【読了】降田天「すみれ屋敷の罪人」
降田天「すみれ屋敷の罪人」
「ほんタメ」で紹介されていた本
田舎町にある古い洋館から白骨死体が発見された。その身元を明らかにするよう依頼された主人公は、当時を知る元使用人からの聞取り調査を始める。
当時を語る元使用人の独白と、主人公の簡素な調査報告によって綴られる所謂名家の暗部。
隠された事件を探るというシュチュエーションはあれど、遠い過去の話であるためか読み手としては謎に対して距離をおきつつ眺めるような感覚がありました。
話を聴くたびに少しずつズレていく人物像も、ひそかに抱える個人的な秘密も、彼らの話が個々人のなかで完結しているのがもどかしいような奥ゆかしいような、でも決して不快ではない不思議な安らぎがあった気がします。
印象を変えながら辿り着いた結末は思わず瞠目してしまうほど、気持ちの大きさに胸を打たれるものでした。
屋敷の庭を埋め尽くしていたすみれの花を、図鑑で探してみたくなるような深い余韻をおぼえた良作。
(20240218投稿文の再掲)