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【CP+2023対談】 Lマウントアライアンス 開発責任者トークショー
結成5年目を迎えたLマウントアライアンス。新たなアライアンスメンバーも加わり、各社の個性溢れるレンズとカメラを自由に組み合わせられる魅力が更に増しました。この記事では、オリジナル3社の開発責任者たちが今後の展望について意気込みを語った様子をお伝えします。
登壇されたのは、ファシリテーターとしてライカカメラ社の杢中薫氏、同社のステファン・シュルツ氏、株式会社シグマの大曽根康裕氏、パナソニックエンターテインメント&コミュニケーション株式会社の津村敏行氏の4人です。
Lマウントアライアンスは5年目を迎え、レンズは68本に
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杢中氏:
2018年、ライカカメラ、パナソニック、シグマの3社は、Lマウントアライアンスの設立を発表しました。Lマウントはライカカメラが開発した規格で、Lマウントアライアンスの目的は、次の3つです。
1. 1つの統一レンズマウント規格を写真・ビデオ撮影者に提供する
2. 汎用性の高いマウントを活用し、様々なお客様に大きなメリットを提供する
3. プレミアムシステムカメラ分野の多様で将来性のある製品群をお客様に提供する
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今年2023年は、Lマウントアライアンス結成から5年目となります。
2021年10月にはエルンスト・ライツ・ウエッツラ―が、2022年6月にはDJIが加盟し、現在Lマウント規格のカメラは12機種、レンズは68本まで増えるなど、パートナー数・商品ラインナップともに伸張しています。
3社で始めたアライアンスが5社となり、カメラとレンズの組み合わせがもっと自由に!
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シュルツ氏:
ライカカメラは、2018年の設立以降、新しいカメラ2機種、新しいレンズを6本導入して、フルサイズのSL-Systemを拡大しました。
現在のLマウントアライアンスには、映像レンズメーカーであるエルンスト・ライツ・ウエッツラ―と、カメラ・ドローンメーカーであるDJIが加わり、全部で5社になっています。そして、まもなくもう一社追加メンバーを迎える予定です。
Lマウントアライアンスは、多種多様なイメージングのアプリケーションに対応していくため、フォトグラファー、ビデオグラファー、シネマトグラファーといったB2Bをターゲットとした領域までもカバーできるようにしていきたいと考えています。
我々はあらゆる努力を施し、Lマウント規格の魅力を向上させるために日々革新を続けていきます。その一つの例がPDAFのLマウント規格への導入です。これによって、ブランドを跨ってもスムーズな動作が可能になりました。潜在的なお客様にとって、こういったブランドを跨った互換性を保てることは大きなニュースだと思います。
大曽根さんが以前仰ったように、カメラ業界は30年ごとにパラダイム変化が起きています。こうして優れたパートナーが増えることで、Lマウント規格の比類なき汎用性のカメラ・レンズを提供でき、多くのお客様にご満足いただけると確信しています。
カメラ業界が迎えたパラダイムシフト、さらに加速するLマウント勢
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大曽根氏:
ライカに始まったシステムカメラは30年後にはNikon Fやペンタックスなどの一眼レフになり、その30年後にはαやEOSが登場、そしてさらにその30年後にはミラーレス。
まさに30年ぶりのパラダイムチェンジです。この大変革の時期では、新商品の数が非常に重要になってきます。Lマウントアライアンスは3社で通常の3倍、2社加わったので5倍、もう一社加わるとさらに6倍のスピードでシステムを構築できます。
そして3社は、仲が良いのです。3社によるトークイベントは実は今回で5回目です。また3社の新製品発表会などにもお互いにご招待させて頂いています。カメラ業界にあって、他社と仲が良い、というのはかなりレアなケースではないでしょうか?そしてこのメンバーなら新しい2社とも仲良くなれると確信しています。
ただし仲が良いからと言って談合してカメラやレンズを開発することはありません。Lマウントアライアンスメンバーであっても、それぞれが独立したコンペティターとして、各社が独自の個性を競ってLマウント製品を作っています。
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津村氏:
ライカさんも仰ったように、Lマウント5年目を迎え、各社から素晴らしいレンズやカメラが揃ってきました。今や、一大勢力といえるほど充実してきたと感じています。
当社の公式SNSにシグマさんのレンズで撮影した作品が飛び交ったり、LUMIX BASE TOKYOにはライカさんのカメラに当社S-PROレンズを付けたお客様が来られるといったことも普通に目にするようになりました。非常に嬉しく感じています。お客様の選択肢の自由度が広がるということは大きな価値だと思います。
フォトグラファーやビデオグラファーにとってのLマウントのメリットとは?
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シュルツ氏:
Lマウントは、ほぼすべての用途に適したカメラまたはレンズを提供することを考えています。
映像の世界はかつてないほど複雑になりました。静止画撮影、動画撮影、映画製作は、使用機材がより一層近くなっています。
ユーザーにとっても同じことが言えます。印刷目的の昔ながらの写真撮影に加え、SNS用の画像には今までにない革新的なクリエイティビティが求められるなど、コンテンツは複雑さを増し、アウトプットするチャンネル・用途に応じた適切なフォーマットが必要になってきました。
我々はLマウントアライアンスによって、アライアンスメンバーが力を合わせて多くの選択肢を提供することで、こういった顧客ニーズに応えていきます。
我々Lマウントアライアンスは、異なったターゲットグループ・アプリケーションに対して、一社で提供するよりもより専門的なソリューションを提供できます。
Lマウントコンポーネントに対するお客様の投資は、将来にとっても長期的に持続可能です。
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大曽根氏:
「なぜLマウント」と言えばやはりカメラ・レンズの多様さを挙げたいと思います。
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SL2とS1/S5そしてSIGMAのfpが併用されることはよくあります。そして私はアクション動画のプロがRONIN 4Dの押さえにfpを使ってくれるのではないかとワクワクしています。
またLeitz Cineのディレクターズビューファインダーシステムの中に実はfpが使われているのも面白いです。
Panasonicから位相差AFを搭載したS5IIが出てきたことでSIGMAのマウントコンバーターMC-21の重要性がさらに増してきたのではないかと思います。一眼レフレックス用レンズは基本的には位相差AF駆動だったので、S5IIとMC-21の相性は今まで以上に良くなっています。
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DJIのRONIN 4D用のジンバルカメラ「Zenmuse X9」のLマウントの構造が、「スピゴット式」であることにとても感動しました。
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これはシネ業界でポピュラーなPLマウントと似た構造で、カメラ側のマウント外周を回してレンズのバヨネット爪を締め込んでレンズをガタなく取り付けます。しかも更に進化させてレンズ脱落防止のためのロック機構もついています!DJIの本気度がひしひしと伝わってくる素晴らしいマウントです。
実は2019年のSL2発表のための3社会議の中でシュルツさんと私で「将来、シネ用にスピゴット式マウントもぜひ作ろう」と話し合っていました。嬉しいことにDJIは我々より先にスピゴット式を実現してくれたのです。DJIのおかげでLマウントの世界が更に拡がりました。
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津村氏:
フォトグラファーやクリエイターの皆様が大切にしているのは、作品表現の広がりと、ストレスのない撮影の実現だと思っています。
今回S5IIで初めて像面位相差AFを搭載しましたが、Lマウントに関しては、やはり各社の光学特性をAFで正確に活かすための仕組みを整える、LUMIXで言うとズーム中にもAFが追尾する等、ボディとレンズ間の複雑な動きを各社で互換性を保ってやっていくという部分が凄く進化しています。我々がボディを作る上でもエンジニア達はかなり実現に苦労しましたが、最終的にはパーフェクトな性能が出せたと思います。
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各社がやりたいことがどんどん反映され、Lマウントの進化が加速していくのがこのマウントの魅力であり、ビデオグラファーやフォトグラファーにとっての魅力ではないかと考えています。
我々は歴史が浅い分、2社さんから学ぶことが凄く多いです。このようにLマウントに参画させていただいていることを、とても喜ばしいことだと感じています。
各社が語る、これからの「挑戦」
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シュルツ氏:
我々の挑戦は、まだ始まったばかりです。
私たちのビジョンは、Lマウントアライアンスのメンバー全員が無限の可能性と完全な互換性を持ち、あらゆる種類のイメージクリエイターにとってLマウントが業界をリードする標準フォーマットとなることです。
我々は既に来年以降の商品についても動き始めています。つまり、SLシステムが再び大きく前進するような新しいカメラやレンズについての検討を進めています。
非常に革新的なアライアンスメンバーのおかげで、我々の新製品は他のLマウントの革新性を伴うことになり、お客様に対して、比類のない量の選択肢と品質を提供することができると確信しています。
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大曽根氏:
SIGMAはLマウントの中で「超望遠ズーム」「超広角ズーム」「マクロレンズ」「F1.2大口径レンズ」など、特殊なレンズを作ってきました。
SIGMAは今後もこの方針を貫き、ある意味特殊な、そして時にクレイジーな製品を積極的に開発していきたいと思います。「Iシリーズ」のような尖ったレンズ群もその1つかなと思っています。
またSIGMAも新しい技術に挑戦していきます。Panasonicの位相差AFシステムの開発に大変感動しました。LUMIX S5IIのAF性能は私の想像を超えた驚くべきものでした。
また、ライカレンズのDSDフォーカシング技術も素晴らしいです。APO Summicron SL 35mm F2や50mm F2の驚異的な光学性能は、このDSDの賜物だと推測しています。
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SIGMAも60-600mm F4.5-6.3 DG DN OS | Sportsで新しいAFモーター「HLA」によりAFスピードがかなり速くなりました。また、新しいOSアルゴリズム「OS2」によりOSの手振れ補正性能がかなりの進化を成し遂げるなど新しい技術を開発することができています。
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今後も機能・性能・品質などの向上のために積極的に新しい技術を開発していきたいです。
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津村氏:
私たちはミラーレスカメラの先駆者として、テクノロジーでイノベーションを起こすという姿勢を貫きたいです。
LUMIXは、写真やビデオを楽しまれるクリエイターとともに歩むというブランドビジョンを定めて、静止画と動画を融合したハイブリッドなカメラを磨き続けていきます。
そういった面ではLマウントの進化の方向性は、弊社のビジョンと完全に同じベクトルを向いていると思います。
さらに新しくシネマ系の皆さんが参画されて、両方のユースケースで進化していくシステムなので、我々自身が技術開発で貢献していきたいと思っています。ぜひ仲のいい関係を維持してパートナーシップを拡大していきたいと思っています。