
【読了】 竹本健治 「匣の中の失楽」
竹本健治「匣の中の失楽」
推理小説を愛好する学生グループのひとりが書き始めた実名の探偵小説に倣うように、彼らのなかで実際に殺人事件がおきた。愛好家らしく推理対決が始まるが、何ら進展のないまま次の事件がおきてしまう…。
読み始めてすぐに、これはとても抒情的ではあるけど、前に読んだ「黒死館殺人事件」を思わせるなということ。
登場人物それぞれが心の赴くまま思いおもいに推理や追憶、そして専門的な蘊蓄をのびのびと語っていくからかもしれない。
ただ漫然と読んでいるのでは、いま読んでいることが果たして「現実」なのか「小説」なのかもわからず、何かもったりとした繭のようなものを撫でているだけのような気がしてきます。
夢から醒めて、起きたつもりで見ている夢のなかのような。
とにかく情報量が膨大で、それを辿るだけで満足感が得られることもあり、所々に示される過去の名作にやはり読まねばと思ったり。
明確にこれが面白いというのは難しいけど、とても面白かったです。
裏表紙の紹介で「第4の奇書」と呼ばれるというのも読んでみて納得。
ただ、後書きによると「黒死館殺人事件」ではなく「虚無への供物」の系譜として書かれた作品のようなので、そちらが未読だったのが残念でした。
ていうかそんなポンポン読めないよ!
後書きで高校時代に読んで良かったと書かれている方がいて、なんという早熟…!と衝撃を受けました。
高校とはいわないけど、学生時代に読めたらすごくマッチしたかな〜という感じはします。
知識によってひらかれるのは遅いということはないけど、早い方がその後の楽しさも多くなるしね。
「3大奇書」のかおりに触れたいひとにもオススメです。
(Twitter20230402投稿文の再掲)