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【読了】荒木あかね「此の世の果ての殺人」

荒木あかね「此の世の果ての殺人」
「ほんタメ」で紹介されていた本。


ちょっとした目標のために自動車教習所に通う主人公は、教習所で他殺死体を見つけてしまう。担当教官とともに警察署にいくが、やる気のない警官に、教官は自分が犯人を見つけると言い出した。


以前とは違う、という言葉を重ねながら少しずつ明かされていく世界の様相が、不穏なのにちゃんと日常もあるという独特の雰囲気に満ちていてとてもよかった。

ドライなわけではなく、かといって湿り気があるわけでもない、郷愁というには苦味が強い、そんな雰囲気。
誰もが隠し事をしていて、それは自分のためだったり他の誰かのためだったりするなかで、それでも信じていられる人こそが希望と呼ばれるのかもしれない。

幕引きが穏やかで美しさすら感じられるものだったのが、なにか救われたような気持ちになれて良かった。
次の作品も読んでみたい。

江戸川乱歩賞の受賞作品とのことで、巻末に選評があるのも面白かった。

(20230604投稿文の再掲)
・第68回 江戸川乱歩賞



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