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【読了】新名智「あさとほ」

新名智「あさとほ」
「ほんタメ」で紹介されていた本。


双子の妹と近所に住む男の子と一緒に村外れの山に出かけた「わたし」は道の奥に廃屋を見つける。廃屋の中で消えた妹を探そうとするが、親をはじめ誰も妹のことを覚えておらず、写真からも妹の姿が消えていた。


どういう流れで紹介されていたのか忘れていたのだけれど、読んでみても思い出せなかったので相当伏せていたのかも。

廃屋に入った3人の子どもが、出てきたら2人になっていて、記憶にも物的証拠にも消えた子どもの痕跡がない。
とてもホラーな導入ですが、当然それだけでは終わりません。
作者の用意した結末に至る道筋がそれと悟らせない自然さで、なんというかとても良かった。

物語は主人公が卒論の指導を受けていた教授の失踪で動き始めます。
その後、教授を見たという話を聞いてきた友人からも連絡が途絶えたのをきっかけに件の男の子と偶然再会し、ふたりで行方を追うようになるのはまさしくドラマティックと言う他ないでしょう。

作中で語られた「物語は幻想の共有」というくだりが刺さるというより染み入る感じで心が震えたし、細かく差し込まれるエピソードはピリリと効いて面白いだけではないのもすごく良かった。

たぶん誰もが一度は考えてみたことがありそうなことを、こんなにも美しく纏まった物語として読むことができて幸せです。
他のひとにも読んでもらいたくなる本でした。

(20240121投稿文の再掲)


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