佳桜忌

…何かを切っ掛けとして、人生は変わるときがある。

ワイドショーの画面は妙にザワザワとしていて、こちらの気持ちまで逆立たせる。
怒号と泣き声と、声高に響く読経の声が、都会の喧騒をそこだけ打ち破っていた。

私は、弟の声でテレビ画面を注視した。
そこから先の記憶は朧で、弟が変えた先のチャンネルでは、アニメのエンディングテーマが賑やかに流れ始めていた。

「彼女」との出会いは、菓子メーカーのCMだった。
明るく振りまかれる笑顔の屈託の無さは、半分病床の身だった私に温もりを与えてくれた。
それまでその存在すら知らなかったアイドルを意識し出したのは、多分仄かに過ぎた恋心だったかも知れない。

彼女の存在の灯火が消えたのは、37年前の今日の日だ。
成人も迎える事無く、自らの生にピリオドを打ったことに、私は大きく困惑をした。
私だけではなく、あの地面へと伝わった衝撃は、消える事無く反響しながら、今も響き続けている。

恨むことなど無く、ただ祈りを捧げたい。
今日は「佳桜忌」。
生死の境で違えたけれど、魂は繋がり続けると信じる。

合掌。

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