIXの特徴は「ブラックボディ」です。とにかく、かっこいいんですよ。

従来ですと、SシリーズやG9PROであればモードダイヤル、GH6ではドライブモードダイヤル、それぞれ左肩に配置されたダイヤル下部に象徴的な赤リングがありますが、S5IIXには赤リングがありません。

「LUMIX」「S5IIX」のロゴは真っ黒に、モードダイヤルやボタンの印字はグレーになっています。

現場での視認性は決して悪くない

撮影の現場では、被写体の瞳や窓ガラスなど画角内に反射する物がある場合、映り込みの影響をなるべく低くすることを考えてロゴなどを黒のパーマセルテープで覆うことがあります。

忘れるたびに現場近辺で調達して増えていくパーマセルテープ

カメラマン自身が全身黒コーディネートの服装で撮影に臨むのも、この映り込みを考慮しているのが理由なのです。

こと音楽ライブの撮影に関して言えば、可能な限り目立たないことも重要になってきます。来場者が公演に可能な限り集中できるよう、黒子にならなければなりません。

また、マルチカメラで収録している場合は、別カメラに自分が写り込むことが多々あります。筆者のようなライブカメラマンの正装は真っ黒なのです。

ライブ撮影のニュースタンダードになるかもしれない

S5IIXであれば、もう黒のパーマセルテープとはおさらばできます。経費節減にも繋がりますね。実際現場に持ち込んでみると、結構馴染むんです。

撮影事例

性能や機能はフラッグシップ機には劣るものの「質実剛健」そのものです。「高いポテンシャルを持った、懐の深いハイブリットカメラ。」という印象を抱きました。

ここからは写真と動画の撮影について、実際の撮影データを交えて所感を述べていきます。

写真性能

プログラムオートでこれだけ撮れるなら良いカメラ認定です

とりあえずお気軽に「プログラムオート」で撮影してみました。「シャッタースピード>F値>ISO」の優先順位で露出が決まっていく印象です。

露出の段階で手ブレを抑え込めるような挙動なので、初心者の方が手軽に「フルサイズ一眼」の画質を体感できる親切なカメラであると言い切れます。

点光源にピントが逃げるような挙動は一切なかった

像面位相差AFが搭載されたことにより、従来の方式では体感5割ほどの歩留まりだったところ、S5IIXでは体感8割とかなり確度が上がりました。

激しいダンスなどの動きものでも正確に合焦してくれますし、明るい背景でも、背景抜けは感じられませんでした。シルエット撮影でもしっかりとピントが取れます。

観客の背中なめはかなりの暗所だが難なく合焦する

合焦しないようであればピンポイントに設定し、シルエットのエッジを掴みに行けばなんら問題はありません。

手ブレ補正は強力だが自然な印象でフレーミングがしやすい

手ブレ補正は特に望遠域の揺れ戻しによる引っ張られ感がなく、ストレスのないフレーミングを体感できました。

動画性能

S 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S.手持ち撮影の映像です。

望遠域でこの手ブレ補正はかなりの脅威です。リアルタイムLUTで焼き込み動画にチャレンジもしています。

使用LUTはLUMIX Color Labより、筆者オリジナルの「Dramatic BlockBuster」です。手軽にクリエイティヴルックが得られるので、クライアント即渡しの現場にも活きてきます。

音楽ライブでよくある「共振ブレ」は、手ブレ補正ユニットが「センサーシフト方式」のカメラでより顕著に現れます。こちらは、かなり意地悪に貧弱な一脚にFIXした定点映像ですが、微ブレは認められませんでした。

ただし、会場規模やジャンル、来場者の入り具合によって条件が多岐に渡るため参考程度に留めておきます。

また、内蔵マイクのみでの収音ですが、上から下までバランスが良く、芯のある良い音声です。

6K 420/10-Lや5.8K ProRes422など、オーバー4Kで収録ができるため、K-POPで広がりを見せている직캠(チッケム)を高画質に作ることが可能です。※チッケム:日本でいう「推しカメラ」。fancamやfocusとも呼ばれる。

もちろん編集ありきのコンテンツとなりますが、高精細なオーバー4K収録ができるS5IIXだから耐えられる品質なのです。

DaVinciResolve18のFusionページ「Planar Tracker」で被写体をロックオン

動画でのAFCもきちんと信頼できます。手持ち撮影は全編AFCで臨んでおりますが不穏な挙動は一切見受けられませんでした。

かなり速いパンやチルトを筆者はよくワークとして選択しますが、S5IIXなら手ブレ補正が悪さしてガタついたりはしません。従来よりもよりナチュラルになった手ブレ補正は積極的なカメラワークの選択肢を無数に広げてくれます。

望遠域になるにつれて、ローリングシャッター特有の歪みが速いパンニングで見て取れますが、かなり抑え込んでくれているので筆者にとっては許容範囲です。

音声は定点カメラで全て収音しています。DMW-XLR1アダプターを使用し、ライン2mixと内蔵マイクでアンビエンス成分をそれぞれ計4ch収音し、ミックスダウンしています。映像と完全同期の取れた音声が手に入るので、後処理が本当に楽チンです。

DaVinciResolve18 Fairlightページでの処理はそれぞれをステレオBusに送ると処理し易い

S5IIXはS5IIに比べ、特に動画収録の性能が向上しています。

USB-SSDへのApple ProResやハイビットレートALL-Intra、UHS-II V90に対応したダブルスロットで、従来のALL-Intra収録が可能です。

これまでプロキシ作成が編集作業前夜の儀式になっていた方にはありがたい仕様ですよね。

HDMI RAW出力に対応しており、筆者のようなATOMOS社製の外部レコーダーをお持ちの方はApple ProRes RAWでの収録が可能になっています。

解像度は5.9K(5888×3312/16:9)、4.1K(4128×2176/17:9)、3.5K(3536×2656/4:3)となっております。

4K60PがAPS-C領域にクロップされる仕様を嘆かれる方も少なくないですが、RAW出力することで4.1K解像度が扱えるのでより高いシャープネスを得ることができます。(筆者はS1HでProRes RAW 4.1Kをヘビーユースしています。)

なお、今回の先行試用期間において、ATOMOS NINJA VのS5IIXからのRAW信号に対応したファームウェアは未更新のため。先んじて試すことはできませんでした。ATOMOS外部レコーダーをお持ちの皆さんは対応ファームウェアが公開されるまで待つことになります。

残念なポイント

電子シャッター

電子シャッターで最速30コマ/秒の連写ができますがローリングシャッターによるフリッカーと歪みは出てしまいます。

首元にフリッカーが見てとれる(リアルタイムLUT:Rusted Nega 2 by Akiraxe)
速い被写体を望遠域でフレーミングしながらでは歪みが発生する

フリッカー低減(写真)がメニュー項目にはないので、ここは注意が必要です。

筆者の場合、あまり連写を使うケースは少なく、使ったとしても秒間7コマ連写もあれば十分なので、メカシャッターで特段問題はないです。

ローパスフィルターレス

モアレに対しては光軸の角度で低減を目指したい

ローパスフィルターレスのおかげでかなり解像感の高い画が得られますが、モアレは抑えきれない局面が多く、LEDスクリーンを背負った被写体を撮影することが多い方は注意が必要です。

像面位相差搭載のカメラの中には、光源が被写体に隠れた瞬間にその放射光までなくなるカメラもあります。

残念なポイントとしていくつか列挙しておりますが、これらは若干筆者が求め過ぎているようにも感じています(笑)

黒子になれるハイブリッドカメラ

S5IIXはハイエンドなフラッグシップカメラではありません。ですが、細かいところまで手が行き届いており、優れたユーザーインタフェースで、使用者の意図を的確に反映してくれる「人馬一体」感のあるカメラだと思います。

結果として2現場で試用して様々な角度から着目してみましたが、一眼初心者からプロユースまで、幅広い層が使って満足ができる懐の深さを持っており、写真・動画の双方においてハイブリッドに活躍してくれる、ものすごくまとまりの良いカメラでした。

是非、皆さんのご購入の判断材料のひとつにして頂ければ幸いです。
また掲載しきれなかった写真は筆者のInstagramにて、本記事公開後にシェアしていきますので、気になる方はチェックしてみて下さい。

最後までお読み下さりありがとうございました。

Special Thanks

マエノミドリ
YUTA
(左)RYO(右)
MIC RAW RUGA
HANNAH(左)MIYA(中左)REI(中右)AKIRA(右)
エレファンク庭
松本 真依(右)長谷川 怜(中右)北島摩耶(中左)早美嘉純(左)
THE ORGANICS
那流(右)小麦(中)茉夏(左)

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