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GH7が「業務用カメラ」としても最高傑作と私が感じる理由|クマザワコータロー

こんにちは、音楽業界で写真と映像の両方に軸足を置くワンオペカメラマンのクマザワコータローです。

マイクロフォーサーズの動画フラッグシップ機GH7を、発表に先立ち撮影現場に導入し、試用しておりました。

記録撮影に強いマイクロフォーサーズ

記録撮影に絶大な信頼を置いているGH6とGH7はボディの形状が同じなため、持ち替えに不便がない

僕は日頃から映像収録においてLUMIXの動画フラッグシップ機であるS1HとGH6に絶対的な信頼を置いて使用しています。

撮影スタイルによってそれぞれのカメラを使い分けており、特にGH6は、1インチセンサーを採用している業務用カムコーダーと比較した場合にセンサーサイズが大きく、その懐の深さと小型軽量な取り回しの良さに魅了されています。

そんなGH6をさらにブラッシュアップさせたGH7は、LUMIXのマイクロフォーサーズ史上、最高傑作だと感じました。

本記事公開に先立ち、YouTubeにおいて先行レビュー動画を公開させて頂いておりますので、是非ご覧頂けますと幸いです。

また、本記事においてはGH7の性能や機能を全て網羅するのではなく、僕が現場で使用したインプレッションを元に「撮影業務において優位に働く、GH7に新たに搭載された性能・機能」に絞ってみなさんに魅力をお伝えしていきます。

今回の先行試用において、折良く「音楽ライブ収録」「ドキュメンタリー収録」と、僕が普段から扱う業務の中で特にGH6を使用している記録撮影に導入することができましたので、GH6と比較しながら業務ごとにGH7の魅力を深掘りしていきます。

音楽ライブ収録における優位点

FIXカムと32bit音源レコーダーの兼用として映像と完全同期の取れた音源収録が可能になる

ライブ収録をする上で非常に有益に働いた性能は「像面位相差AF」「ダイナミックレンジブースト常時有効」です。

像面位相差AFと人物認識

(撮影協力:BOY MEETS HARU)

マイクロフォーサーズにおいてはG9PROIIより初搭載された「像面位相差AF」ですが、GH7ではさらに認識対象への追従性や食いつきが良くなった印象です。

バンドやボーカルユニットなどを撮影する場合は基本的にマニュアルフォーカスを駆使してライブ収録をしますが、アイドルグループを歌割りに対して的確にカメラワークする場合、1小節ごとに歌唱パートが入れ替わることがあります。

像面位相差AFの測距速度と認識AFの的確な対象補足能力に任せ、パートごとにアップカットを狙いに行くことができるので、攻めのワークと撮影のバリエーションを増やすことができました。

ダイナミックレンジブーストの常時有効

V-Log使用時、下限ISO500となりSシリーズとのマルチカム時に露出合わせが容易になる

ダイナミックレンジブーストがGH6ではV-Log使用時に下限ISO2000とかなりの高感度でしたが、GH7では制限がなくなり常時有効(一部記録画質では無効)、下限ISO500で運用できます。

これにより、より低ノイズでクリアな映像を手に入れることができ、Sシリーズとの露出合わせで無理に絞り込まなくても良くなりました。

ドキュメンタリー収録における優位点

業務用カムコーダーの置き換えとして超ミニマルな記録撮影セットアップ

ドキュメンタリー撮影においては「プロキシ同時記録」「32bit float内部録音」「電子手ブレ補正:強」「像面位相差AF」が、業務の効率と質を上げてくれました。

プロキシ同時記録

[H]H.265 FHD 12Mbps[M]H.265 FHD 6Mbps[L]H.264 HD 4Mbpsが選択可能

ワンマンライブやバースデーライブを密着取材し、ドキュメンタリー映像や当日即公開のショートダイジェストアフタームービーの制作を行う業務があります。

アフタームービーはライブ終了後に30分〜1時間ほどの時間で概ね4〜5分のショートダイジェスト映像をSNS公開用に現地で制作をします。その際、これまではGH6で内部ProRes422HQを収録して制作をしていました。

こちらは過去にGH6を活用して制作したアフタームービーです。

(撮影協力:BOY MEETS HARU)

お恥ずかしながら僕が使用する出向用ラップトップPCが2015年製のもので、H.264やH.265の高圧縮コーデックの4K画質ではネイティヴ編集ができません。

中間コーデックであるProRes422/422HQであれば、古く非力なPCでも大きなデコード負荷がかからず編集をしていけるのです。

ゆとりがあれば編集ソフト内でプロキシ作成して編集に臨めますが時間の制約があります。

GH7ではProRes422/422HQやH.264のオリジナルファイルに対して、解像度の低いプロキシファイルを同時に記録する機能が遂に実装されました。

(撮影協力:BOY MEETS HARU)

アフタームービーと同じ撮影素材を使用してドキュメンタリー映像を制作するため、プロキシファイルが優位性を誇ります。これまではオリジナルデータにProRes422/422HQを選択してきたため、データ容量は常に1回の撮影で500GB〜1TBは当たり前になっていました。しかし、現地編集をプロキシファイルに任せられることでオリジナルファイルはH.264の比較的高圧縮なコーデックを選択できるので、結果的に保存用HDDへの投資コストが減ります。とても大きなメリットです。

DMW-XLR2と32bit Float録音

GH7の音声モニタリング画面 最大4chの48kHz/32bitレコーディングが可能に

ライブハウスで密着撮影を行う場合、場所によって音のダイナミックレンジに悩まされます。

楽屋やロビーとリハーサル中のフロアでは相当な音量差があります。これまではカメラ側のマイク設定で[録音ゲイン:低][録音レベル:-18dB][録音レベルリミッター:ON]、セルフパワーマイクに搭載されている3段階のゲイン切り替えを駆使し24bitの広いダナミックレンジとLUMIXの優秀なリミッターで現場を乗り切ってきました。

新しいXLRアダプター「DMW-XLR2」マイクホルダーもより実用的に

新しいXLRアダプター[DMW-XLR2]を使用することでGH7では32bit floatでの内部録音が実現します。

32bit floatは「音のRAW」や「非常に割れにくい」と評価されています。本記事では詳しい説明は割愛しますが「録音レベル管理がオートマチックになる」ということなのです(もちろんマイキングまではカバーしてくれませんしマイクやケーブル側の問題で良くない音声収音になることはあります)。

密着撮影はトラブルやハプニングこそ撮れ高になってくるため、そういったケースに対応するとレベル管理がおざなりになることもしばしばなのですが、32bit float録音を可能にしたGH7なら、その心配は不要なのです。

INPUT3にステレオマイクを接続 ラインとアンビエンスを32bitレコーディングするための最適解

「DMW-XLR2」ではINPUT1,2にXLRコネクタを、INPUT3にはステレオ3.5mmミニプラグを採用しています。これまで皆さんが使用してきたカメラオンマイクも32bit float録音に役立てることができます。

電子手ブレ補正:強

(撮影協力:BOY MEETS HARU)

密着撮影では現場が狭かったり慌ただしかったりするため基本的にハンドヘルドで臨んでいます。そんな時にLUMIXのお家芸とも言える「多種多様な手ブレ補正」には随分と助けられてきました。

G9PROIIに初搭載され、現在ではS5II/S5IIXにもファームウェア更新で対応した「電子手ブレ補正:強」が、GH7でも使用できます。

画角は少し狭くなりますが、アクションカム顔負けの強力で滑らかなブレ補正と、ワイドレンズ使用時によく見られる独特な周辺歪みの補正によって、移動撮影の難易度がグッと下がります。

楽屋からステージ袖への移動は緊張感走る瞬間ですが、滑らかに抑えることができました。

演出撮影における新たな優位点

Apple ProRes RAW内部記録にはCF express typeBが必要。是非2TBを推奨したい。

先行試用期間中にミュージック・ビデオ撮影の機会にも恵まれ、ここでは「Apple ProRes RAW内部記録」を活用することもできました。今回は割愛しますが、12bitの動画圧縮RAWを扱うことで精細な階調情報を内部収録で得られることにより、演出撮影の作品性をより高めることも可能です。

また、今回試用する願いは叶いませんでしたが、有償アクティベートによって「ARRI LogC3」をアンロックし、LUMIXカメラで憧れのシネマカメラガンマを扱うこともできます。

世界中のカラリストが認めるシネマスタンダードなカラーサイエンスで、ご自身の作品の「色」という表現拡張性がさらに高まります。

LUMIXマイクロフォーサーズ史上最高傑作

LEICA DG最高峰の大口径レンズLEICA DG NOCTICRON 42.5mm / F1.2 ASPH. / POWER O.I.S.

最後までお読み下さりありがとうございました。

これまでLUMIXの中で「H」を持つカメラは機能や性能、コンセプトそのものがシネマカメラや業務用カムコーダーに負けずとも劣らず、我々業務ユーザーの強い味方となってくれています。

その中で今回登場したGH7は「LUMIXマイクロフォーサーズカメラ史上最高傑作」であり、僕にとっては誇張表現ではありません。

業務上信頼し得る適切なサイズと重量、剛性を持つハンドヘルドし易いボディ。そして、フルサイズでは実現が難しい小型軽量、かつ高い解像力を誇りラインナップも豊富なマイクロフォーサーズのレンズ群は、ランアンドガンスタイルの映像カメラマンの機動力を底上げしてくれます。

Fドロップこそするがこの3本があればフルサイズ換算16-400mmで運用できる

コストパフォーマンスに優れたシステムと的確に撮影をブーストしてくれるLUMIX GH7に是非一度触れて見て下さい。

きっとみなさんの撮影体験に、大きな恩恵をもたらしてくれると信じています。

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