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シンプル一灯ライティングで魅せるポートレート撮影術|伊坂 謙

クリエイターが一つの作品を制作する姿にフォーカスし、そのオリジナリティを要素分解して紐解いていく「Creators Perspective」。今回、制作工程に密着するのは伊坂 謙さんです。

伊坂さんには今回【シンプル一灯ライティングで魅せるポートレート撮影術】と題し、その作品と共に制作背景や実際の撮影方法を披露いただきました。

伊坂さんのような作品を撮りたい方は必見です!

■今回撮影された作品

伊坂さんが今回撮影された作品はこちら。

ウェストショット
S5II,S PRO 50 F1.4 / 50mm,1/200sec,F5.6,ISO100
アップショット
S5II,S PRO 50 F1.4 / 50mm,1/160sec,F5,ISO100

こちらの作品を軸に、普段どのように制作活動をされているかについてお話しいただきます。


■アイデアはどこから?

元々美容師をしていたこともあり、授業の一環でヘアメイクの勉強もしていました。女性を美しくする魅せ方は、ファッションの分野から学んでいたかと思います。ポージングは、過去にポージング専用の教本を読んで学びましたが、モデルさん自身にも委ねながら、会話の中で最終的なポーズを決定しています。

Pinterestで軽く写真を眺めるようなことはありますが、見た写真に引っ張られすぎることもあるので、撮影前に写真だけの特別なインプットをすることは、ほとんどありません。できるだけ写真以外の創作物、例えば美術や映画からインスピレーションを得るようにしています。

■機材の選び方

今回はLUMIX S5IIと、LUMIX S PRO 50mm F1.4を選びました。

人物撮影におけるS5IIの利点は「自然な絵作り」と「扱いやすい画素数」にあります。

LUMIXはとにかく肌の色が綺麗です。人肌が持つオレンジ〜赤の再現性がとても高いと感じています。人工的な透明感ではなく、素の人肌を描写してくれるように思っていて、仕事での利用はもちろん、プライベートで子どもの写真を撮っていても、生き生きとして見えるのが気に入っています。

長く仕事で撮影をしていることから、これまではRAWで撮るのが当たり前だったのですが、LUMIXを使い始めてからはJPGでも十分だと感じるようになりました。

また、人物撮影の場合はテンポ良くシャッターを切ることもあり、撮影枚数が多くなってしまうこともあるので、S5IIの「2,420万画素」という画素数は運用の上でも丁度良いと感じています。

S5IIと同等のスペックを持つS9も持っていますが、今回はストロボを使う上でシンクロ接点が必要なため、S5IIを選びました。

レンズをS PRO 50mm F1.4にした理由は、シンプルに「描写が好き」なことが大きいです。

同じ単焦点50mmのLUMIX S 50mm F1.8も使ったことがありますが、ピント面からのボケ具合が、F1.4の方がより滑らかで、かつ、これは抽象的にはなりますが、絵がよりしっとりと描写されているように感じています。

また、個人的に大きな単焦点を付けると「気合が入る」のも大きいですね(笑)S5IIとS PRO 50mm F1.4を組み合わせた時のシャッターフィーリングも含めて好きで、スタジオで撮影をする際は、この組み合わせを選ぶことが多くあります。

ストロボはGodox AD300、ソフトボックスはGodox AD-S85Sを愛用しています。AD300はスタジオだけではなく、ロケ撮で使用する際にも十分な光量を持ち、AD-S85Sは組み立ても簡単でコンパクトに扱いやすいことから選びました。コマンダーも含めて直感的に操作しやすいのも、Godoxの良いところですね。

他のブランドのストロボを使用していた時期もありますが、光の質と費用面を考えた時に、Godoxはコスパが良く、より高級なストロボと比較した時に、光の質も金額ほどの差が無いように感じたため、Godoxを選びました。

ストロボ機材におけるコスパは大事だと考えていて、特に慣れるまではアクセサリーも含めて試行錯誤をする機会が多いかと思うので、そういう意味でも、これからライティングを始められる方には丁度良いブランドだと思います。

■一灯ライティングのメリット

今回は、ストロボ一灯で撮影するポートレートをご紹介します。一灯ライティングのメリットは以下の通りです。

・準備が簡単
・光源が一つのため、光と影を調整しやすい
・光源が一つのため、自然な光と影を作りやすい

複数のストロボを用意するのは経済的にも大変ですし、もちろん現場でのセッティングにおいても体力や時間を消費します。持ち運びも大変でしょう。

また、多灯だと光源が複数になるため、どのような影を作りたいか、被写体にどのような光を当てるかを意識してセッティングしなければなりません。これは、相応の知識や経験が必要になります。

その点、一灯であれば準備も簡単に済みますし、光源が一つだからこそ理想的な光と影に近づけるための原因究明もしやすいです。一方向からの光なので、太陽のように、自然な光と影を作りやすいメリットもあります。

今後、多灯ライティングに挑戦することがあっても、メインライトの調整はとても重要になってくるでしょう。そういった意味でも、まずは一灯からライティング撮影を始めてみることをオススメします。

■撮影場所の選び方

今回は、私の自社スタジオで撮影しました。普段からアパレルの着用写真や商品写真の撮影で使用しています。

今回はストロボ一灯でのシンプルな撮影ということで、白い背景紙のみで女性を美しく撮影する方法をお見せできたらと考えています。

■撮影風景

それでは実際に撮影を進めていきましょう。

■構図・ポージングの決め方

・ウエストショット(左)

こちらの写真は、今回の撮影のほぼファーストショットの写真です。あえてポージングの指示などはせずに「膝上くらいを写しています」とモデルさんにはお伝えして、ポージングはお任せしました。

シンプルにソフトボックス一つだけのライティングだったので、モデルさんに当たるストロボの光でコントラストがあまり強くならないように、光の位置を微調整しながら、モデルさんにも体や顔の方向などを少し指示をして撮影しました。

・アップショット(右)

今回ご協力いただいたモデルさんの横顔がとても美しかったので、それを活かすように撮影をしました。私の場合、特にアップでポートレートを撮るときは、撮影する前に下から見上げたり、お顔の左右を見比べたり、色んな角度から見て、その人の一番良い表情や角度で撮れるように撮影をします。

手を顔周りに入れても良かったのですが、美しい横顔が際立つように、余計なものを入れずにシンプルにクールビューティな表情を捉えました。

■カメラの設定

今回はシンプルな白バック紙でのスタジオ撮影でしたので、殆どの写真を絞りは5.6、シャッタースピードはストロボ同調の1/200で撮影しました。

あまり絞りすぎても意味がないですし、かといって絞り開放で撮ってしまうと欲しいピントが来ない場合があります。

ストロボで明るさを調節できるスタジオ撮影は、このくらいのセッティングから始めて、微調整することが多いです。

■光の考え方

ストロボの設定は1/8で、光源がモデルさんの目線より上位置になる高さにし、太陽のように斜めからモデルさんに向けて、直接ではなく少しズラして光を当てています。

被写体に対して斜め45度くらいで光を向けると、陰影が自然に見えるんです。陰影が強すぎると不自然なので、逆サイドにはレフ板を立てています。

ソフトボックスで柔らかく大きな光を当てること、また、背景の明るさを少し落としたかったこともあり、ストロボはモデルさんに近い距離に置き、モデルさんと背景の距離は少し空けています。

■撮影中に大切にしていること

「良い写真を撮ること」が一番大切ではあるのですが、そこに至るためにも「撮られる側の人間の気持ちを考えながら撮影すること」を大事にしています。

一つ例を挙げるなら「被写体が立つ場所には先に自分で立ち、カメラがある方向を見てみる」ということをしています。これが、色々と見えてくるんです。

立つ場所やもたれかかる場所が危なかったり、汚かったり、予期せぬ木漏れ日があって眩しく目が開けにくかったり、風でスタンドが倒れてきそうで怖かったり、など、カメラを持つ側にはわかりづらいことを直に感じることができます。

被写体がプロのモデルさんであっても、そうでなくても、撮影される側の安心感的なものが大事かなと思っています。

また、撮影に熱中していると、ファインダーやモニターだけを見てしまいがちなので、意識的にカメラから目を離して、髪の毛の乱れやポーズの違和感、その他不自然なところを俯瞰的に気付けるよう注意しています。

■自分らしさを出す編集

RAW現像をしていますが、普段から大胆に色や質感を動かすのが苦手なので、絵作りとしてはほぼカメラのままです。

今回も、オレンジ色(肌)の明度を少し上げて、トーンカーブでコントラストを少し高めただけです。色味はそのままでもいいのですが、女性のポートレートのときだけお肌のくすみを飛ばしたいので、オレンジ色の明度を少し上げています。 

アップの写真は、メイクに赤色を使っているのですが、これも撮影中に薄いかどうか確認をして、メイクの段階で少し色を濃くしてもらって、あとで現像の際に手間にならないようにしています。

■私にとって撮影とは

カメラを買って写真を好きになったキッカケが、当時勤めていた美容室のスタイル写真撮影でした。それから今日に至るまで、ポートレートは私にとって大好きな撮影です。

被写体となるモデルさんやお客様が最も魅力的に見えるように、ライティングや構図、ロケーションや背景を整え、これからも良い写真を撮影していきたいと思います。


今回の「Creators Perspective」は以上です。

LUMIX Magazineでは「Creators Perspective」の他に、メーカーの中の人がブランド思想や本音を話す「LUMIX is」、基礎的な撮影スキルやLUMIXの機能をレクチャーする「Ability」など、様々なコンテンツを発信しています。
これからも是非、LUMIX Magazineをご覧ください!

■今回の使用機材

LUMIX S5II

LUMIX S PRO 50mm F1.4


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