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【読了】小砂川チト「猿の戴冠式」

小砂川チト「猿の戴冠式」
表紙とタイトルに惹かれた本


森に暮らしていたふたつの種族、中でも特に知能が高いとされた個体に人間は言葉を教えた。時には人間の赤子と比べながら続いた実験は唐突に終わりを迎える。


私は言葉というものは対象(心的物質的なもの両方)を定義するものだと思っているのだけど、この物語はまさにバベルの塔の話そのもののように感じました。

言葉には意味があり、その意味を共有することで言葉によるコミニュケーションが成立する。
その前提としての意味を付加するためには、言葉によって物事を切り取り定義する必要があったはず。

本来なら言葉を持たずに暮らしていたのに言葉によって群れから自己を切り離され、それでも群れの中で生きねばならない…。
居場所のない思いを抱えた彼女が、自らの意志で個としての自分を取り戻すまでの物語。
圧倒されました。

(20240225投稿文の再掲)


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