海臨む駅へ
…鉄路の涯の駅から海が見えると言う。
JR鶴見線「海芝浦駅」。
降りたホームからは、鈍色の海が見える。
霙混じりの冷たい雨が、水面に静かに落ちて消えていく。
…本当は列車の行き着いた先、海は青く遮るもの無く広がっているはずだった。
しかし、まるで埠頭の上に敷かれたレールを走るかのように列車は停まり、いつかどこかで見たような風景がそこにあった。
白と黒に塗り分けられたような海鳥が一羽、
波は穏やかに、風もあまり吹かず、ゆらりゆらりと浮かんでいる。
驚くほどに音がない。
すぐ横に工場があるが、今日は祝日で休みのようだ。
乗客もわずか数人だけ。
晴れていたならもっと素晴らしいだろうに、と思う。
遠く晴れ渡る海が見たかった。
綺麗な蒼空が見たかった。